見出し画像

痛快!簿記の試験勉強だけでは身につかない実践知識とは?【4コマ図解】

 日商簿記検定試験(2・1級)、公認会計士試験そして税理士試験(簿記論・財務諸表論)等では「簿記の勉強」が必須で、人によって仕事をする上でベースの知識となったりします。簿記の技術を使って決算書を「作る」に主眼が置かれていますが、ふと当技術を「使う」・・・つまり応用することを考えたことはありませんか? 次のサンプル問題をご覧ください。

問題「製品別原価計算」「本支店(本社工場)会計」の関係を述べよ。

【サンプル問題】

 大方は「分かりません。工業簿記と商業簿記の領域で適用するシーンが異なるし・・・」との反応でしょうか。無理もありません。簿記の試験勉強では決算数値を「作る」に主眼がおかれて、簿記の技術をどう「使う」か、試験問題になっていなかったからです。

解答案: 働き方改革が背景となり、「本支店(本社工場)会計」から「製品別原価計算」的に集計方法が置き換わるという関係性があります。
 なぜなら今まで「本支店(本社工場)会計」により「属地」ごとに財務数値を関係付けていましたが、リモートワークが普及する等、働く場所(属地)の制約の意味が無くなり、より実態に会計処理を近づけるために「製品別原価計算」的に集計する必要が出てきたからです。 【184文字】

【サンプル問題(解答案)】

 ちょっと難しいですよね。会計マニアなら、更にここから「発生主義」と「費用収益対応の原則」等、古典的なドイツ会計理論の考えを展開することが予想されますが、別の機会で・・・。今回は【4コマ図解】ということで、上の「問題と解答案」の内容を分りやすく、イラスト図解してまいります。

1.「製品別原価計算」と「本支店会計」は?

 製品別原価計算とは、原価要素を一定の製品の単位に集め、単位ごとに製品の製造原価を計算する方法を言います。下図①の例で説明しますと、自社工場ではA工程・B工程・C工程の3工程を有しており、B工程からX製品を、A~C工程からY製品を製造するケースで考えます。
 他方、本支店(本社工場)会計とは、本店と支店や工場を有している会社において、各支店・工場ごとに決算書を作成している場合に全拠点合算ベースの決算書を作成する場合に適用する会計処理のことを言います。下図①の例で説明しますと、〇×社にD本店とE支店があり、この両者合算ベースの決算書を作成することを言います。

図①:「製品別原価計算」と「本支店会計」の各々の意義は?

2.リモートワークの普及による変化は?

 先ほど、本支店会計では属地ごとの事業所の数値を合算する旨の説明をしました。しかしリモートワークが普及している現在、決められた場所である、工場のA~C工程、D本店、E支店を属地としない場合も出てきます。組織変更も柔軟に行う場合も出てきます。
 下図②の例で説明しますと、Xさん、Yさん、Zさんがリーダとして名乗りを上げ、D本店、E支店のメンバーが参加する場合を説明しています。Xさん、Yさん、Zさんを「仕事」と捉え、この仕事単位でD本店、E支店の各コストを集計した方が、経済実態を表している場合も出てくるという訳です。

図②:リモートワークが普及している現在、「属地」より「仕事」の方が実態を表します。

3.お金の管理を「属地」から「仕事」へ・・・

 では改めて「製品別原価計算」「本支店(本社工場)会計」の比較を見ていきましょう。

製品別原価計算    ・・・ 「仕事」単位でお金とヒモ付け
本支店(本社工場)会計・・・ 「属地」単位でお金とヒモ付け

「製品別原価計算」と「本支店(本社工場)会計」の比較

 リモートワークが普及している現在、働く場所(属地)の意味が変わり、「どこで働くか?」は、たいして重要でなくなりました。会社組織を作るときも「属地」より「仕事」ベースで編成する組織も出てきています。研究開発やプロジェクト単位の仕事にもなると、よりスピード変化への対応が求められてきます。
 昔からの会計システム。大抵は「属地」でデータベースを組んでいます。つまり「属地」ごとに総勘定元帳が別々という訳です。この状態で、リモートワークが普及。「仕事」ベースで総勘定元帳を組み直すのはとても大変な作業になってきます。

図③:「属地」より「仕事」ベースでお金を管理する組織も増えてきています。

4.実は税金計算にも影響が出てくる?!

 もし昔からの会計システムを使い「属地」別にデータベースを組み、「属地」ごとに総勘定元帳が別々に複数存在する場合、「仕事」ベースで総勘定元帳を組み直すために「1つの総勘定元帳に統合する」ことが運用上、一番シンプルで理想的だと考えています。しかし、規模の大きな企業の場合、システム投資にお金・時間もかかります。
 これまでの暫定対応として、下図④の形でマトリックス管理するのが現実的かと考えています。そして総勘定元帳の統合後はD本社とE支店の線引き(本支店会計)も一層意味が無くなってきます。しかも、この論点は管理会計のお話だけで済みません。Zさんの仕事のように、進捗未達の場合に損金が認められない(資産計上が求められる)場合もあるからです。

図④:総勘定元帳を統合するまでは、キッチリとしたマトリックス管理が必要!

 以上、いかがだったでしょうか?よくある話ですが、会社外部の税務顧問は、うわべの決算書や税務申告書の中での分析や議論は得意です。しかし、総勘定元帳の中まで深く入り込み、管理会計にまで触れ、経営者の伴走者になるのは難しいと言われています。もし皆さんが会社内部で働かれ、経理や経営に関係する役責の方は、逆に会社外部の税務顧問に教えてあげるところかもしれません。「簿記の試験勉強」では出てこない論点なので。

図⑤:以上①~④コマのまとめになります。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう

ビジネス書が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?