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成長機会の提供と支援

株式会社ブレーンバディ執行役員CHROの永井です。今回は、「成長機会の提供と支援」をテーマに人材開発について考えていきます。
人材育成において、成長機会の提供が重要であることを認識している方は多いと思います。ただ、その機会の与え方に悩む方や支援方法の最適解を日々模索されている方も多いのではないでしょうか?今回は、そんな方と一緒に、成長機会の提供と支援について考えていければ嬉しいです。

成長機会の提供と支援をすることの重要性

ちょうど良い成長機会の提供と支援することの重要性は、多角的に重要であることが考えられると思います。今回は、ハーズバーグの2要因理論から重要性を考えていきます。

海老原 嗣生. 無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論 (Japanese Edition) (p.17). Kindle 版.

達成する・承認される・責任を持つなど、仕事自体に関連したやりがいをもたらす満足要因と、外的な環境や条件に関わる衛生要因(外発的誘因)は、それぞれが単体で存在している訳ではありません。密接に連動しており、うまく繋ぎサイクルとして回していくことで、モチベーション(内発的動機)を高め続けられると説いています。
このサイクルを簡単に整理すると、機会→支援→評価→承認→報酬という流れになります。このサイクルを回すことでメンバーは、自ら頑張り着実に成長していくという考え方です。連続した人材育成を考える上で、このサイクルを回せる起点となる機会の提供は非常に重要になります。

どのような機会を提供できると良いか

評価→承認→報酬のサイクルを回している会社・組織は多いと思います。ただ、機会の提供や支援を制度として設計している会社・組織は少ないと思います。そのため、マネージャーに依存したやり方になったり、メンバーの自主性を尊重するというスタンスで特に機会を提供しなかったりという状態が起こりやすくなると思います。そのため、「どのような機会を提供するか」ということに悩むマネージャーは多いのではないでしょうか。
では、どのような機会を提供すると良いでしょうか?考え方としては、以下の図にあるチャレンジゾーンの機会を提供することです。

長村 禎庸. 急成長を導くマネージャーの型

ここはなんとなく理解されている方も多いと思います。コンフォートゾーンを抜け出して、パニックゾーンに入らない機会を提供することが大切です。また機会提供する際は、以下のことに注意したいです。

<メンバーの自己申告性を盲信するのは危険>
メンバー自身に決めさせること自体は間違いではありません。本人がその機会に対して、意味意義を感じ自分で「やる・やりたい」と言わせることは一貫性の法則から考えても正しいと思います。
ただし、メンバーは自分にとって最適な課題を知っている訳ではありません。メンバーはジョブも含め、経験が少なく新たな能力開発をしようとしています。そのため、本人の成長にとって最適な課題を自分で考えられなくて当たり前だと思った方が良いです。また、上司の方が広い視野で見れます。この機会を設計し提供することこそ、上司が存在する意義・価値の一つではないでしょうか。多角的に考えた時にどのような機会を提供できるか、何が最適なのか考えていけると良いと思います。

<スパルタでは弱点を克服できない>
当たり前ですが人には苦手なこと、不得意なことが存在します。メンバー育成において、苦手の克服や不得意領域の能力開発に向き合う時、苦手な領域に放り込み逃げ場を無くすスパルタ的なやり方を想像し易いと思います。ただ、これには危険な側面もあります。逃げ場のない状況に置かれることは、マネジメント理論から考えても自分の経験からも良いことだと思います。ただ、「苦手領域に放り込まれる」状況は、パニックゾーンに放り込まれるのと同義になるケースが多いと思います。そんな時メンバーは、「自分は何もできない」と全ての事象に対して自信を無くすことや「周りに迷惑をかけている」「周りから責められている」とネガティブな気持ちになりがちです。その状況は、自己効力感も下がり、心身ともに不健康な状態に陥りやすいです。
そのため、特に苦手領域に向き合う時は、今までの経験や強みを多少活かせることと混ぜたり、スモールステップで機会設計したりするとちょうど良い機会に設計できます。

<本人にとっては、十分難しいと感じている可能性が高い>
上司から見て「できるかできないかのギリギリのチャレンジゾーン」だと考えていても、当事者のメンバーは、あなたが思っている以上に厳しい機会だと感じやすいです。その上で逃げ場をなくされる状況を作ると、メンバーは想像以上に追い込まれていくものです。そのため、メンバーの現在地や思考性を考慮した上で機会の設計をしていきたいです。

機会提供をした後に放置するのはマネジメントとは呼べない

初期にチャレンジゾーンの適切な機会提供をして完了という訳ではありません。その後の支援が何より重要です。時間を開けた定期報告のタイミングで「なんでできてないんだ?」となることや、Before Afterを見ると「あまり成長していない」と感じることはありませんか?その際は提供機会に異常がある場合もありますが、機会提供後の支援ができていないケースが多いです。
できるかできないかのギリギリのチャレンジゾーンは、人によって異なります。人物タイプやこれまでの経験など様々です。そのため、連続的にメンバーを見て、一人ひとりの能力・人物タイプ・経験などを見極めながら最適な機会を提供し続けることが重要です。
そのため、組織としての目標を変えられない場合は、より高い目標を独自にメンバーと合意することや、関与を増やしスモールステップで実現の支援をしていきたいです。そうすると以下の図のように、メンバーが諦めや慢心に陥ることなく、効果的かつ効率的にメンバーの育成をすることができます。

海老原嗣生『無理・無意味から現場を救うマネジメントの基礎理論』より

ベンチャーにおけるリアル

上記の考え方を知っていても、ベンチャー企業の置かれている状況で、全て綺麗に設計し機会を提供することは難しいと思います。自分のチャレンジゾーンを超えた、ハードシングスに向き合わなければならないシーンも勿論あると思います。その際、個人で切り開いていく人材がいることも非常に重要ですが、もし組織しているのであれば、最大限支援し合える状態を作りたいです。もしかしたら、すでに使える武器が組織の中にあるかもしれません。部分で切り取ると、過去に経験したことがある人もいるかもしれません。強みを掛け合わせればチャレンジゾーンに入るかもしれません。自分がパニックゾーンにいる時に、自分がパニックゾーンにいると捉えられない人は多くいると思います。そんな時に、相互にシナジーを生み出しその壁を越えられる組織が、勝てる組織だと思います。
そのために、僕は組織戦略や具体の施策設計をしていきたいです。

人を育成したいのであれば

人を育成したいのであれば、「自分はこうしてきたからメンバーにもこうすれば良い。それが当たり前だ。」と考えるのは危険だと思います。それは、あなたとメンバーはあくまで別人だからです。この言葉だけだとドライに聞こえるかもしれませんが、誰一人として同じ人間はこの世界にはいないと思います。もし、本当にメンバーを成長させたいのであれば、育てる側が原理原則・基礎基本に立ち返りマネジメントしていけるようにしたいです。

今回は、理想と現実の間で解釈が難しい部分もありました。僕自身も日々迷う瞬間もあります。ただ、僕は人を育てられる人間になりたいです。そして、全ての人が、パフォーマンスを発揮できる機会を提供している組織をつくりたいです。そのためにも、現場のリアルと原理原則を往復し続け、最適解を考えていきます。


<参考文献>

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