それは、妻のマダムれいこと食事を取ろうとしていたときのことだった。
ある、スタッフに、「年末年始の空き状況は?」と尋ねたのだった。
その瞬間、それまでてきぱきとこなしていた彼から、電撃のような、衝撃波が出たのだった。
それまで、何でもこなし、やり手と想っていた彼から、冷めた視線を感じたのははじめてだった。
時間にして0.5秒。1秒にも満たない、ほんのわずか、一瞬のできごとだった。
あまりに短い時間だから、ふつうの人なら気づかないわずかな時間だ。
だが私には、あまりにもいつもと違う目線だったから、驚きと同時に、なぜそんな冷めた視線をしたのか、想いをはせた。
彼は日ごろから頼りにされ、一所懸命働いているのだろう。家でもきちんと主夫をこなし、育児にも熱心。周りからの信望も厚く、頼りにされる存在だ。
だがその一方で、仕事が立て込んでくると、余裕がなくなってくる。余裕がなくなってくると、頼りにされていることが重荷になってくる。
喜べるはずの状況が、喜べなくなってくる。
彼は、仕事ができる人を演じているうちに、どこか不満を吐けない状況に陥っていたのだ。
だからちょっとした質問に、イラっとしてしまい、内心「忙しいときにそんなこと聴くなよ」と思ったのだ。
その想いを隠し持ったまま、取り繕った対応をしたから、目線から想いがこぼれ、私に伝わったのだ。
そこで妻のれいこに尋ねた。
「さっき、気づいた?」
「うん気づいた」
「急に怒るような目線だったから、ビクっとしたよね」
「うん。たぶん子育てとか、仕事とかで一杯一杯になってるから、ささいなお願いごとでも、負担に感じたのよね」
「そうだろうね」
そうこうしているうち、空き状況を教えてくれた。ところがこちらが把握している時間帯まで、閉まっていることになっている。間違っていたのだ。
さらには注文した一品まで違っていた。
「あ、だいじょぶですよ」
私たちは彼の日ごろの大変さに想いを馳せつつ、見守るようにして彼の背中を送り出すのだった。
私たちには、こういう例がよくある。先に起きることを事前に察知し、異変を感じるのだ。その結果、未来に起きるトラブルや事故、病気を、未然に防止することもできるのだ。
もうひとつ、興味深い話をしよう。こちらはあるクライアントの話だ。
オリンピックが開催された7月・8月、選挙戦が繰り広げられた9月、この3か月で日本は、大きく変化が訪れた。2年間近く閉ざされた想い、その発露が一気に起きた9月。そして10月には解禁。
眞子さんの結婚から岸田内閣の誕生まで、世の中が大きく移り変わることを、表すできごとだった。
私は予想していた。10月になれば、いいことも悪いことも同時に起きてくると。
というのも、それまでため込んでいた想いが一気に噴出するときは、事件やトラブルと、吉報とが同時にくるからだ。
あえてここでは述べないが、さまざまな障害や事件や事故が起きたことは記憶に新しいと思う。
そのことをシークレット音声で語っていたところ、あるクライアントから相談を受けた。
「何者かに狙われている。不穏な動きや明らかな嫌がらせ、監視があっているんです」
その話を周りに話しても、にわかには信じてもらえないと言う。被害妄想だと一笑にふされてしまうと訴える。
なるほど当然、監視や嫌がらせというのは、本人にしかわからない。被害妄想と言えば被害妄想に映る部分もあるからだ。
だが私は彼の話は真実だと直感した。実際に起きているのだ。なぜそんなことが起きるのか、具体例で示そう。
かつての私は、事故やトラブルにいつも襲われていた。からだは異様な倦怠感が常にあり、心はモヤモヤとしていた。
大学1年になるある日のこと。父に買ってもらった車で父を乗せ、デパートに用があるという父のため、車を走らせた。
いつも曲がる川の手前で曲がり損ね、慌てて狭い路地を左に入ったときだった。
鍵の110番の店の2階に声をかけていた50代くらいの男が目の前にいた。
徐行し、当然避けるだろうと想いながら、その男の横を抜けようとしたときだった。
