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日野あべし
2022年8月29日 21:24
雨が降っていた。雨はしとしとと降り、今は雨粒を体では感じられない程度だ。その雨はこのじんまりとした古い寺も濡らしていた。小川にかかる石造りの小さな橋を覆う苔も雨に濡れ、生気を帯び、寺を覆う緑もその緑を深めている。喧噪から遠く離れたこの寺は、静かに緑に包まれているようだった。その寺には人はほとんどいなかったが、一人の男が腰掛に座っていた。腰掛は濡れていたようだったが、男はそれを意に介し
2022年8月15日 22:49
その男の子は一人ぼっちだった少なくとも男の子はそう思っていた誰も自分のことなど理解できないその思いが男の子をより一人ぼっちにしていた男の子は寂しく、辛く、悲しかった男の子はあまりにも寂しかったので命を投げたそうとしたこともあったそうした時、男の子の周りの人達は涙したその涙は明かりになった男の子は自分の足元しか見えていなかったがその明かりが男の子の周囲を照らし