見出し画像

雨の演奏会


"バシャバシャ" と、雨の音。
まるで誰かがいたずらをしているような
時々鳴る調子外れな "カンッ” という金属音や
不規則に溜まっては落ちていく "パタタッ" という大小の粒。


時折吹く、大きなため息のような風。
"ビュオゥゥゥ" と、上から下へ。
一度だけ窓を"ズン"と押したのも束の間
今度は落ちている葉に向かって”バササササッ”と
ちょっかいをかけに行く。
雨の日の強い風は、移り気で気まぐれだ。


"シャッ”  "シャッ”  ”シャッ"と
遠くから近くへ、水たまりを踏みながら段々とこちらへ来る車の気配。
"ヴウゥ...ン"と一度失速し、"ン...ゥウヴヴヴ”とまたスピードを上げる。
後ろに続くは、おそらく50ccであろう原付。
"ビィィィン”と近づいてきて
勢いよく"ジャッ"と水を切って遠くへ去っていく。


たまたま聞いていた旧型のラジオからは
"ザッ...ザザッ"という雨の日らしい雑音と
その雑音すら仲間に入れてくれそうな"カコン、パコン"という
木を打ち鳴らしたような有機的な楽器の音。
そしてそれを包むように規則的にループをたどる運指。


私は、"ズッ..."と一回鼻をすすってから、
腹ばいになって寝転がり、折り曲げて絡めていた素足を
”ススス...”とこすり合わせる。
明日はこの雨も去り、あたたかいという予報だったが
まだ今は、少し肌寒いようだ。


突如。
思い出したように冷蔵庫が"ヴゥーーーン"と鳴き始める。
そうか、もしかしてお前も
この雨の真夜中を奏でる会に参加したいのかな。


どうぞご一緒に、どうぞご自由に。

ここから先は

0字

サポート、嬉しいです。小躍りして喜びます^^ いただいたサポートで銭湯と周辺にある居酒屋さんに行って、素敵なお店を紹介する記事を書きます。♨🍺♨