日髙 仁

建築家 SLOWMEDIA主催 http://www.slowmedia.net  逗…

日髙 仁

建築家 SLOWMEDIA主催 http://www.slowmedia.net  逗子市の小坪漁港に面したカフェ「南町テラス」を運営 https://www.minamicho-terrace.com  関東学院大学 人間共生学部 共生デザイン学科准教授

最近の記事

石と土

(この記事はFacebookへの投稿に加筆したものです。主に、文末の「最後に、石と土という素材について」部分を書きました。) 三和土について タタキと読みます。 コロナ禍の初期に、ポッカリと時間ができた方は多かったのではないかと思います。 私の場合は、大学の授業がしばらくできなくなり、 zoomによるオンライン授業などの環境が整うまでの間 2ヶ月くらいそんな状況がありました。 そんな時、何をするか? 今となっては、懐かしい気もしますが、 われわれに等しく与えられた

    • アイデアが着地するには?

      自転車でピクニック→「チャリピク」② ガイド養成講座について  このコラムは、前回書いた三浦市の「チャリピク」プロジェクトの続き②です。  2022年度は「チャリピク」という仕組みと道具立てを作りました。 続く2023年度は、「チャリピク」を着地(ランディング)させるための地域活動です。  デザインやアイデアは地域を深く観察することから生まれますが、ある意味でフワリと湧いてくる雲のような存在です。アイデアが生まれた時点では、それが地域に根付くとは限りません。それを実際の

      • 自転車でピクニック→「チャリピク」

         三浦半島の先端、三浦市に行かれたことはあるでしょうか?  品川から三崎口駅までは京急線で約75分と訪れやすく、お勧めしたいエリアです。三崎口駅からさらに行くと、三崎という港町があり、マグロ料理などで有名です。京急線にも「みさきまぐろきっぷ」という人気のパッケージがあり、相当な方が三崎にマグロを食べに訪れています。三崎口駅から三崎の下町までは基本、バス移動になるのですが、これがちょっと厄介です。ダイア上は15分となっていますが、休日ともなると一本しかない主要道路は渋滞するこ

        • 山梨県の湯之奥集落の話(その2)

           「夜学舎」では、三崎の左官、左菊の鈴木一史さんをはじめとするたくさんの方々の力を借りてワークショップ形式で再生をスタートしました。まず最初に手揉み製茶用の焙炉(ほいろ)と手摘みした茶葉を蒸すための竈門(かまど)を、今年の11月と12月の2回のワークショップで作りました。  ここでは、実際に、どうやって焙炉の再生を行なったかという制作のプロセスやワークショップの様子について書いてみたいと思っていたのですが、筆の遅い私がぼやぼやしている間に、講師の方々の方が早々にnoteに投

          山梨県の湯之奥集落の話(その1)

           とても久しぶりの投稿です。    これまで、古民家再生、空き家再生の記事をいくつか書いてきました。そんな中、縁あって、最近、いわゆる二地域居住をしています。  神奈川県は逗子市の小坪(こつぼ)と、山梨県は身延町(みのぶちょう)の湯之奥(ゆのおく)。  一方は湘南エリアの小さな港町、もう一方は山梨の山奥の集落。  首都圏に住む方の別荘がとても多いエリア、山梨通いです。  山があっても山梨県、海がなくても甲斐の国。あの山梨県。親戚がいるわけでもなく、別荘が欲しいと思って探し

          山梨県の湯之奥集落の話(その1)

          空き家再生プロジェクト(その9)

          弓削島で古民家再生のためのワークショップを連続して行っていたところ、上島町の方からお声がけをいただきました。上島町に寄付された古民家があるので、みて欲しいというリクエストでした。2014年2月ごろのことでした。少し時間があいてしまいましたが同年7月に上島町に行き、現地を案内していただきました。弓削島には「踊り場」と呼ばれる、祭りの中心になる集落の広場がいくつかあります。街路がそこだけ広くなっていて、お祭りの際にはそこに櫓が組まれ、踊りなどが踊られる集落の中心的な場です。その踊

          空き家再生プロジェクト(その9)

          空き家再生プロジェクト(その6)

          鹿児島県岸良の古民家再生(2014〜16年)改修ワークショップまとめ 岸良(きしら)は小さな港町で、鹿児島空港から車で3時間。空港から鹿屋(かのや)まではバスがありますが、そこから先は自家用車かレンタカーで行くしかありません。行くには半日がかりで大変ですが、それだけのことはある、圧倒的に素晴らしい環境が岸良にはあります。 2年かけて行った「コミュニティDIY」空き家再生ワークショップ。「DIY先進地・岸良」のパワーで、なかなかいい雰囲気の拠点が生まれました。そこで、だいた

