マガジンのカバー画像

音楽記(Musik)

24
聴いた音楽について(不定期) WEBと並行して更新継続。
運営しているクリエイター

#音楽

⑯ V.A. / In Fractured Silence (1984)

⑯ V.A. / In Fractured Silence (1984)

Nurse With Wound(NWW)ことスティーヴン・ステイプルトンのレーベルUnited Dairiesからリリースされたオムニバスが、仏SouffleContinu Recordsから再発された。LPしか出さない版元だという認識だったが、珍しくCDも併発だったから嬉しい。

United Dairiesは79年のNWW『Chance Meeting On A Dissecting Tab

もっとみる
⑮ V.A. / pop'n music 11 AC ♥ CS pop'n music 9 (2004)

⑮ V.A. / pop'n music 11 AC ♥ CS pop'n music 9 (2004)

KONAMIの人気音楽ゲームタイトル『pop'n music』シリーズ第11弾のサウンドトラック。ある時期からシリーズごとにテーマを設けるようになった『pop'n』だが、本作『11』のテーマは世界旅行であり、その名の通り世界各国の音楽が題材になっている。
『pop'n』は同社の『beatmania』の兄弟機という出自を持つタイトルで、その発想の根幹には『beatmania』同様にエレメカ(説明がち

もっとみる
⑭ The Belbury Poly / The Path (2023)

⑭ The Belbury Poly / The Path (2023)

『FEECO』誌特別号『MUSIC + GHOST』で大々的に取り上げたGhost Box Records。その共同経営者であるジム・ジュップのプロジェクトBelbury Polyのニューアルバム『The Path』が先日リリースされた。同号でインタビューをして以来、プレスリリースを送ってもらえるようになり、今回も音源からアートワークまで一式寄せてもらった。アナログを購入したはいいもののまだ届いて

もっとみる
⑪Andrew Wasylyk / Hearing the Water before Seeing the Falls

⑪Andrew Wasylyk / Hearing the Water before Seeing the Falls

 昨年購入したはいいが、ずっと積んだままであったアンドリュー・ワシュリクの最新作。遠海や孤島を撮影し続ける写真家トーマス・ジョシュア・クーパーの展示『The World's Edge』のために書かれた本作は、実際にワシュリクがクーパーとともに大西洋に浮かぶ孤島へ出向いて、現地から録音した音を素材にしている。世界的な海抜の上昇により35年以内に水没すると言われている島々の記憶を、クーパーは写真として

もっとみる
⑩The Advisory Circle / Full Circle

⑩The Advisory Circle / Full Circle

12/10発売の『MUSIC + GHOST』で主題となるGhost Box Recordsは、音楽評論家のマーク・フィッシャーやサイモン・レイノルズが憑在論(hauntology)というタームを使用する際によく例示された。同レーベルが探求するのは50年代末から1978年の英国についての記憶だ。マーク・フィッシャーは、この志向を79年からのマーガレット・サッチャー政権によってフェードアウトさせられ

もっとみる
⑨:MOGRE MOGRU / DIVE ACTION 1

⑨:MOGRE MOGRU / DIVE ACTION 1

「踊れないことに特化したDJイベント」というテーゼとともに2017年5月2日から始まった「盤魔殿」は、現在の時点でほぼマンスリー化しており、常に凶事をもって更新されていく現代の陰ひなたに咲く人間性という花の畑のようである。その花は享楽的に踊るダブパーティーやレイヴから、盤魔殿のように踊らずして立ち尽くす場まであまねく種が蒔かれており、人が集まり音楽鳴るところに起こる思惟をもって開花するものだと考え

もっとみる
⑥:The Hair / Out of Our Hair (1990)

⑥:The Hair / Out of Our Hair (1990)

 3月に発行予定の『FEECO』vol.4にはThe Hair及びあいさとう(現ジーノ・サトー。以下は有名な「あいさとう」名義に統一する)について書いたページが収録される。The Hairを一語で表すならばモッズ的でないモッズ、つまりはオンリーワンを志向する精神のアウトプットなのだが、その音楽を大別するならば60年代とリズム・アンド・ブルースだろう。日本発のリズム・アンド・ブルースと書けば、昨今の

