【読書感想】自転しながら公転する/山本文緒

幸せって何なんだろうな。あの人からすれば幸せで、この人から見たら不幸で。正解も間違いも、善も悪も、成功も失敗も。自分のかけているメガネ次第なんですよね。最後のセリフが胸に刺さってきた人は少なくないのではないかな。


悩み、悲しみ、怒り、何か問題が起きた時。自分がどうしたいのかが明確でないと、物事の判断や評価は曖昧になり、上辺だけになるんですよね。そんな皮相浅薄な行動では、何も解決できず、むしろ問題が大きくなることも。人生の目的が何かなんて、始めからわかるわけでもないから、なおさらたちが悪い。


普通。本当に普通の人間。性格も良すぎず悪すぎず、稼ぎもそこそこ、仕事や介護、人間関係で悩む姿。特別なところがなく、あまりに普通の人間が生々しく描かれているので、自分とリンクするその姿に、読んでてイライラしてくるんですよね笑


だけど、だからこそ、すごく共感できる。わかっているけどわからない、悩む必要ないのに悩んでしまう、自分に余裕がなくて相手を傷つけてしまう。泥臭くありのままの姿が描かれていたので、どんどんのめり込んでしまいました。


貫一の本音がなかなか見えない中で、狭量であること、料簡の狭さを問われるシーンが印象的。言葉にされないものをどう解釈し、どう判断するのか。これは、おみやちゃんに限らず、我々にも言えることなのではないでしょうか。共感できるできないということはひとまず置いといて。見えないものを知る努力は必要だし、勇気もいりますよね。そよかちゃんの本質をついたセリフが、鋭くて痛いけど、何だか気持ちよかったです。


冒頭でも記しましたが、ラストのセリフが素敵ですよね。一瞬、誰の言葉なのかわからなかったです笑


このセリフが言える料簡を持ち合わせる人間へと成長したことが伝わってくるので。失敗や苦悩、挫折。そういったものを乗り越えてきた人にしか言えない言葉だし、そういう人にしか胸に刺さってこない言葉のような気がします。


自転しながら公転する。このタイトルが印象的だけど、物語を通して、これほどピッタリくる言葉はないなと。グルグルとその場でもがき苦しみながらも、大きな軌道を描いて人生を進んでいく。その中心にあるものは、大事な人なのか、自分の信念か思いや価値観なのか。自転しながら公転する。そうやって、大きな成長を遂げていく姿が描かれていたのかもしれない。


478Pが長いと感じるか、人生という枠で捉えるとあっという間と感じるか。読み始める時は、長くて大変そうって思ったけど、読み始めたらあっという間で、もっと続きを見たり、語られないストーリーを読みたかったなという気持ちが残りました。


最後までありがとうございました!色んな人の感想を聞いてみたいので、気軽にメッセージください。

▶️ひなたにメッセージを送る

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,460件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?