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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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2019年10月の記事一覧

エイトビートの恋人

「この小説の主人公が君にすごく似ているんだよね」 あのひとにそう言われて、学校が終わったあとすぐにJR名古屋高島屋の8階にある三省堂へと走った。愛知の田舎町から電車で1時間かけて名古屋の私立高校へ通っていたわたしにとって、こことタワーレコード近鉄パッセ店は心のオアシスのような場所だった。 真っ先に文庫本コーナーへと向かい、食わず嫌いしていた大人気作家の名前を探す。出版社ごとに分けられ、所狭しと並んだ背表紙を目で追う。 ここじゃない、ここでもない、置いてないかもしれないな…

思い出は夜に溶けて

覚えていることはたくさんある。 地元の坂道に沿う桜並木 駆け上がって息を切らして笑いあう僕ら 寒すぎるくらい効いたクーラーの匂い 夜のコンビニの誘蛾灯が弾ける音 ざらざらと揺れる夏の青 橙に染まる二両編成の電車 並び合う僕ら 忘れてしまったことはたくさんある。 笑い声 薄れていく面影 朝日に光る涙の理由 囁き声 届いたはずの言葉 明けない夜はないと誰かが言った。 その通りなのかもしれない。 夜が明けた時にどうなってるのか。 それは誰も言わない。 ただ夜は明けると言う。 た

笑えた。

死にたくなった。 深夜の学校で女子高生が飛び降り自殺。 何とも芸術的。 屋上から街を見下ろす。 ある路地裏に能面が見えた。 こちらをずっと眺めている。 深夜の学校で女子高生が飛び降り自殺をしようとしているのを見ている、能面を付けた男。 何だか笑えた。

深夜2時、首都高の下で愛を

当たり前のように振られた彼女は、それはそれは穏やかに恋をしていた。私からみれば、穏やかではない恋だった。でも、彼女はあくまでマイペースに、穏やかに恋をしていた。 それにしても勇気ある行動だった。呼び出して告白なんて。しかも、深夜の首都高の下で。告白して、簡単に言えば振られた。彼女はせいせいした顔をしていた。多分、いちばん終わらせたかったのは彼女自身だったのだと思う。はっきりすっきりさせた彼女は賢かった。私と違って。 私ならそんな人好きにならない。彼女の話を聞きながら何度も

【短編小説】石狩あいロード 1/4【Illustration by Koji】

短編小説「石狩あいロード」の第1話です。 この短編小説はKojiさんとのコラボ企画の作品です。 幸野つみが小説を書き、それに対してKojiさんにイラストを描いていただきました。 全4話。第1話は約3000字。全体で約20000字。 それでは第1話をお楽しみください。 物語の始まりです。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 石狩あいロード 第1話 小説:幸野つみ × イラスト:Koji ◆ ◇ ◆ ◇ ◆  帰りたい。  心の中で誰かが呟く。 「帰りたくない」  日差しの

【#生きる音楽】あの子とギブス

ギブスは大学時代に好きだった女性の十八番だった。 彼女がカラオケでこの曲を歌う時はいつも 「高いんだよね。この曲。」 と言ってから歌っていた。 彼女とはバンドも一緒にやった。 僕が組むバンドで僕はいつもバンマスでかつ調整役だった。 スケジュール調整も、練習曲を準備するのも、スタジオを予約するのも僕。 そんな僕を彼女は理解してくれていた。 「私はあまりバンドをやったことないからわからないけど、今野くんがいるからバンドとかできるんだよね」 まだ地下になる前の渋谷

【小説】 終わりの電車の向こうがわ

オレンジ色の静かな光が、中身が半分になった梅酒のグラスについた水滴に反射する。 わざと腕時計の時刻に気づかないように、彼のブルーのネクタイと浮き上がった喉仏に視線をあわせた。 ふたりきりの個室の外、数十分前までは人の気配が絶えなかった居酒屋が、だんだんと静かになっていく。夜が更け、終電が近い。あたしは、まだ知らないフリをしている。 「だからさ、もっとやらなきゃって思うんだよね」 ビール4杯飲んで変わらない顔色の彼は、先程から熱っぽく、立ち上がったばかりのプロジェクトに

