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ショパンを知る―「ショパンー200年の肖像」展レポ

昨日は、練馬区立美術館で開催されているショパン展に行ってきました。

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1年ほど前から開催を耳にし、早く来ないかなぁと思っていたら、もうその時期になっていました。

新型コロナウイルスの影響で、東京展は4/26~6/28開催だったものが、6月のみの開催となり、たくさん予定されていた講演会やスぺシャル・コンサートなどのイベントはすべて中止となってしまいました。

イベントの中止は残念ですが、展示自体が中止とならなくて良かった。
美術館はコロナ対策万全で、入り口にはアルコール消毒液が用意され、館員の方々は皆フェースシールドを着用しておられました。

日曜日だったからか、人がたくさん来ていて、ショパンは多くの人に愛されているなと改めて思いました。

せっかくなので、記録としてレポートしておきたいと思います。

ショパンと私

その前に、これまでのショパンと私について語ります。なぜショパン展に行ったのかにもつながるお話です。

初めまして」にも書いたように、ショパンは私の好きな作曲家の一人です。

子供の頃からショパンは憧れで、英雄ポロネーズ革命を弾くことが夢でした。そんな私がピアノを続けて20年以上経ち、もうバラードスケルツォなどを弾けるようになったことは今でも感慨深いものです。

私にとって初めてのショパンは、ワルツです。ショパンの曲を弾くにあたっては誰もが始めに通る道かもしれません。中学生頃に先生に「ショパンのワルツを弾きましょう」と言われた時、「やっとショパンが弾ける!」と嬉しく思ったことを覚えています。ワルツはほとんど制覇しました♩

本格的にいろんな曲に手を出したのは大学生の頃からです。ピアノサークルに入部したことで、サークル員の影響でそれまで知っていた曲がほんの一部であったことに気づかされました。

演奏会では、大学1〜2年の時にバラード第1番、大学3年の時にバラード第3番を弾き、社会人2年目で「序奏とロンド」といわれるロンドop.16を弾きました。演奏会では弾かずに譜読みだけ終えている曲は多数存在します笑

現在も半年~1年に一度はショパンの曲を弾きたくなります。離れていても、不思議なことに定期的に弾きたい時期が訪れます。難曲といわれる曲も多いですが、譜読みがさほど苦ではない曲が多く、指馴染みしやすい動きで、練習していて楽しいのです。譜読みに時間がかかったり、音を探りながら練習したりするようなリスト、ラヴェルなどと比べると、コスパが良いように思います。

それでいて且つ、メロディーラインが美しく、舞台映えする曲も多いです。弾きながらメロディー自体も楽しめる。音楽自体が好きというのに加えて、練習が楽しいということが定期的に弾きたくなる理由なのかなと思います。

ちなみに外出自粛期間中はバラード第4番を弾いてみたり、現在はロンドop.1を弾いたりしています。ショパンのロンドは3曲あり、他の有名な曲たちと比べると弾かれる機会が少なく、そこまで評価されていないようなのですが、私は隠れた名曲と思っており大好きです。

ロンドop.1は、かっこよかったり、美しかったり、可愛かったり、切なかったり、様々なメロディーが1曲の中に詰め込まれています。バラードも同様で、こういった1曲の中でいろんな表情を見せる曲は、飽きなくて楽しめるので好きです。
ロンドは3曲とも素晴らしいので、よかったら聴いてみてください♪

今回、日本でショパン展が催されるのはとても貴重な機会であり、今後ショパンの曲を弾くにあたっても何か刺激になるに違いないと思い、ショパン展へ足を運ぶにいたりました。

ショパン―200年の肖像

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では、さっそく本題へ。今回私が行った「ショパン展」こと、展覧会「ショパン―200年の肖像」は、2019年に日本とポーランドが国交100周年を迎えたことを記念として、開催されたものです。ポーランドはショパンの母国です。

自身の遺品だけでなく、彼にまつわる肖像画、美術作品などから、ショパンの人間像や音楽創作の背景を紐解いていくという、新鮮な切り口での展示でした。周りのアーティストたちがどのようにショパンを描いたのかを見ていくことで、多角的にショパン像を捉えることができる。新しい試みだなと思います。

展示にあたっては、ショパンの遺品・権利などを保有・管理しているワルシャワの国立フリデリク・ショパン研究所(NIFC)が全面協力。展示数は約250点と盛りだくさんです!

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ショパンにまつわる美術作品

肖像画
彼にまつわる美術作品は数多く、いろんな人が彼の肖像画を描いています。それぞれ個性がありますが、共通して言えるのは鼻筋が長くて、少し面長で、目がクリっとしていて、髪の毛がウェーブがかっていることでしょうか。ハンサムと言えますね笑
家族の肖像画もありましたが、お父さんにそっくりでした!

