朝起きたらごはんが米だった

朝起きて炊飯器の蓋を開けてゆらゆらと水面が見えた時の絶望は計り知れない。夕べ睡魔に打ち勝ってお米を研いだところで緊張が解け、タイマーのスイッチを入れ忘れたのだ。
気を取り直して炊飯器のモードを早炊きにしてスイッチON。朝ごはんは無理だけど、お弁当箱に入れるのはギリ間に合う時間だった。

外は春の雨が地面を叩きつけていた。あと1、2時間は雨脚が強く、通勤時間に被るので余裕をもってお出かけ下さいと、NHKのアナウンサーが告げていた。

パンを焼いて、りんごジャムを載せて、コーヒーを淹れて食べて飲んで、シャワーを浴びてお化粧して、やっと炊けたご飯を弁当箱に詰めて、さあ会社に出かけようと思ったところでグーグルマップをチェックした。いつもの道路が真っ赤に染まっていた。絶望的な渋滞だ。

全ての緊張が解けてしまい、わたしは鞄に詰め込んだパソコンを広げてTeamsを起動すると会社に向けてメッセージを打ち込んだ。

「すみません、絶望的に渋滞しているのでテレワークします」

うちの部署はこれで許される。
でも社会人としてどうよ、という自覚はある。たぶんよその部署では実際に眉をしかめている人がいると思う。ああ、陰口の一つ二つ飛び交っているんだろうなあ。

渋滞に並んで1分でも早く会社に着くのが会社人の美徳かもしれない。不可抗力の渋滞に対して申し訳ありませんと謝罪して、遅刻したぶんの残業を返上して仕事に勤しむこと。そうすることで真面目な人になれる。

ただどう考えても、渋滞に並んでいる時間は何の生産性も無い。わたしの全ての仕事は目の前のパソコンの中にあり、ツールも全て揃っている。アプリを起動すれば、自宅だろうが公園のベンチだろうが1分で仕事が開始できる。そして下手をすると会社で丸一日誰ともしゃべらずに済むくらい個人プレーの仕事なのだ。

その代わり、遅刻しても休暇しても自分で止めた仕事は誰も進めてくれない。立ち止まった時間に積み上がったものは自分で処理しなければ潰されてしまうことになる。

好きなように休みを取って、好きなように遠征して、自由で良いよねって言われるけど、仕事の種類と常識なんていろいろあるんだよって心で思ってる。チームプレイが苦手過ぎるわたしには天職かもしれないけどね。













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