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がんばった日のエール

「がんばったね、えらかったよ」

病院を出て、泣き止まない娘を仕方なく抱き上げる。
あぁ、もうこんな時間。家の近くの安い商店は着く頃にはもう閉まるだろう。
仕方がないから今日は駅前のスーパーで買い物をすませよう。割高だけど。

それにしても、重くなったなぁ。成長は嬉しいけど、買い物袋を持つ頃には歩いてくれるだろうか。


店に入った途端、走り出しそうとする娘を制しながらカゴとカートを取る。

「こちら新商品です!ぜひお試し下さい!」

横から聞こえた元気な声に顔を向けつつも、娘を捕まえるのに必死ではいはいなんて適当に答えながらよく見ずに受け取り、バッグの中へ。

店に入ったら元気になったくせに、飽きた途端ぐずぐずする娘をなだめながら買い物を済ませやっと帰宅。
今日の中で今が一番疲れてるっていうのに、ここからの時間がまた地獄なわけで。
食事の準備をし、お風呂を掃除して、不機嫌な娘にせっかく作ったごはんを拒まれながらも張り付いた笑顔で食べさせる。怒ってると余計食べないのなんてもうわかってる。
不機嫌な上司に不機嫌で返さないのと同じ。アニメを見せながら食事を終え、おもちゃでなんとかごまかしてお風呂にも入れて、どうにか寝かしつけまでたどり着いた。


自分まで寝落ちしそうになりながらやっとの思いでリビングに戻ると、家の中はごちゃごちゃ。そりゃそうだ。何もしてない。何もできてない。
目の前の光景にさらにどっと疲れて冷蔵庫を開けると、さっき無心で放り込んだ缶が目に入る。あ、そういえばこれ、スーパーでもらったんだっけ。

へぇ、クラフトビールかぁ。
お酒なんて何年も飲んでないけど、何をする気にもなれなくてソファに座り、半分ヤケ酒みたいな気持ちで缶を開けてみた。

プシュッという軽快な音。甘い香りと淡い苦味、爽快感。
その爽やかさはまるで新しい朝が始まったようで、なんだか笑えてちょっと泣いた。

今日も「がんばったね。えらかったよ」、私。

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