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雛杜雪乃の雑記

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#短編小説

【#幻想商人】ジオードの内側【#雛杜雪乃 / Vtuber / #雪のあーと】

「ティアドロップ……と言うものを、知っていますか?」

どこからか、オルゴールの音が聞こえる。緊張で硬く凝り固まった耳朶(じだ)が、湯にふやかされたように柔く、ゆったりとほどけていった。
 こわばっていたまぶたが開き、瞳がようやく見たものを受け入れて、目の前にあるものと、自分が置かれた状況を理解した。
 そう、確か私は……何かがあって、思わずこの店へと駆け込んだんだった。それが何だったのか、この店

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【記念SS】眠り深(ネムリブカ)【雛杜雪乃短編SS】

数日ほど前から、奇妙な夢を見るようになった。

いつも通りの町並みなのに、どこか違和感を覚える風景。よくよく見れば、僅かに色彩が鮮やかなのだろうか?
 とにかく、それを眼下に見下ろしながら、隣人である雛杜 雪乃(ひなもり ゆきの)と共に紅茶を楽しんでいる夢だ。
 不思議なことに、彼は夢の中で言葉を発しない。
 私は、彼が淹れてくれた紅茶の香りを楽しみ、どこからか買ってきたのであろう茶菓子を口に運ぶ

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【メイドの日】今日だけのメイドお兄さん【メイド / Vtuber / 女装】

「……ま。ご……さま」

声が聞こえる。優しげでふわふわとした、それでいて男性的な声だ。幾度となく聞き、眠たい意識のなかでも覚えているくらい、身に染みたあの声だ。
 目を開けば声の主、雛杜雪乃がほんの少し困ったような微笑みを浮かべて、私を見つめている。

「おはようございます。ご主人様?」

違和感を覚える呼び方に疑問を覚えながら、目を擦り視線を落とす。その視界に入った姿に、脳がスパークを起こした

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【背神】改造シスター服の廃教会:エピローグ

「いやいや、ほんとに悪い冗談ですよ」

 新しく楽しい事を始めようと選んだ建物は、とんだ事故物件だった。
 潰えてしまった、偉大な信仰。忘れられたのではなく、力不足による滅亡。
 孤児院も兼ねていたここには、取り残された者たちの無念や妬み嫉み(ねたみそねみ)が溢れかえっていた。それらが神の皮袋を被っただけの、神のようなもの。ーーそれでも、れっきとした神の末席だった。
 信仰に飲まれるとはかくも恐ろ

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【背神】改造シスター服の廃教会【雛杜雪乃/シスター/男性Vtuber】

 率直に言って、無謀な事をした。しかし、見合うだけの見返りは得られたと思う。

 ここ最近お気に入りの個人Vtuber「雛杜雪乃」が、新しい企画を始めたと小耳に挟み、興味からタイムラインを覗き込んだ。
 告知となる画像、およそ健全とは言い難い衣装。いつも通りおかしな人だと笑うが、それ以上に気になる点があることに気が付く。

 ーー背景となっている廃教会。アレは、近所にあるんじゃないか、と。

 私

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