『マチネの終わりに』第四章(7)
平生、蒔野は、業界政治とはまるで無縁だが、数年前に、日本ギタリスト連盟の人事を巡って、祖父江が理不尽な非難を浴びていた時には、そのいざこざに首を突っ込んで、自らも大分、火の粉を浴びた。無論、祖父江を擁護するためである。
業界とは無関係のヒマな文化人まで参加して、「旧態依然」だの「権威主義」だのと一頻り騒いで鎮静化したが、そういう厄介事にいかにも無関心なはずの蒔野が出てきた、というのは、ちょっとした話題になった。
蒔野は、新聞社の取材を受け、元々はつまらない誤解に始まった