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学校で詳しくは教えてあげられないコト

学校で教えないのに、社会人になったら『知っていて当然』との扱いをされることは多いです。学校で教えたくても、世間からの批判に怯えるなどして生徒たちに教えられないことは多いです。ここでは、それらをいくつか紹介します。

コンドームの使い方

性に関することを公の場で話すことに対する忌避は根強いです。名前を教えても、コンドームとはどのようなものか、コンドームを触って実際にどう使ったらよいか、など実用的なことを扱うのには高校でも抵抗があります。性教育などの講演があったとしても、性暴力、性感染症、命の誕生などの話が主になりがちで、性交渉の話は敬遠されています。

これらの要因としては、学習指導要領における歯止め規定があります。『○○は取り扱わないものとする』という、教えてはいけないと指示されている内容があるのです。『人の受精に至る過程は取り扱わないものとする』(小学校理科)*1、『妊娠の経過は取り扱わないものとする』(中学校保健体育)*2、が性に関する内容としての歯止め規定です。高校では歯止め規定はありませんが*3、世間からの批判を恐れる学校現場では、『性交渉』などの表現を持ち出すことが忌避されるのは変わりません。そのため、きちんとした知識を学ぶ機会を提供できていないのが現状です。

お酒との付き合い方

学校教育では、飲酒は悪いもの、という扱いです。中等教育では、全員が未成年なので、当然と言えば当然でしょう。例えば、『生活習慣病などの要因になる』『社会や健康に大きな影響を与える』と、薬物乱用や喫煙と並列して飲酒は紹介され、悪い面ばかりが強調されています。

しかし、重要なのは、お酒との適切な付き合い方のはずです。成人になればお付き合いでお酒を飲むことになります。お酒を全て断ると『人付き合いが悪い』などと非難されたりいじめの対象になったりします。どの程度なら飲んでも健康でいられるのか、適度な飲酒が健康に与える影響、などを知らずに成人になるのは危険だと感じています。

投資と資産形成

お金の話自体が学校ではタブーです。お金儲けなどの話もよろしくはありません。お金=汚いもの、という固定観念があるからでしょうか。

2022年から実施の新学習指導要領にて、高校では金融教育が扱われるようになりました。しかし、扱われるといっても、数多くある家庭科の分野のうちの1つである消費生活・環境の1項目でしかありません*4。また、教える側の教員が投資や資産形成が不要だった世代や、投資などの必要性が薄い給与と退職金が安定している公務員であることも扱いにくい要因になっています。

少子高齢化が加速していく中で、律儀に保険料を納めていても年金だけで老後が暮らせなくなることは容易に想像できます。ライフステージに応じてどう資産を形成していくのか、お金との上手な付き合い方、などは個人に委ねられてしまっています。お金という重要なことですが、誰も教えてくれないので、自己責任になってしまっています。

まとめ

保護者や世間からの批判を恐れて、生徒たちに教えたくても教えられないことは多くあります。しかし、それらは社会人になれば『知っていて当たり前』『知らなかったら自己責任』にされてしまうことがあります。全てを学校が教える義務はありません。しかし、十分な知識をもたずに社会に出て行く生徒たちを見ている立場としては、モヤモヤする点です。

引用文献

*1 【理科編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_005_1.pdf

*2【保健体育編】中学校学習指導要領(平成29年告示)解説
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_008.pdf

*3【保健体育編 体育編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
https://www.mext.go.jp/content/1407073_07_1_2.pdf

*4【家庭編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説
https://www.mext.go.jp/content/1407073_10_1_2.pdf

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