「あたたた」
その男は、車にすり寄るようにして、ボディに当たったのだった。
「どこ見とんねん。痛いやないか」
文句を付けてきた男に、私は車を止め謝った。
「すみません」
車の中では父が憮然としている。
「なんでこんな所で曲がったんだ」
「行き過ぎたからだよ。早く着かなきゃと思って」
そうこう話していると、男はスリッポンのスニーカーを履いた左足を見せた。
「ほら、にいちゃん足引いとるやろ」
白いスニーカーの上を、斜めに走るタイヤの跡があった。
そんなバカな。車が走る方向とは逆に足を入れ込むなんて。
気が動転していたときは気づかなかったが、明らかに当たってきたのだ。
しかしそのことを証明する術はない。無視する訳にもいかず、男を乗せ、職場という事務所に向かった。
出迎えたのはこわもての男3人だった。明らかにそのスジの人だ。一度病院へと向かい、レントゲンを撮り、異常はないものの打撲で全治2週間と診断された。
事務所へと戻ると、親頭みたいな男から言われた。
「まぁこういうのは示談というのがいいでしょう。こちらから請求すると恐喝になる。だがいくらと示さないとわからないでしょう」
そう言って手をパっと広げた。100万の意味だ。取りあえず持っていた父の金5万を渡し、その後自腹と保険とでようやく払い終えた。
じつは当時、父との確執があった。父の呪縛から逃れたい一心と、逃れることへの恐れ、抵抗とが拮抗していた。だから内心くすぶっていたのだ。その想いが事故を呼び寄せたのだ。
だが当時はまだわからなかった。それからも事故やトラブルはくり返した。
ある日、友人から誘われたセミナーに参加した私は、参加後、父への許しが出て、父と和解した。父の優しさを感じ取れるようになったのだ。
すると、父への怒りが消えたのか、父が温和になった。乗っていた国産車が古くなったから、父が元気なうちに、もう一台車に乗りたいという。
父は免許を持っていなかったから、運転手は私だ。ひろに運転してもらい、僕が乗せてもらう。車はもうちょっと上のランクの国産車がいいと思う。ひろはどう思う?」
「お父さんが乗りたい車が一番だよ。けど強いて希望を言うなら、外車の左ハンドルの車、〇〇がいい」
すると父は、驚いたことに、いつもの父とは違う反応を見せた。いつも、ずっとお金にはシビアで、ぜったいに現金をくれなかった父がだ。こう言ったのだ。
「お父さんが欲しいのは国産車だ。だが運転するのはひろだ。どうせならひろが欲しがる車を買って上げたほうが大事にするんじゃないかな」
私は耳を疑った。買えば350万(27年前)するほどの価格だ。それをキャッシュで買ってあげようと言うのだ。あのケチでまったくと言っていいほどくれなかった父がだ。
「お父さんが好きなのでいいよ。でも買ってくれるんならうれしい」
そう言うと、父はキャッシュで買ってくれた。ところが話はそれで終わりではなかった。
ガンメタリックの左ハンドルの車に乗り、意気揚々と運転していた私は、住んでいたアパートの近くの狭い路地に車を止めた。アパートから妻のマダムれいこと一緒に住む新アパートへ引っ越すため、元のアパートに一時的に戻ったのだ。
朝の4時から8時迄。わずか4時間ほどだ。ところが朝車に乗ろうと近付いていくと、朝露に濡れたボディが銀色にところどころ光っていた。
ん? 光の反射かな。そう想いながら近づいていくと、光の反射は、釘で入れられた傷だとわかった。何と全面に釘で傷を入れられていたのだ。
中学生か誰かがいたずらで嫌がらせでしていたのだ。こんなところに車を止めやがって。新車? 忌々しい。まるでそんな声が聴こえた。
しかし私は悪くない。そう想って車両保険で全面塗装し直し、元に戻した。
ところが今度は新アパートに移って2週間が過ぎたときのことだ。来客用駐車場に止めていたとき、またも同じように全面に釘で傷を入れられたのだ。
そんなバカな。
私は想った。わずか2週間のうちに、違う場所で、まるで狙ったように嫌がらせのように、全面に釘で傷を入れられるなんて。
