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ADHDと併存する障害について

2016年9月、こころとそだちのクリニックむすびめ医院長 田中康雄先生のセミナーへ行ってきました。
今回は「ADHDと併存する障害について」でした。
ADHDという言葉も一般的に通じることが多くなり
広く知られるようにはなったものの、まだそのADHDというものを上手く説明することが 実は医師でも難しいとの事でした。

ADHDの子たちが大きく困り感を感じていることととして衝動性だったり攻撃性だったりがよくあげられるそうなのですが、ではなぜそのような行動障害的なものが大きく表に出てしまうのでしょうか。
発達検査を受けてもこれといったモノが出なかったり、普段はそうでもないのに検査になるとうまくいかないと感じたり、ADHDを取り巻く悩みというのも多様的で紙面だけではその子たちの本質をつかめないことが多々あるようです。

児童精神科の故・佐々木正美先生も以下のようにお話ししていました。

発達検査をもとに診断をくだすということはありません。医師になって45年になりますが、最初は先輩の先生たちに教えられながら経験を積み、だんだんわかってくるわけです。

ADHDを取り巻く多様な悩みの背景として引っ掛かりが多いのが「自尊心」です。
ワーキングメモリーも記憶だけでなく、躊躇や自信の無さが影響として出てきます。
また、自尊心とつながるものとなるのはアタッチメント(愛着)の問題です。
養育者が愛情をかけているつもりでも、子どもからするとそう感じているようには受けない言葉の表現が聞かれたり、人見知りが激しい、またはその逆で全く人見知りがないなど・・・。
アタッチメントが組みにくい子であることで自己肯定感が育たないという事態もあります。

そうなるとうつ病になったり情緒的な障害を抱えてしまったり、もともとの困り感よりも後から出てきた問題が大きくなってしまうケースも少なくないそうです。
そのような意味では早めに特性に気付くことが大切ですが、診断を急ぐ周りの大人がいるケースも多いようです。
診断が下ったからと言って何かが変わることはありません。
先生はなんどもおっしゃっていました。

「診断よりも特性に合った生活支援を!」
「診断よりも支援を急げ!」

ドクターとして支援者には頭が上がらないとのお話もありました。ドクターは困り感を持った子や養育者を30分程度の診察で診るだけで、支援者は毎日課題と向き合っているし、そんな方々にアドバイスしたところでもう色々試行錯誤しているだろうし、、と。

それゆえ、もっとこうして欲しいというのは本当に言える立場じゃないし、もう皆さん十分頑張っていると声をかけたいとのことでした。

それでありながら、結果ばかりが評価として上がりチームワークの乱れに繋がったりするとバランスを崩して頑張りがうまく届かないということもあって、職員関係への配慮にも力を注がなければならない状況もあるだろうとお話ししていました。

福祉や教育関係の職場の人間関係って本当に難しいです。そこに互いの尊敬が無いとうまくチームとして成り立たない。そして子どもたちは大人の人間関係をよく見ているんですよね。

子どもというもの、障害というものを通して自分を見る、自分を取り巻く世界を見る。学ばなければならないのは大人も同じだなぁと田中先生のお話しを聞いて、いつも地に足が着くどころか、地面にめり込むような気持ちになります。

ADHDだけをみて、治療するということは出来ません。その周りの住環境、人的環境、年齢観。様々な取り巻きを見ていかなければなりません。それは診断が下るような障害だけでなく、社会という障害だったりもするんだなと痛感させられました。支援者としての自分を含めた「環境」は知識があっても、技術があっても、調和がないと子どもには届かないと思うと連携が本当に必要だなと思えます。


お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。