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詩集『柔らかい檻』〜編集者への恋文〜

9年ぶりの第3詩集『柔らかい檻』。
詩集の一番最初の読者となった竹林館の左子真由美さんの編集者としての率直なご感想は、久しぶりに詩集と真摯に対峙してくださる方のお言葉として、とても嬉しかったです。

作品は私の人間性であり、外見からはわからない私の本質でもあります。それを認めていただいたことは、自分の感覚としては、まるで恋文をもらったような興奮を覚えました。
その感覚が醒めないうちに、左子さんへの感謝も込めて、「恋文」という詩を書きました。
お目通し頂けたら幸いです。

****

恋文      

それはまるで恋文のようだった

内側から溢れ出た

私の核を認め

輪郭をなぞってくれる

これから一冊の集大成になろうする

ポエジーの雫を余すことなく

初めて呑んでくれた人の言葉は

忘れていたときめきを

思い起こさせ

心拍数が上がり

ドーパミンが流れるのを感じた

久しぶりの感覚に

自分の支柱は

やはりこれなのだと

歩んできた軌跡に

一枚、一枚、落としてきた

断片を拾い集める

織り込まれた

時間の厚みさえ

掴んでくれるその人に

すべてゆだねて

世に解き放つ

恋文を信じて

*****

以下は左子真由美さんにより、Facebookで公開された詩集『柔らかい檻』のご感想を引用いたしました。
上記作品のご参考まで。

8月15日発売の新刊です! 渡ひろこさんの詩集『柔らかい檻』、アマゾンでも予約発売中。ぜひ、ご一読ください。

下は、最初に原稿を受け取ったときの私の感想です。言葉足らずですが、本当にいい詩集に出会ったという感じでした。

全体を通して、いのちの大切さ、生と死、たくさんの方への追悼の思い、再生への祈りを感じる詩群でした。Ⅰでは、社会への問題提起、戦争のむごさ(「特に紙魚では小さな虫を描くことで、悲しみを鮮やかに浮かび上がらせており、印象的でした」)たんに声高に反戦をのべるのではなく、実体験から描かれているのがとても説得力がありますし、感動しました。「漂流列島」まさにその通りです。読者の方も大いに共感されることと思います。
Ⅱを読ませて頂いて、この一冊の詩集の中に流れている時間の厚みを感じました。長い時間の堆積、その中に埋もれている人間のドラマ、感情をもろに出さずに、淡々と描いていてそれぞれが哀しさの中にも美しい情景になっていることには驚きました。さすがに、何度も手を入れられただけありますね。Ⅱが「誕生」で閉じられているのもいいですね。再生への希望を感じます。
Ⅲは、先ほど離陸と飛翔と書きましたが、渡さんの詩の別の魅力を感じる章です。現実と非現実のあわい、ご自身も時々登場されますね。意識の中ではここに描かれていることは、現実なのかもしれません。「月酔い」少し妖艶な味わいもあり、新しい世界への展開もあり、ベビーカーを押す姿が残像として残る印象的な作品でした。

全体を通じて、昨今は詩のように見せかけた詩が多いなかで、詩の道の真ん中をいく詩に出会えた感がありました。詩をうまく見せようとか、自分を特別な存在に見せようとか、そういう外連味がないという意味です。
そして、体に備わった目のほかに、生死の間にあって命を見守るような、「こころの目」というものを感じました。その目で人間や出来事を見つめ、同時に自己の心の動きを眺められているようです。またそれは綴られていく「言葉を見る目」でもあるのでしょう。人間や命に対してはもちろん、社会や歴史や何事にもまっすぐな「こころの目」というものに感じ入りました。

自己も国家も見えない檻ですが、渡さんの詩は檻を開く鍵をお持ちのようです。混迷の深まる時代、みなさんにぜひ読んでいただきたい詩集です。

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