          空き家再生プロジェクト(その6)

          空き家再生プロジェクト(その5)

          鹿児島県岸良の古民家再生(2014〜16年)第3回改修ワークショップ 第3回改修ワークショップは、また地元からのリクエストで、「広いキッチンが欲しい」というものでした。テラスができて、「きしたんカフェ」というカフェのイベントを定期的に行うようになり、保健所に届けて正式に認められる仕様のキッチンが必要ということになったそうです。 保健所で認められるためには、メインのシンク、サブのシンク、手洗いのシンクと3つのシンクが必要です。既存のキッチンにはシンクが一つしかなく、二つを増

          空き家再生プロジェクト(その5)

          空き家再生プロジェクト(その4)

          鹿児島県岸良の古民家再生(2014〜16年)第2回改修ワークショップ 第2回改修ワークショップはちょっと欲張りなリクエストからスタートしました。「テラスが欲しい。できれば車椅子でも建物に入れるようにスロープも作りたい。」というのです。デイサービスのイベントスペースとしても使われるため、利用者には車椅子の方がいらっしゃいます。前回作ったゆったりした階段でも中に入るのには一苦労、行事などする際に困っているということで、なんとか叶えて差しあげたいリクエストでした。 すでに一度行

          空き家再生プロジェクト(その4)

          夜の道の駅と軽キャン(その2)

          軽キャンに自転車を積み込み、出かけ、道の駅で車中泊をする。 朝起きて、コーヒーを淹れる。このコーヒーが美味しくないと、車中泊がしょぼく感じられてしまうので、必ずコーヒーはきちんと淹れてゆっくり味わうことにしている。 写真はコーヒーの抽出セット。Snowpeak社製のコーヒーミル 、焚き火ケトルと450ccのチタンダブルウォール型マグカップ。この中には、300ccのチタンシングルマグカップがすっぽりと収まる。コーヒーを淹れる時には、最後に少しお湯が滴るドリッパーをマグから移す

          夜の道の駅と軽キャン(その2)

          空き家再生プロジェクト(その3)

          鹿児島県岸良の古民家再生(2014〜16年)第1回改修ワークショップ これは鹿児島という遠隔地で数回に渡るワークショップを繰り返し、地域の方々との「コミュニティDIY」で完成させた古民家のバリアフリー改修の事例です。長いワークショップだったため、数回にわたって書こうと思います。 ここで行ったバリアフリー改修は、車椅子に対応した勾配のスロープで屋外テラスにアクセスし、そこから直接室内に入ることができるよう、玄関の建具を持ち上げました。また、トイレや洗面所も改修し、車椅子でも

          空き家再生プロジェクト(その3)

          空き家再生プロジェクト(その2)

          出雲大社参道の古民家再生 私が空き家再生プロジェクトをはじめに行なったのは、2010年に出雲市で友人達が主催して行った「City Switch 2010 Izumo 」というワークショップに講師として参加した時のことでした。この頃は、まだ、空き家問題などが取り上げられることもなく、古民家再生も特に盛んではなかった時期で、私としてもその後続く空き家再生プロジェクトの第一弾になるという意識は特に無いまま、参加者と一緒に取り組んだプロジェクトです。参加者は公募で集まった学生で、オ

          空き家再生プロジェクト(その2)

          空き家再生プロジェクト(その1)

          近所の廃屋の解体 2020年、現在、全国の空き家率は現在、約13.6%と言われていますが、地域によってばらつきがあり、過疎地に行くと、空き家率は高まる傾向にあります。お近くの横須賀市では、アクセスしにくい谷戸の山の上などに空き家が集中しています。私の住んでいる逗子市は22.9%という数字が公開されていますが、別荘も統計上の空き家に含まれるため、実際の空き家は恐らく全国平均レベルくらいではないかという気がします。 今回は、私がこれまで行なってきた「空き家再生プロジェクト」に

          空き家再生プロジェクト(その1)

          夜の道の駅と軽キャン(その1)

          道の駅はとてもよくできた施設だ。 ドライブの時に立ち寄って買い物をしたり、休憩したりと、利用者は多い。 特に、地域産品の販売コーナーが充実している道の駅は立ち寄るのが楽しい。地元の農家で採れたての野菜や果物が安く置いてあったり、地元のお母さんたちが手作りで作ったお惣菜などを置いているところも多い。 1993年に建設省道路局監修でまとめられた「道の駅の本 個性豊かなにぎわいの場づくり」は、道の駅構想の立ち上げメンバーの方々による臨場感のある記録となっていて面白い。それによると道

          夜の道の駅と軽キャン(その1)