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聖ヒルデガルトの喜びのクッキー 医学史家から見てどうなの⁉︎ 𓇗𝕳𝖎𝖑𝖉𝖊𝖌𝖆𝖗𝖙𝖊𝖓 𝕹𝖔𝖙𝖊𓇗

医療や科学は日進月歩で、日々新しい研究成果が発表されています。
私たちもヴュルツブルク大学 修道院医療研究者である マイヤー博士のように、ヒルデガルトの知恵を正しく、現在の知識とともに調和して行かねばならないと感じています。それが植物療法士としての役割であると感じるからです。

ヒルデガルトの研究者でもあるマイヤー博士は、特に現代のニューエイジ界におけるヒルデガルト医学への熱狂を懐疑的に捉えています。

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"今日、ヒルデガルト医学の信奉者たちは、彼女の指示に従ってもっぱら治療を行おうとする。それを批判的に見て、私は自分をさらけ出すようなことはしません。薬は現代の知識と調和していなければならない。”
ヴュルツブルク大学 修道院医療研究グループ長 
ヨハネス・ゴットフリート・マイヤー博士

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そのようなマイヤー博士はヒルデガルトの処方箋でも喜びのクッキーと言われるヒルデガルトクッキーをクリスマスの時期になると家で焼いていることを明かしています。

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"ナツメグは偉大な熱と適度な力を持っています。人がナツメグを食べると、心が開き、判断力が妨げられず、良い気質になります。ナツメグ数個、同量のシナモンとクローブ少々を取り、それらを粉砕する。そして、これと細かい全粒粉と水で小さなケーキを作る。それをよく食べる。それは、心と精神のすべての苦味を静め、あなたの心と損なわれた感覚を開き、あなたの心を陽気にします。それはあなたの感覚を浄化し、あなたの中のすべての有害な体液を減少させます。あなたの血液に良い液体を与え、あなたを強くする。" -ヒルデガルト・フォン・ビンゲン、『フィジカ』、~1153年

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マイヤー博士、曰く、ヒルデガルトの著書『Physica』の中に残しているヒルデガルトクッキーのレシピは、現在、流通しているビンゲンの本に書かれている料理方法とは異なりますが、彼女から出たものであることが証明されているとのこと。

ヒルデガルト・フォン・ビンゲンは、スペルト小麦を使ったお菓子作りのレシピをひとつも書いていません。彼女は植物学の著作の中で、この種の穀物は健康的で明るい性格になると賞賛していますが、食べ物の調理法については何のヒントも与えていません。それ以外のもの、つまりヒルデガルトのすべての料理本やお菓子作りの本は、【現代の純粋な発明品】であるようです。

当時の習慣として、ベネディクト派の修道女は自分の治療薬の多くをケーキ(ドイツでいうクーヘン)として処方していました。
小麦粉、豆粉、パン粉、水、時には卵などを混ぜた生地に、植物の粉末を練り込むだけ。これをロール状にしたり、板の上で平らに押したりして、小さなビスケットを切り出し、天日やストーブの上で乾燥させていたそうです。朝の空腹時や食事の時に1~2枚食べたり、ワインに溶かして飲んだりしました。
また、ビスケットは湿布や軟膏にもなりました。

私たちもヒルデガルトクッキーを作る際に、よく情報で出ている“スペルト小麦”を使用しました。
でも、実際は、スペルト小麦自体、ヒルデガルト自身が提唱していたかどうかは、研究として明らかとされていないようです。マイヤー博士が、スペルト料理はヒルデガルト・フォン・ビンゲンにまで遡ることはできないと言われた時は、とても残念な気持ちになりました。

1950年代から1960年代にかけて、医学史家のハインリッヒ・シッパーゲスがヒルデガルトの著作を紹介し、ヒルデガルトの作品を編集して出版し、オーストリアの医師ゴトフリート・ヘルツカが「ヒルデガルト医学」の基礎としました。
ヒルデガルトの没後1000年にあたる1979年には、オーストリアやドイツでヘルツカ博士によるヒルデガルト療法が普及しました。小麦製品の代替品として、また多くの文明病の治療薬としてスペルト小麦を使用することが推奨されたのは、“ヘルツカ博士”にまで遡ります。

戦後、コンスタンスに居を構えた彼は、1955年からコンスタンスの薬剤師と一緒に様々な「ヒルデガルト療法」を作り、後にJURA社が大規模に製造することになった。こうして、全国の健康食品店で販売されるようになりました。ヒルデガルト・フォン・ビンゲンが提唱したスペルト小麦のレシピや栄養学をまとめた料理本が発売されました。

結果、ヒルデガルトの没後1000年にあたる1979年になって、ヘルツカ博士がスペルトを使ったヒルデガルトの料理を広めたことになります。

▼JURA社 ヒルデガルトの名前が付いた製品たち

ただ、私たちとしては、ヒルデガルトが提唱していなかったとしても、現在市場で多く見受けられる小麦粉よりはスペルト小麦を使用したヒルデガルトクッキーをお薦めしたいと思います。
それは、スペルト小麦には、セロトニンの材料となるトリプトファンが含まれていますが、このトリプトファンは体内でセロトニンを生成します。そして、十分なセロトニン量は、冬の鬱病の予防にも良いとされているからです。

ヒルデガルトクッキーにはナツメグやクローブなどが入っていて、気分を明るくしてくれます。ただし、ナツメグが多く含まれているので、病人は1日に1~2枚のビスケットしか食べてはいけません。
また、中世のヨーロッパにはテンサイ糖がありませんでした。人々は甘味料として蜂蜜を使用していました。よく知られているヒルデガルトクッキーはハチミツで甘くしておらず、当時は薬のようなものでした。

自分たちの文化の中に、健康で賢明な生活に関するヒルデガルトのような伝統的な療法を見出すことができるのは素晴らしいことだと思います。

私もヒルデガルテンの薬草園のメンバーたちに振る舞うために作ってみました。
ネットで検索してみると、現代風にアレンジされたものがたくさんあり、それはそれで美味しそうです。が、私たちはなるべくヒルデガルトに忠実に作ってみたいと思いました。でも、実際に作ってみると、自分の味覚に負けて、オーガニックのブラウンシュガーを少し加えてしまいました。

出来上がったクッキーは、堅パンのようなものでした。ヘルシーな堅パンのような…。最初に口にしたときは特に魅力を感じませんでしたが、後味は温かみのあるスパイスのような美味しさです。
意外にも周りは素朴で美味しいと食べてくれました。

このクッキーには、卵やバターを使わないので、日持ちもしますし、高価な輸入スパイスを使うときにはとても便利ですよね。
修道女が憂鬱な気分の人に処方する漢方の丸薬のような役割の食べ物として開発したものだろうと感じました。
私たちはとても美味しくいただけました。健康に良いと言われている効果については保証できませんが、私はファンになっています。とても作りやすいのでオススメいたします。

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