曲をイメージした絵画
面白かったのは、曲からインスピレーションを得たという絵画です。
24の前奏曲について、それぞれの曲をイメージして描かれた絵が展示されていました。

ショパンの前奏曲といっても、何番といわれてすぐに思い浮かべることができず、悔しかったです。その場でグーグル検索して、楽譜を見つつ鑑賞しました。雨だれ(第15番)は、雨だれなのに雨が降っていない絵だったので、あれ?となったり、太田胃散のCMに使われている第7番は可愛い子たちが踊っているような絵で「確かにそれっぽい!」と思ったり。感じ方は人それぞれで面白いなと思います。

できることなら一つ一つすべて聴きながら鑑賞したい!と思いました。音声ガイドを利用すればできるようです。

日本とショパンの関わり

日本がショパンとどのように関わってきたかについて、昔の楽譜や教科書、自伝書などの展示によってわかるようになっていました。驚いたのは、日本ではエチュードop.10-3が、映画「別れの曲」によって知れ渡り、それ以来「別れの曲」と呼ばれるようになったとのことです。日本以外では「別れの曲」と呼ばれていないことを知りませんでした。この映画が日本にもたらした影響は大きく、この後ショパンはどんどん人気になっていったようです。

ショパン 国際ピアノコンクール

5年に一度、ワルシャワで開催される国際的なピアノコンクール「ショパン 国際ピアノコンクール」の歴史が年表になっていました。また、予選から本戦、決勝までの道のり、審査方法も図解されていました。

歴代優勝者を見ていくと、今やよく知られた世界的なピアニストたちがここから何人も輩出されているのがわかります。

予選から本戦までの題目も見ましたが、ものすごい数のショパン曲をこなさなければならず、その量を思うと目がくらみました。コンクールに向けてショパンに人生を捧げるようなものです。

2020年はまさにショパンコンクールの年ですが、2021年に延期されたようです。これからのコンクールも注目されますね!

デスマスク、ショパンの手、呼び鈴

ショパンのデスマスクと手の模型、療養中に使っていたという呼び鈴の展示には、胸が高鳴ります。

デスマスク
デスマスクは肖像画で見るより顔が小さく見えました。鼻が高いのは肖像画の通りだけど、面長ではないしかなり小顔!

手の模型
手の模型は左手でした。実寸大なのでしょうか。絵画で彼の手を見て大きいなと思っていましたが、手の模型では予想以上に小さかったのに驚きました。

細くて長い繊細な指、爪は丸くて小さめ、骨格はしっかり。手のひらよりも指の長さが大きいです。でもオクターブも届くのか?というほど小さく見えました。彼は9度(ド~高いレ)開いたといわれているので、指を伸ばしたらもう少し大きいのかな。女性である私の手の大きさともあまり変わらないようでした(私は手のひらが大きく、指も長いです笑)。
この手で様々な曲を奏でていたのだなと思うと、ワクワクします。

呼び鈴
病床で人を呼ぶ時に使っていたというベルです。中国の布袋像の形をしていました。ショパンやポーランドのイメージとはかけ離れたもので、意外と渋いものを使っていたのだなと思いました笑

自筆譜、直筆の手紙

自筆譜
一番の見どころは何といっても自筆譜でしょう。私はこれを見るのを楽しみにしていました。展覧会の最後の方に展示されていました。”楽しみは最後にとっておこう”スタイルです笑

ショパンは、曲のイメージが思い浮かんだらまず譜面に起こすのではなく、まずはピアノで弾いてみるというやり方で作曲をしたそうです。そして下書きをせずに譜面を書き始めるのだとか。

自筆譜は翻訳付きで解説されていました。細かな音符がびっしり。レガート、クレッシェンド、運指(指遣い、親指を1、人差し指を2などと数字で表す)、ペダルなどの指示まで細かく書かれていて、几帳面な様子が伺えました。音楽の繊細さが楽譜に現れていました。

和音を書き直すなど修正した後も残っていて、今も長い歴史にわたって弾かれている曲がここから生まれたのだなと、しみじみとした気持ちになりました。

手紙
ショパンは手紙以外の文章を書き残していないといいます。そのため手紙は貴重な資料です。

手紙の筆跡も細かくて几帳面な様子を感じました。楽譜と似たような印象を受けます。でも書かれた内容は対照的に、皮肉が込められていたりして、知らない一面を見ることができました。

ショパンを身近に感じられる展示

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他にも、ワルシャワやパリでの音楽活動が伺える絵画や、ショパンの音楽祭で使われた歴代ポスターなどが展示され、本当に盛りだくさんな内容でした。じっくり見ていたので、気づいたら2時間半くらいは経っていました。

2階の渡り廊下には、ショパンのピアノ曲が流れ、くつろいでいる方も多くいました。館内全体にショパンの曲が聴こえ、彼の世界観をたっぷり味わうことができました。

ショパンが確かに生きていたことを実感し、人は長い歴史の中を生きているのだなと当たり前のことを思いました。もう何年も前に生きていた人物なのに、後世にわたって世界中に愛されているショパン。改めてそのすごさを感じました。

現代を生きる私たちにとっては歴史上の人物であり、遠い存在のように思えますが、展覧会では自筆譜や遺品、まつわる美術作品などを通して、彼を身近に感じることができます。

欲を言うと、自筆譜をもっとたくさん見たかったし、一つ一つの曲の背景を解説した展示も見たかったなと思います(欲張り笑)。
いつかポーランドに訪れて、現地のショパン展へも行ってみたいです。


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