しかしあり得るのだ。
私の中にかすかに残っていた心のくすぶり。それがダークサイドを呼び込み、事件やトラブルに巻き込まれていくのだ。
だからクライアントが言う、監視、嫌がらせというのは、実際にあり得ることなのだ。
私が経験し、そこから脱け出すことができたから、彼にもその脱け出し方を教えることができるのだ。
そしていま、相談を受けていたところ、スマホの画面にメッセージが届いた。
「何者かがアクセスしています。心当たりのない場合はすぐさまパスワードを変更ください」
ここ何年も使ってはいなかったアドレスへ、何者かがアクセスしたのだ。
彼とつながったために、そういうマイナス現象を呼び寄せたのだ。
だが私は何ともない。そういうのには慣れているからだ。
彼は言った。
「遠隔ヒーリングとかお願いできますかね」
「もちろん。もうすでにしてますよ」
ほんとうは遠隔ヒーリングなる言葉は、よくスピリチュアル界隈で安直に使っているので使いたくなかった。そういう言葉を使っている割に、まったくと言っていいほど表面的なアドバイスで終わっているのをよく観ていたからだ。
だが私や妻のれいこはできていた。トラウマにかかる部分に入ったら電気・電子的におかしくなることが多々あり、それを解消することをよくしていたからだ。
ある女性は、別れた夫との訴訟に悩んでいた。和解金を払うと言っても訴訟を取り下げない。ほとほと困った彼女は私たちに相談を託した。
「・・・・・・というところでお金払うって言っているのに、彼、許さないんですよっ」
そう文句を言っているとき、突然電話に雑音が混じり出し、ブチっと切れた。二度目かけてもらっても、
「もしもーし、もしもし」
相手の声が聴こえない。声から電磁波が出て、それをマイクが広い、雑音と化し、切れるのだ。
そこで私は言った。
「〇〇さん、いま、怒ってますね(笑)。だから切れるんですよ。誰かに怒ってませんでしたか」
「えっ。あっ! 私、怒ってます? あ、たしかに。怒ってます。怒ってます。誰だろ」
「少し考えてみてください。そうして、よかったら元の旦那さんに謝ってみてください」
「そんな、できませんよ。そんなこと。あっちが悪い」
「うん、あっちが悪いのはもちろんです。お金払っても訴状取り下げないんだからね。
けど〇〇さんがもし、少しでも自分にもいけないとこあったと想ったら、その想いを伝えてみてください」
「わかりました」
怪訝そうにしながら彼女は電話セッションを終えると、自分でひとり考えてみたのだった。
2日後、メールが届いた。怒っていたのはお母さんへの想いだったと言う。その想いを彼に投影して、いつまでも許さない彼に怒っていたのだった。
「自分にもいけないとこあったと思います。彼にその想いを伝えます」
言いたくない気持ち一杯であったが、口が曲がりながらも、一所懸命伝えたという。そうしたら彼は訴状を取り下げた。きれいに別れることができたのだ。
ほどなくしてすぐ彼女にはあたらしい彼ができた。仕事で一緒にしていた男性だった。彼女にはふたり子どもがいて、彼は独身。すぐさまプロポーズを受け、結婚。ふたりの子供に恵まれ、計4人のお子さんを育てている。
ものごとというのは、自分が発している雰囲気(エネルギー)が呼び寄せている。全部が全部ではないが、自分がかもし出している雰囲気を変えることができれば、おのずと現実もそれに合わせて変わってくる。
もし、あなたが、望まない現実を手にしていると感じているのなら、それがどこからきているのか、心の中を探ってみよう。もしかすると、その現実が来ることによって、満たされている部分があるかもしれない。
こうした事実が浮き彫りになってくれば、答えはカンタンだ。悪いものを取り除き、良いもので満たすようにしていけばいいのだから。
そうすれば、あなたの望む現実は、徐々に引き寄せられ、こちらのほうに向かってくる。
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