ひなせ*まなみ

酒かすの日常

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酒かすの日常

最近の記事

朝起きたらごはんが米だった

朝起きて炊飯器の蓋を開けてゆらゆらと水面が見えた時の絶望は計り知れない。夕べ睡魔に打ち勝ってお米を研いだところで緊張が解け、タイマーのスイッチを入れ忘れたのだ。 気を取り直して炊飯器のモードを早炊きにしてスイッチON。朝ごはんは無理だけど、お弁当箱に入れるのはギリ間に合う時間だった。 外は春の雨が地面を叩きつけていた。あと1、2時間は雨脚が強く、通勤時間に被るので余裕をもってお出かけ下さいと、NHKのアナウンサーが告げていた。 パンを焼いて、りんごジャムを載せて、コーヒー

    • 夜道を歩くな

      子供の頃、「夜道を歩くな」と当たり前のように叱られた。夕方の門限は絶対で、余程のことが無い限り夜に外出するなんて許されない時代だった。それは、我が子が犯罪に巻き込まれないように(または手を染めないように)という親心に他ならない。 もちろん夜道で暴漢に遭っても悪いのは犯人で、襲われた側に何の責任も無いと思う。今の社会で犯罪を誘う行動が悪いなんて言えば正論の嵐が吹き荒れボコボコに叩かれて炎上してしまうだろう。 でもやっぱり、自分の身を護るという意味で親の小言は正しいなと思う。

      • 弁当戦争

        会社の仕出し弁当が値上げを申し出てきた。 一食330円を360円にする30円の値上げ。近頃の価格高騰の中ではかわいいもので、そりゃ仕方ないねって思える範囲だった。そもそも現時点でMランチさんと新規契約すると単価は400円で、ずいぶん前からお付き合いしているからこその330円だったという話も聞いた。 ところが30円の値上げに弁当組がざわつき、その騒ぎを聞きつけたライバル社のFランチさんが「ウチは350円で納めさせていただきます」と名乗りを上げて来た。矢継ぎ早に「一日試食会をサ

        • さようならの重み

          日本人として日本で暮らしていると、わりと頻繁に「さようなら」という挨拶を耳にする。 社会人になった今でこそ、会社を上がるときには「(お先に)失礼します」と挨拶するけれど、小学校の頃は「先生さようなら」と言って帰宅した。「今日の日はさようなら」と歌にもあるように、なんとなく締めの挨拶的な、その場を去る的なニュアンスがあると思う。 わたしはスペイン語を話せないけど、”アディオス”という単語がさようならであることは知っていた。でも、今日なんとなく「アディオス」をググってみたらわり

        朝起きたらごはんが米だった

          汽車と電車

          新幹線に乗り込んで座席に座り、やがて動き出す景色を眺めていると自動音声の案内が流れて来る。 「この電車は、のぞみ号、東京行きです」 べつに何の間違いも失礼もないけれど、このフレーズを聞くと毎回違和感を覚えてしまう。「ああ、新幹線って電車なんだ」と。 子供の頃、東京に住んでいた。 車を持たなかったわたしの家はバスと電車が日常の足で、西武線や山手線や中央線。地下鉄にも良く乗った。それらは紛れもなく電車だった。 でも長野の祖父宅を訊ねるとき、母は上野駅から乗り込んだ急行を「汽車」

          墓参り

          富山からJAMへ行く途中、墓参りをした。 母の命日が近いと思ったからだ。 花を買ってお墓に行くと、少し萎れかけた花が供えてあった。 1週間くらいかな。 ここを参るのは弟くらいしかいないけど、彼が来たのだろうか。 線香台を掃除して墓石に水を打ち、 まだ元気な花をより分け、持参した花と一緒に切りそろえて供えた。 そして線香の煙を浴びながら献杯の缶コーヒーを飲んだ。 向かいの工事現場はずいぶん高いビルがそびえてきて、西日を浴びた窓ガラスがキラキラと光っている。 さてそろそろ行

          140文字の勘違い

          Twitterを使い始めて10余年。 140文字で伝えるということにだいぶ慣れたと思っていた。 今日、同じようにシンプルなほど気が利いているというイメージのラインメッセージで、「なんのこと?」と返されてびっくりした。青天の霹靂だった。 なんのこと。 その5文字は、かなり深くわたしの心に刺さった。 ネタでもなく、真面目に伝えようと思って打ったメッセージが1ミリも届いていなかったのだ。メッセージの相手は、たぶん真剣に想像して、それでも解らなかったから訊いてきたのだと思う。

          140文字の勘違い

          季節性インフルエンザはいつからただの風邪になったのか

          今年のGW明けからcovidのコロ助が5類感染症に移行した。 ずっと2類を続けていれば安心かもしれないけど、それによって社会生活が制限されるもどかしさは痛いくらいに身に染みていて、どこかでピリオドを打たないと社会がダメになるってことは誰もが考えていたことだと思う。 そもそも行政が2類を続けていくにはお金もかかるし、財源はわたしたちの税金なのだ。 最近の感染状況とか罹った時の重症度とか、総合的に考えて妥当な頃合いだと思う。 そして迎えた5月8日。 テレビは日常復帰の象徴と

