スタートアップの仲間集めで重要な「熱量」の考え方
株式会社ブレーンバディ執行役員CHROの永井です。
今回は、スタートアップの初期メンバーを集める際に見極めたい「熱量の高さ」について考えていければと思います。
スタートアップの初期は、正直楽な環境ではありません。ヒリヒリした環境下かつ変化スピードも激しく、場合によっては働く時間も少し長くなるケースもあるかもしれません。このようなスタートアップ環境下で、働く個人が持つ「熱量の差」は顕著に現れます。
今回は、書籍をベースに僕の考え方を踏まえて、仲間集めについて考えていきます。
人間を4つの階層で捉える
今回は、『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術 小野壮彦氏』の内容をベースに書いていきます。この著書の考え方として、人間を地下深くにつくられた建物のように4階層で捉えます。階層は以下の図の通りです。
上に行くほど変わりやすいもので、下に行くほど変わりにくいものです。また、人の表層に出ている経験・知識・スキルは見やすく、わかりやすい。
一方で、地下に潜れば潜るほど見えにくく、わかりにくいものです。
この構造で捉えた時に、スキルマッチの危険さがわかると思います。スキルは表層にある一番変わりやすいものです。人には、変わりやすい部分とかわらにくい部分があるとした時に、スキルマッチの判断は変わりやすい表層的な部分がマッチしているだけです。その後の成長やカルチャーマッチが期待できるか否かは不明な状態です。仲間集めをする際に、このフレームを活用し、変わりにくい部分を見極めていくことが重要だと思います。
熱量の差分が発生するソース・オブ・エナジー
今回のテーマである熱量とは、最下層の一番変わりにくいもの「ソース・オブ・エナジー」のことです。著者も本書の中で書いていますが、地下2階のポテンシャルまで見極めることができればある程度人の見極めはできると思います。ただし、スタートアップの初期フェーズとなると、最下層まで見極めていきたいです。理想論かもしれないですが、スタートアップの初期は、全員が起業家であり経営者だと思います。その人を駆り立てるエネルギーの根源があるかどうか。またその強さがどれくらいなのかは非常に重要な要素です。
では、ソースオブエナジーとは一体どういうものなのでしょうか?簡単に整理していきます。
ソース・オブ・エナジーとは、「使命感」であり「劣等感」です。
「使命感」がエネルギーの根源である具体例としては、医学の道を目指す人の動機が、「子どもの頃に家族を病で失ったので、自分がいつかその病気を治したい」という使命感であるケースなどがあります。
「使命感」は、簡単には揺るがない強固な精神性をその人に授ける働きがあります。そのため、よく聞く言葉にすると「熱量」が高い人に見えます。
「劣等感」は、ネガティブに捉える人もいると思います。しかし、劣等感も使命感と同じく、人生をプラスにするポジティブな力です。僕も使命感だけではなく、大きな劣等感がエネルギーの源になっています。
「劣等感」と「使命感」は、どちらが良い悪いということは無いと思います。ただし、どちらも本人の考え方次第では、プラスのパワーにもマイナスのパワーにもなる可能性があることは理解しておきたいです。
どんなに生まれ持ったポテンシャルが高く、コンピテンシーを磨き、知識や経験を重ねても、事を成す人になるためには、エネルギーの源である「使命感」や「劣等感」の強さと、矢印を他人や環境ではなく、自分に向けられるか否かにかかっていると言えます。
熱量の差分から生まれること
熱量の差分は、欲求の大小や高低と似ていると思います。高いから良い、低いから悪いなどは無いと思います。ただし、スタートアップのカオス的環境下で、ある程度の熱量が無いとその人自身が苦しむ可能性があるのではないかと感じています。特に初期は、創業メンバーを含め大きな「使命感」や「劣等感」から生まれる高い熱量を持つメンバーが、比較的多い環境だと思います。そうすると必然的に当たり前の基準や、求め合う水準が高くなります。結果、熱量が高く無いメンバーは、「自分はカルチャーマッチしてないのではないか」とネガティブな気持ちになることが考えられます。
また、「同じ熱量でやらなきゃいけない」と思い込み、頭で考え高い目標を描きますが、強い「使命感」や「劣等感」がないことにより、エネルギー不足が発生し行動が生まれない状況が発生します。
個人的な考え方になりますが、熱量の高低や欲求の大小・高低は、どちらが良い悪いという事は無いと思います。その人にとっての望む場所がどこで、その場所に行くことができれば幸せなのかがクリアになっていることの方が重要だと思います。
そのため、採用という観点で見た時に、相手の望む場所と本質的な熱量の高さを捉える事が、入社後のお互いの幸せにつながるのではないかと感じています。
どうやって見極めるのか?
では具体的にどのように見極めてくと良いでしょうか?細かいテクニックは、本書その他の文献や記事などで紹介されていると思いますので、今回は僕の考え方を整理していきます。
1)相手と対話する際の心構え
これまで、数多くの人と対話してきました。採用面談に区切ってもかなりの数になります。ただ、毎回の面談で「この人の人生がこの面談にかかっているかもしれない」というスタンスで臨むようにしています。「相手の人生と会社の命運をかけた1時間」という気持ちで、相手と対話するようにしています。
2)感情に左右されすぎない
感情は大切にしますが、不要なバイアスを発生させないことには注意を払っています。その際に活用しているのが、人間を見るフレームワークです。今回の記事でも紹介した4階層のフレームや、マズローの欲求5段階説、その他特性診断などをできる限り組み合わせて活用するようにしています。特にスタートアップの初期は、適性検査など人物を定量で測るツールがないケースが多いと思います。「感覚」は大切ですが、「感覚」という言葉だけで片付けられるほど採用は軽く無いと思います。人間を見るフレームはいくつもあるので、今後も効果的に活用していきたいです。
3)相手の本質を引き出す時間をつくる
当たり前だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は忘れている方も多いと思います。相手の能力を引き出し損ね、才能を見逃す面接を行なっている会社も実はあると思います。例えば、圧迫面接や部屋の環境など相手の本質を見ることができない状況はできる限り避けます。相手と対等な関係で、相手をリスペクトし、緊張をほぐした状態で面接に入るようにしています。
「人と向き合い続ける」ということ
採用業務をしていると、人を見極める(裁いている)感覚に陥ることがあります。ただ、相手を完璧に見抜くことは不可能だと思います。その人の数十年の人生をたった数時間で全て理解できる筈もありません。そのため、謙虚な気持ちと真摯な姿勢で、人に向き合い続けることが重要だと思います。
そして、常に人を見る目をアップデートし続け、採用することでお互いの人生が幸せになるのか?を自分にも問い続けていきたいです。
<参考書籍>
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