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コンサルタントの管理会計(原価計算)のアドバイスは役に立たない!?

 「コンサルタントの管理会計のアドバイスは役に立たない。」
 経営者とコンサルタントの関係を、アスリートとコーチの関係に例えられます。コンサルタントが管理会計上のアドバイスをするときは、コーチがアスリートに代わって競技に出て失敗するケースも聞いたりもします。コーチが競技に出てはダメですよね。あくまで経営者を支援する立場なので。
 コンサルタントが管理会計のアドバイスをする際、どのように考え、支援していくかを整理してみました。簿記検定の勉強とも一味違ったアプローチですが、気軽に読んで頂ければ嬉しいです。
 また営業担当者も想定読者に。得意先と値段交渉時、自社製品のコストも知っておいた方が納得感を持って受け入れられるのではと思います。ひょっとしたら、注文数が少ないのでコストが上がり、・・・ということで”値上げ交渉”につながるかもしれません。

1.管理会計にこだわる理由

 記事タイトルの問いに対して回答はNO!コンサルタントの管理会計のアドバイスを役に立たせたい!!」と考えます。私自身、経理畑でサラリーマン人生を歩んでいますが、中小企業診断士試験を知ってから、「会計分野が得意な、コンサルタントになりたい!」と思い、受験勉強を開始した経緯があるからです。

 枠囲み「個人別成績結果」の「実務事例Ⅳ」が会計分野の試験結果です。現在と比較すると受験者数の母集団も少ないように感じますが、合格前年(平成21年)の全国模試では全国10位、合格年(平成22年)の全国模試では全国1位と、受験当時は執念、こだわりがあったと振り返っています。ゆえに実務に入ってから、「コンサルタントの管理会計のアドバイスは役に立たない。」と言う現実にすごく悩んだ時期もありましたし、今もアドバイスには慎重になるようにしています。

図①:会計科目(事例Ⅳ)で全国模試1位に対する強い”こだわり”を持っていました。

2.管理要件=原価計算基準ではない

 10年以上前の昔話はさておき、「管理会計のアドバイス」をする際、どのようにアプローチするかについて、製造業のケースを見ていきます。
 『原価計算基準』では、費目を「材料費」「労務費」「経費」の3つに区分され「制度会計上のルール」となっています。「製造原価報告書」の様式であり、原価計算基準の費目別原価計算をする際には必要となる区分ですが、経営者側の管理要件にそのまま当てはめて良いか?が疑問になります。

 経営者とコンサルタント。両者の決定的な違いは、企業の内部者か外部者かに尽きると思います。経営者が費用でイメージするのは、費用管理部門の担当者の顔。対して外部コンサルタントの場合、担当者の顔は思い浮かびません。まして『制度会計上のルール』だけに固執し”ヒト”を見ず、数値ばかり眺めても、ドツボにハマります。よって経営者視点に近づくため、「誰(Who)?」の観点で区分し、労務費・操業費・設備費・管理費に分けてアプローチすることが、大切だと考えています。

図②:「誰(Who)?」の観点で、部門別に区分してアプローチします。

 「労務費・操業費・設備費・管理費に区分してからアプローチするのは何となく分かった。これで経営者にどのように伝えるの?」
 下図は「分析メモ」を書き込むフォーマットです。経験則ですが、このフォーマットでしたら、顧客先のどの部門(Who)にどのような内容をヒアリングするか、イメージが付きやすいと感じています。
 メモの取り方ですが、例えば「修繕費がXX円増加した」という事象説明は表面的でNG。背景を深掘りして「設備Aの老朽化対応が課題となっている」レベルまでメモするようにします。とにかく十分に掘り下げ、取捨選択して経営者にお伝えします。

図③:顧客先のどの部門(Who)にアプローチするか、分かりやすくなります。

3.費目ごとのアプローチはどうする?

 労務費・操業費・設備費・管理費のどの費目(What)をターゲット設定、担当部門(Who)にアプローチするまで説明しました。あとの問題は、どのようにアプローチ(How)するかですが、費目ごとに異なります。
 各費目で共通して言えることですが、「既存の課題を解決するだけは二流。一流は課題自体を見直し、解決すること。」と言われています。自戒の意味でも、課題を深掘りする習慣は大切ですね。

図④:どのように(How)アプローチするかは、課題の深堀が大切。

4.費用とコストは違う?

 例えば労務費コストを想定してみましょう。”業界あるある”は、従業員の高齢化による給与ベースアップや、作業効率化で残業時間削減等、費用面ばかり目が行きがちになります。片手落ちですよね。用語の厳密な定義はさておき、次の数式で捉えると多面的に評価できるようになります。

   コスト(労務費分) = 費用(労務費) / 生産数量

 この式から、記事冒頭でも出てきた営業担当の、注文数が少ないのでコストが上がり”値上げ交渉”につながる訳です。

図⑤:コストを考える時には生産数量の考慮は必要不可欠です。

5.労務費コストの計算方法は?

 規格化された標準的な製品を連続大量生産する「総合原価計算」を前提に話を進めます。工程別に要員が配置されており、部品ごとに通る工程が異なります。部品ごとに工程別コストを積み上げていく訳です。
 工程の具体例(一例)で説明します。下段の生産管理部分で、コスト計算の分母部分になります。塑型とは、鍛造、圧延、プレスなど金属加工法の一つです。材料に対して力を加えて変形させ、製品の形を作っていきます。塑型で形を作って、加工で磨いて、複数の部品を組み立てるという工程をイラストで表現してみました。
 次に上段を見ていきましょう。部品に要員ごとの労務費費用管理され、コスト計算の分子部分になります。これを下段の生産管理部分で割り労務費コストを計算するというイメージになります。

図⑥:労務費コストは”工程別に積み上げる”イメージになります。

6.労務費以外の費目について

 ところで、鍛造(=金属を叩いて圧力を加えることで強度を高め、目的の形状に成形する技術)は「鍛造=日本刀をつくるイメージ」で説明されますが、実際はどうなんでしょうか?これまで労務費、つまり人の手による製造活動を中心に見てきましたが、機械設備の働き(設備費)も欠かせません。
 設備費につき『最新鋭の自動車エンジン用クランクシャフト鍛造ライン /Sumitomo 6500t Hot Forging Press for Crankshaft』(住友重機械工業株式会社ホームページ)の動画をご紹介します。
 「あれだけの強度の部品をどう製造するのか?」の疑問がスッキリするのでは。近年、電動化の流れもありますが、内燃機関で日本が世界に誇る技術をPRした素晴らしい動画だと考え、紹介しました。

 以上、如何だったでしょうか?簿記検定の勉強とは一味違ったアプローチだったのではないでしょうか。コンサルタントが管理会計(原価計算)に入り込む、何らかのヒントになればと思います。また1年前に『工場経理のリアル(経理マンの現場)』も記事にしたこともありますので、併せて読んでもらえると嬉しいです。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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