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なくなることを考える|2021年9月に読んだ本

今まであって当然だったことが急になくなってしまう。切なくなったり、悲しくなったり、「だから言ったのに」という人も出てくる。でも、辛くて後悔することも悪くないことかもしれない。みっともなく喚くかもしれないが、なんであろうといつかはなくなるものだ。noteの下書きであっても。

2021年9月に読んだ本の中で、おすすめしたい本を選んでみる。
誰かの選書のヒントになれば嬉しい。

52ヘルツのクジラたち|町田そのこ

誰にも声を届けられないクジラ、虐待、DV、毒親など、読む前にあらすじを見て、「これは相当気持ちに余裕がないと読めないぞ」と思っていたが、読み進めていくと、テーマは重くとも不思議と読みやすい。かつての52ヘルツのクジラは届かない声に耳を傾けようとする。誰しもそんな声を持っていて、なくなってしまったものは戻らない。家族という存在は絶対ではないことを頭に入れておきたい。

生き物はどのように土にかえるのか|大園享司

地球環境といわれても実感が持てない。自分ごとに出来ないときは身近にあるものから考えてみるとうまくいく。生き物が遺体となって分解されていくプロセスは知っているようで、ぼんやりとしか知らなかった。生き物は土にかえり、大海にかえり、大空にかえる。命だったものは地球上でぐるぐると巡っている。なくなってしまうことで、まわっていく。時間を掛けて巡回していると考えると、ちょっぴり地球が身近に感じてくる。

・・・

死にかけた経験なんてないと思っていたが、ダイビングをしていたときに一度だけ致命的なミスをしたことがあった。タンクのバルブを開け忘れたまま潜ってしまい、水底で空気が吸えなくなった。かろうじてホースに残っていた空気を吸いながら、近くのバディに合図を出してバルブを開けてもらって助かった。バディが勘のきく人じゃなかったらどうなってたんだろう。あのときほど空気が美味しく感じたことはない。なくなるものの最後が地球の空気であることを願う。



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