もっとみる
ブツ群(2010s best music) 前

ブツ群(2010s best music) 前

周りに感化されつつも着手しない悪癖を克服すべく書いた。いわゆるベストアルバム記事であり回顧録である。選ぶ基準はよく再生していた、ただ一点のみ。2019年は記憶が新しすぎて何も思い浮かばないため未選。以下、年を遡りながら書いている。

Current 93 / The Lights Leaving Us All (2018)

リリース日に開かれたロンドン公演を観に行ったこともあり、バンドの10年代

もっとみる
ブツ群(2010s best music) 後

ブツ群(2010s best music) 後



V.A. / The 2013 Teen-Beat Portable Companion (2013)

詳細知らない音源②。知るきっかけはアートワークが目に止まったからで、勝手にステッカーにしたいくらい。現在はレーベル公式からダウンロードできる(画像クリック)。
ループ・ミュージックなFang Wizard、ちょっと垢抜けすぎな宅録シンセポップStick Insect、60年代の広告みたいな

もっとみる
⑤:Taro Nijikama / CHIVA VIVA EXTRAVAGANZA IMMORTAL ENTOURAGE (2021)

⑤:Taro Nijikama / CHIVA VIVA EXTRAVAGANZA IMMORTAL ENTOURAGE (2021)

ヤスミラ・ジュバニッチ監督『アイダよ、何処へ?』を鑑賞してきた。映画はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争内で起きたスルプスカ共和国軍によるボシュニャク(イスラム教徒)の虐殺事件を主題にしている。3つのディケイドで民族間の溝を描いたダリボル・マタニッチ『灼熱』と違い、無数に行なわれたホロコーストのうちの一つを切り取ったドキュメンタリー志向のおかげで、建設的な示唆がほぼない重苦しい内容であった。第二次大戦以

もっとみる
90年代邦楽から11枚

90年代邦楽から11枚

twitterで80年代ベストアルバムという企画が回ってきたのでなんとなく自分でも考えていたのだが、どうせ記事にするのなら最近書籍にもなった90年代邦楽という枠でやってみた。選出基準はお気に入りかつ、他所で挙げられているのを見かけないものにした。ほぼすべてストリーミングサービスには登録されていない。

シジマ / 1971いのししコースター (1999 日本クラウン)
かつて大阪でワルシャワという

もっとみる
④:Mikado Koko / Maza Gusu (2021)

④:Mikado Koko / Maza Gusu (2021)

フランスのAkuphoneレーベルのことを知ったのは中東~バルカンの民族音楽を加工する音響作家Kink Gongのアルバムからである。60年代の残り火たるフリー・トランペッターのジャック・ベロカルや、中国の女性歌手リリー・チャオの復刻、邦人作家によるエレクトロニクスのオムニバス『青踏』といったリリースを見るに、このレーベルは「西側」の定義から外れるフォークロアを重用するスタンスなのだろう。耳に明ら

もっとみる
③SCOOBIE DO / かんぺきな未完成品 (2013)

③SCOOBIE DO / かんぺきな未完成品 (2013)

多摩市西部の山と団地の合間にあった生活協同組合倉庫での夕方アルバイト中に同僚の主婦(昔JAシーザーと飲んだことがあるだとか、謎の多い方であった。)が「早朝にスペースシャワーかなにかでSCOOBIE DOの新曲MVが流れてた」と教えてくれた2013年5月15日、自分はその曲が収録された『かんぺきな未完成品』を出勤前にしっかり買っていた。発売日ダッシュなんてしたのはこの日が今のところ最後かもしれない。

もっとみる
②Bugge Wesseltoft & Henrik Schwarz / Duo (2011)

②Bugge Wesseltoft & Henrik Schwarz / Duo (2011)

春先から夏にかけては2011年3月11日からの1~2年間を思い出す季節。東京へ引っ越す1か月前に地震が起きたが、すでに賃貸を契約していたこともありそのまま多摩へと転がり込んだ。これが今の這いまわり人生の序章であった。嫌なことほど覚えているのが青春なら、この数年間はそうなんだろう。受け入れるには苦しいが、この期間に触れたものが自分の一部になっている感覚は確かにある。大小差はあれど個人史とは山あり谷あ

もっとみる