          季節性インフルエンザはいつからただの風邪になったのか

          電子マネー観が化石だった件

          ネットショッピングからコンビニまでクレジット払いに何の抵抗もないわたしは、20代のころから躊躇なくクレカを使っていて、キャッシュレス=クレジットカードという図式が完成していた。 所詮借金と言われても、大人なら自分の現金収支くらい予測するのが当たり前で、使いすぎが怖いなんて心配は1ミリも共感できなかった。信用を持っているのに電子マネーをチャージしてバーコードを示すなんてメンドクサイことはできないと、レジ待ちの後ろからペイペイ払いを冷ややかに見ていたところがあったと思う。 伝票

          電子マネー観が化石だった件

          頭で理解していることを行動に移す壁について

          喫茶ツバメの帰り道。十三駅の地下道で人が群がっていて、その輪の中心に初老の男性が倒れていた。わたしが通りかかったとき、彼は階段の一番下で側溝に顔を埋めて微動だにしなかった。若い駅員がトランシーバーを片手に何やら喋りながら、「お客さん、お客さん、大丈夫ですか」と声を上げている。場所柄、昼から酔っぱらいかと思ったけど様子が違った。目撃者の話では階段の途中で崩れ落ちてそのまま最下段まで転がったという。 駅員が駆けつけているのだから、少なくとも数分が経過しているのだと思う。トランシ

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          入ったら出ること

          パソコン、スマホ、ウェブサイト。 わたしたちはIDとパスワードを入力してサービスを使ったり、ガジェットを起動することを日々繰り返している。ほとんど条件反射で使っている機能だけどその画面に現れる用語が微妙に違うことに引っかかった。 ログインとログオン。 たまに、サインインなんていうのもある。 なんとなく言いたいことはわかる。 その画面で名前とパスワードを要求されることも同じ。 承認されればシステムを使えるようになるのも同じ。 でも、何が違うんだろう。 気になって調べてみた

          入ったら出ること

          ハイブリッドでエゴドライブ

          仕事の事情で久しぶりにトヨタアクアに乗っている。 いろいろ癖があるけどやっぱりハイブリッドは燃費がいい。 ハイブリッド車にはタコメーターの代わりにパワーメーターがついている。 バッテリーの状態とモーターの状態を表示する計器。その瞬間、電気だけで走っているのかガソリンを消費しているのか発電しているのかもわかる。 ハイブリッド車はバッテリーの電気を上手く使って走れば燃費はぐんぐん伸びた。 モーターの範囲で加速してブレーキで発電するのが基本だけど、バッテリーに溜められる電気には

          ハイブリッドでエゴドライブ

          受け取る荷物は誰の物

          連休始め。コンタクトレンズをネットでポチった。 本来眼科医に処方されて初めて買うことができる医療器具なので通販には抵抗あったけど、この間リアルショップに買いに行ったらわたしの使っているレンズは取り寄せ品になりましたと言われてしまった。メニコンZというハードレンズ。以前は当日持ち帰りが出来たのにね。 レンズショップは名古屋で、わたしは翌日にも香川に戻ってしまうので取り寄せでは受け取れない。今のレンズの処方は控えてあったので、思い切ってネット通販でコンタクトレンズを買ってみた

          受け取る荷物は誰の物

          鈍感肌の憂鬱

          基礎化粧品の宣伝文句には敏感肌という文字が躍る。ちょっといいお値段の化粧水ならなおさら。肌荒れしやすい方にも優しいんですよ。良い商品ですよってアピールなんだと思う。 幸いわたしは基礎化粧品でトラブルを起こしたことはないし、正直化粧水なんて何を使っても結果が変わらない。カウンセリングで買ったお高い化粧水でも、ドラッグストアで安売りしているようなボトルを使っても、なんなら一日くらい付け忘れても大した違いがない。(すっぴん肌が綺麗という訳では無く、何をしても変わらないっていうこと

          鈍感肌の憂鬱

          常識と正義とは、パーソナルなものだと思った話

          新入りの派遣社員が古参職人に挨拶の声が小さいと怒られた。 職人の親父さんから聞いた話。アイツそれで逆切れしてんだよな。まじ子供。やってられねえ。 周りの社員もそれに同調していた。 解らないでもない。空気を読んで波風を立てないことが大人の知恵なら、彼の行為は間違いなく子供だ。パートナーに反感を持たれることは仕事をする上でもマイナスだと思う。古参職人のほうが立場が上なら、率直に言って馬鹿だ。 でも、言われたことが自分のアイデンティティを揺るがすことなら。彼の反抗は誰にも貶

          常識と正義とは、パーソナルなものだと思った話

          半分くらい田舎に帰れ

          鈴木実貴子ズの新宿駅という歌の冒頭がひどい。 新宿駅人の多さ、半分くらい田舎に帰れ。  横断歩道人の多さ、半分くらい死ねばいいと。 思ったのは本当。 思ったのは本当。 自分の存在を棚に上げてる時点でダメなんだけど実によくわかる。 都会の人の多さは尋常じゃない。 ところが去年、緊急事態宣言で呆気なく人波が消えた。 半分どころか全部消えた。 無人になったターミナルは不気味なくらい静かで、この世の終わりかと思う雰囲気が漂っていた。 たぶんあんな風景を見るのは後にも先にも無いだ

          半分くらい田舎に帰れ