- 運営しているクリエイター
記事一覧
㉒ Beautify Junkyards / NOVA (2024)
Ghost Box Recordsにおける最大のインスピレーション元はBBC内に設立された音楽部門Radiophonic Workshopである。同スタジオがやっていたように、発表される作品はいずれも作家性を極力廃した生産品、アートではなくプロダクトと呼んだ方がしっくりくる。Ghost Boxにしては珍しくバンドというフォーマットをとっているBeautify Junkyardsでも、音楽を伝達する
もっとみる㉑ Ghost Funk Orcherstra / A Trip To The Moon (2024)
ブルックリンを拠点にするGhost Funk Orchestra(GFO)については、『MUSIC + GHOST』で憑在論(Hauntology)の範疇にある音楽として取り上げた。マーク・フィッシャーらが説いた(ポピュラー文化における)憑在論とは、戦後英国社会が無意識に表現していた東側的な、あるいは福祉国家のヴィジョンから生まれた啓蒙的な社会のデザインが失われ、西側的資本主義社会に駆逐されたこと
もっとみる⑳ David Jackman / SEKIHI OIDORI (石碑老鳥) (2023)
2018年にOrganum名義の『RAVEN』で復活して以降、デヴィット・ジャックマンの発表の頻度は過去のそれを上回っている。独Die Stadtはジャックマンの新作を定期購入するサービスを開始し、新録のCDがほぼ月一で作られているようだ(加入者が身近に1人しかいないので又聞きの情報です)。日本での古くからのパートナーである鈴木大介氏主宰のSiren Recordsからもコンスタントに音源が発表
もっとみる⑲ Current 93 / In Menstrual Night (1986)
House Of Mythologyとデヴィット・チベットが数年前から始めたCurrent 93の旧譜復刻レーベル「HOMALEPH」から、2枚のアルバムが同時にリイシューされた。アイスランドのヒルマー・オウン・ヒルマーソンとの連名で作られた『Island』(1991)と、ほぼスティーヴン・ステイプルトン(Nurse With Wound)単独の仕事とも呼べる『In Menstrual Night
もっとみる⑲ Barry McGuire / Eve Of Destruction (1965)
アルバム全体ではなく、表題曲である「Eve Of Destruction」についての話である。ボブ・ディランがフォークを電化し、Jefferson Airplaneが結成されたフラワー・ムーヴメント元年ともいえる1965年7月に発表されたのがこの「Eve Of Destruction」(邦題「明日なき世界」)だった。PFスローンが書いた曲と詞をThe Turtlesが歌ったが、その後に録音されたバ
もっとみる⑱ セラニポージ / ワンルームサバイバル (2002)
10月にストリーミングサービス上で配信されるようになったセラニポージの2枚目。セラニポージとは作曲作詞のササキトモコと、時期によって異なるボーカル(現時点での最新作『メリーゴーラウンドジェイルハウス』ではササキ本人が歌っている)によるプロジェクト。各サービスやメディアでは「serani poji」で統一されているが、セガのビデオゲームソフト『ROOMMANIA #203 』(2000)とその続編『
もっとみる⑰ Foetus / HIDE (2010)
2019年11月、ニューヨークはブルックリンにあるFoetusことJGサールウェルのSelf-Immorationスタジオを訪れ、インタビューを敢行した。話題はFoetusの歌詞となり、アニメ『サウスパーク』スタッフがドナルド・トランプを番組内でネタにしないことを発表した声明を例に挙げて、政治的トピックを表現に盛り込むことの難しさを尋ねてみた。それに対してサールウェルは「自分はあくまで個人的なこ
もっとみる⑯ V.A. / In Fractured Silence (1984)
Nurse With Wound(NWW)ことスティーヴン・ステイプルトンのレーベルUnited Dairiesからリリースされたオムニバスが、仏SouffleContinu Recordsから再発された。LPしか出さない版元だという認識だったが、珍しくCDも併発だったから嬉しい。
United Dairiesは79年のNWW『Chance Meeting On A Dissecting Tab
⑮ V.A. / pop'n music 11 AC ♥ CS pop'n music 9 (2004)
KONAMIの人気音楽ゲームタイトル『pop'n music』シリーズ第11弾のサウンドトラック。ある時期からシリーズごとにテーマを設けるようになった『pop'n』だが、本作『11』のテーマは世界旅行であり、その名の通り世界各国の音楽が題材になっている。
『pop'n』は同社の『beatmania』の兄弟機という出自を持つタイトルで、その発想の根幹には『beatmania』同様にエレメカ(説明がち
⑭ The Belbury Poly / The Path (2023)
『FEECO』誌特別号『MUSIC + GHOST』で大々的に取り上げたGhost Box Records。その共同経営者であるジム・ジュップのプロジェクトBelbury Polyのニューアルバム『The Path』が先日リリースされた。同号でインタビューをして以来、プレスリリースを送ってもらえるようになり、今回も音源からアートワークまで一式寄せてもらった。アナログを購入したはいいもののまだ届いて
もっとみる⑫ Andrew Chalk / The End Times (2022)
アンドリュー・チョークを追い続けている人の中で、近年発表されてきた音楽それ自体の出来を問うている人はどれだけいるだろうか。
かくいう筆者は、出すものすべてを手に入れているわけではないが、音楽への期待ではなく、チョーク本人への信頼から追いかけている。目まぐるしい時勢下でエゴを排したまま不断に作品を積む姿勢、あえて形容するなら没頭に、わが欠乏が埋められていくような気持ちがある。ひょっとしたら自分は今
⑪Andrew Wasylyk / Hearing the Water before Seeing the Falls
昨年購入したはいいが、ずっと積んだままであったアンドリュー・ワシュリクの最新作。遠海や孤島を撮影し続ける写真家トーマス・ジョシュア・クーパーの展示『The World's Edge』のために書かれた本作は、実際にワシュリクがクーパーとともに大西洋に浮かぶ孤島へ出向いて、現地から録音した音を素材にしている。世界的な海抜の上昇により35年以内に水没すると言われている島々の記憶を、クーパーは写真として
もっとみる⑩The Advisory Circle / Full Circle
12/10発売の『MUSIC + GHOST』で主題となるGhost Box Recordsは、音楽評論家のマーク・フィッシャーやサイモン・レイノルズが憑在論(hauntology)というタームを使用する際によく例示された。同レーベルが探求するのは50年代末から1978年の英国についての記憶だ。マーク・フィッシャーは、この志向を79年からのマーガレット・サッチャー政権によってフェードアウトさせられ
もっとみる