わたしがあなたのペットだった頃。

「君は年が離れているから、恋人って感じがしないね。セフレってほどドライでもないし。なんだろうね」 ストーブの灯りで橙色に染まったその人の肌に触れながら、すこしだけ考えて「それならペットでいいですよ」と答えた。 男は肩まである自分の髪を邪魔くさそうに束ねて、いいねそれと笑った。 恋人ではない男のベッドで寝るなんてはじめてだった。 意外と平気。わたし、なんにも傷ついてない。 ベッドで過ごした数十分は、過去の恋人たちとしてきたのと変わらない、ただのセックスだった。 窓の外は雪

貴方が笑えばそれで、

三年ほど前だったか。 久々に連絡をくれた友人から、あいつが亡くなったとの報せを受けた。 正確に言うと、随分前に亡くなっていたのがわかった、との事だった。 “あいつ”というのは僕が都内で売れないバンドマンをやっていたときのギターを担当していたメンバーだ。 あいつと僕は何かとウマが合い、たまたま家が近かったこともあってバンド活動以外でもよくつるんでいた。 物静かで、おっとりしていて、マイペースで、人類史上類を見ない方向音痴で、女子が飲みそうなカクテルばっかり注文する平和主義

誰かに髪の毛を乾かしてもらうとき、目を閉じると君にしてもらってるみたいで好き

ドライヤーが壊れたのは3日前だった。髪の毛を乾かしているとどんどんモーター音が大きくなってきて、なんと火花まで飛ぶようになった。増税前に買い換えるんだった、と少しだけ後悔して新宿ビックロに行き、モデルチェンジで安くなってたパナソニックのナノケアを買った。マイナスイオンの1000倍以上の水分を含む「ナノイー」なるものが発生するらしい。おかげで私の髪はするんするんのまとまりのあるサラサラ髪へと生まれ変わった。 私は髪の毛がコンプレックスだった。くせ毛で細くてふわふわしてすぐに絡

それはもう、ただの好きな人だよ

そんなことない。そんなことないと何度も何度も自分の中で答えを探す。けれども、私が欲しい答えは見つからなくて、ただただどろっとした黒いかたまりが心から漏れ出ているだけだった。ぐるぐると回る回る回る… そうやって考えている時点で答えは出てるじゃんか、と友人は言う。まだ割り切れるもん、と壊れたおもちゃのように繰り返す私に、彼女は何度も食い下がる。 ずっと未読だったLINE。勇気を出して再送した私のメッセージには、仕事が忙しくて返信できないとの返事があった。そうしてそれから、返信

君のことなんか、大好きでしかない

「で、これからどうするの?」 君が静かに、探るように放った一言に私は何も言えなかった。私はどうしたいんだろう。私は君とどうなりたいんだろう。目の前にはただ君が好きっていう刹那的な感情と君に抱かれたいっていう欲望が綺麗に二つきっとほとんど同じ大きさあるいは質量で並べられている。でもそれは目の前にしかなくて、数メートル先には何もなかった。暗闇、違う、そんなネガティブすぎる表現じゃなく、空虚あるいは煙に近い。見えそうで見えないもの、形のないもの、実態を掴めないもの。君のことなんか

#プレイリストをさらし合おう 〜【番外編】エモさを感じたい夜に(平成〜令和編)〜

最近の曲も聴くんだよということで、比較的新しい曲をピックアップ。 旋律も歌詞もスーっと入ってくる。それでいて心が揺さぶられるそんな曲です。 理屈なしに聞いてみてほしい。 こちらは説明無しでプレイリストをどうぞ。 Spotifyでプレイリストを組んでいます。 曲を全部聴くにはSpotifyへのログインが必要となります。 **** #プレイリストをさらし合おう をやります!!に参加しています。 #エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

#プレイリストをさらし合おう 〜【番外編】エモさを感じたい夜に(クラシック編)〜

ときには歌詞のないクラシックで落ち着きたい夜もあります。そんなときに理屈なしで聞いてほしい。 比較的有名な曲を選曲しています。(浅田真央フリー使用曲など) こちらも説明無しにどうぞ。 Spotifyでプレイリストを組んでいます。 曲を全部聴くにはSpotifyへのログインが必要となります。 ***** #プレイリストをさらし合おう をやります!! #エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