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行方知れずの交差
彼女と肌を合わせたのはこれで4回目だ。
最初は2年前の冬。
もう何十年も前から知っていたけれど連絡を取ることはなく、毎日顔を合わせていた昔を、定期的に懐かしむ間柄でもなかった。
"ごめん、電話取れなかった。久しぶり。何かあった?"
唐突に送られてきたそのメッセージを見て動悸が走った。
いつ登録したかすら覚えていない、それでもはっきりと見覚えのある名前。全身の毛が逆立ったような、ぶわっとした感覚が体を巡る。
たまたまなんの偶然か、いたずらか。
昨日の夜、胸ポケットに入っていた僕の携帯は知らない間に勝手に彼女に電話をしていたようだった。動揺したまま急いで発信履歴を見ると、そこには確かに彼女の名前があった。
もう、もしかしたらこの先見ることはなかったかもしれない名前。
画面にぴたりと貼り付いたあの漢字の羅列。
どうしてこんなことが起こってしまったんだろう。
よりにもよって、なぜ彼女に。
どれだけ身に覚えがなくても、彼女に連絡を取ったのは明らかに僕で、その着信を見て、彼女はメッセージを送ってきたのだった。
"むしろごめん、なんでかわからないけど電話がかかってたみたい。
今、履歴を見て気づいた。久しぶり。"
本当のことを書いただけなのに、自分が見ても全てが嘘くさい。
こんなの、連絡したくて電話した奴の腰が引けた言い訳にしか聞こえない。昨日僕は記憶を無くして人に電話をするほど酒でも飲んでいたのだろうか。発信の履歴はいつも通り仕事をしていた時間だった。
そんな馬鹿正直に本当のことを言わなくたって、どうしてるかなと思って久しぶりに連絡してみたと言えばよかったのかもしれない。
ぐるぐると歩き回りどうしようと呟き続ける頭の中の僕を落ち着かせながら、いくつかのメッセージを交わした。
そしてせっかく連絡を取り合ったんだからと、僕たちは十何年かぶりに再会をする約束なんて交わしてしまった。
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