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不平等に敏感になる薬【連載】人を右と左に分ける3つの価値観 ―進化心理学からの視座―

※本記事は連載で、全体の目次はこちらになります。第1回から読む方はこちらです。

 最近の研究で、ある薬を投与することで、人を不平等に敏感して左寄りの考え方にすることができるかもしれないことが報告されています(注3)。それは、パーキンソン病の薬である「トルカポン」で、これを投与された人は、経済的格差を気にするようになるというのです。

 米国カリフォルニア大学バークレー校を中心とした研究グループは、18人の女性を含む35人の参加者に対して2回の別々の来院の際に、片方のグループにはトルカポンを、もう片方のグループにはニセ薬(プラセボ)を投与した後に、見知らぬ人との間でお金を分配し合う簡単な経済ゲームをしてもらいました。その結果、トルカポンを投与された人は、ニセ薬を投与された人よりも、見知らぬ人により公平で平等な方法でお金を分配するという変化が起きることが判明したのです。ちなみに、トルカポンは脳内麻薬の一種であるドーパミンの効果を延長させる薬で、快感や動機の気持ちに関係しているためにこのような心理的な変化が起こったのではないかと推測されています。
 まだ、確定的なことは言えないかもしれませんが、格差の激しい国や地域で、高所得者に投与してみるとジニ係数(所得格差を表す代表的な指標)が改善するかもしれません。

注3. Ignacio Sáez, Lusha Zhu, Eric Set, Andrew Kayser, Ming Hsu, “Dopamine modulates egalitarian behavior in humans” Curr Biol. 2015 Mar 30;25(7):912-9.


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