空き家再生プロジェクト(その5)
鹿児島県岸良の古民家再生(2014〜16年)第3回改修ワークショップ
第3回改修ワークショップは、また地元からのリクエストで、「広いキッチンが欲しい」というものでした。テラスができて、「きしたんカフェ」というカフェのイベントを定期的に行うようになり、保健所に届けて正式に認められる仕様のキッチンが必要ということになったそうです。
保健所で認められるためには、メインのシンク、サブのシンク、手洗いのシンクと3つのシンクが必要です。既存のキッチンにはシンクが一つしかなく、二つを増設する必要があります。そのためには、キッチンを広げる必要もあります。図面で検討した結果、便所の動線を変え、使う予定の無いお風呂場を潰せば、キッチンを広げることが可能となると判断しました。お風呂は、近くに気持ちの良い温泉があるため、ほとんどの宿泊客は温泉を利用するからです。そこで、今回はお風呂場を解体し、そこにキッチンと同じレベルの床を貼り、二つのシンクを設置する工事を行うことにしました。
我々が到着する前に、地元の方にお風呂場の釜と床を撤去しておいていただきました。我々がやっても良かったのですが、材料の検討などをする際になにか想像と違うものがあると困るからです。写真は我々が到着した時の状況です。お風呂の釜があったところにコンクリートブロックの基礎が残っています。それ以外は土です。お風呂場周りは湿気がたまりやすく、周囲の壁や床が腐っていることが多いのですが、ここは、モルタルで固めた腰壁が回っていたため大丈夫でした。
床のレベルを確認し、その下に来る根太や大引のレベルを出していきます。作業をしてくれているのは、今回の参加者で山形から来てくれた大学生のK君です。
今回は、いつもに増して埃にまみれる作業でした。
床を設置するのに、コンクリートブロックの上部が大引に当たることが分かったため、上部をグラインダーで切断する必要がありました。レベルを出して、ダイアモンドカッターでカットしていきます。真っ白の埃にまみれて作業してくれているのは今回の参加者で東京から来てくれた大学生のSさんです。
Sさんが大引になる地元の杉材をカットしています。グラインダーや電動のこぎりなど、大学生は使ったことが無いのが普通です。作業をする前に安全講習をし、道具の使い方を教えます。呑み込みの早さに違いはありますが、皆さん段々と上達して、ワークショップが終了する頃にはDIY講習修了証をあげたくなるくらいにスムースに作業ができるようになります。
今回周りを布基礎がしっかり囲んでいて作る床の範囲も狭いので置き基礎は簡易にしました。コンクリートの平板と低い置き基礎を併用しています。上の作業は基礎を置く場所に砂利を敷いてたたいて整地し、セメントを撒いて水をかけているところです。この上にコンクリート平板を置き固定します。
設置した基礎の様子です。いかにも簡単な様子ですが、コンクリート平板と基礎のレベルはそろっている状態でモルタルで固定された状態です。
基礎の上に短い束を立て大引と根太を設置していきます。手前は既存の押し入れの床を壊したところですが根太を連続させて一体化させています。
シンクの水栓はもともとお風呂の釜にきていた配管を使いました。地元の設備屋さんが配管作業は行ってくださいました。
床に下地のベニヤを張る作業です。
排水管も地元の設備屋さんに設置していただきました。床から飛び出しているのが排水管です。
シンクを置いてみたところです。シンクは中古の安いものを探して買っておいていただきました。2層式の家庭用です。鍋なども洗いやすいように少し深めのものにしていただきました。
ここまで作業をしたところで、薄汚れていた、天井も綺麗にしようということになり、撤去するのですが、長年積もった埃がすごく、これもまた大変な作業でした。だいたいこれが二日目くらいまでの作業です。
noteでは余りご紹介できていないのですが、岸良では毎晩のように皆さんが集まって、食事会をしてくださいます。今回は屋外で鍋をご馳走になりました。
地元食材を使った美味しいおもてなしはいつも最高です。
港町なので新鮮な海の幸も。これはキビナゴのお刺身かな。
これは亀の手。関東ではなかなか食べる機会がありません。
今回は、作業している古民家にそのままステイさせていただいたのですが、夜は温泉に入った後、今日の作業の振り返りや、今後の作業の進め方についての打ち合わせなど行います。
3日目は床を張っていきます。床用のボンドを下地ベニヤに塗り、釘で固定していく作業です。
床のサイズに板を切りながら根気強く張っていきます。
地元の方にも手伝っていただき、だんだん完成が近づきました。
完成したキッチンは、無事、保健所の認可が下り、正式に「きしたんカフェ」が開催できるようになりました。手前が元あったシンク。奥が新しいシンクです。お風呂場があったなんて嘘のようです。奥の湾曲した天井は今回張りなおしたものです。地元杉材を使った床は柔らかく、温かみのある雰囲気になりました。
さて、古民家はだいたいの場合便所が狭く、日常的にも使いにくいことがよくあります。これは、関東学院大学の空き家再生プロジェクトで既に改修経験があり、便所を広げることにしました。関東学院大学でやった時と同じく、便器を一旦外し、90度回転させて便所自体を広げます。便器の回転だけは、事前にお願いして専門の方にやっておいていただきました。どうせなら車いすの方が使いやすいバリアフリー仕様にしようということで、洗面所と便所を一体化してカーテンで仕切りました。また、便器は新しく洋式にしました。もちろん、この二部屋は扉で座敷からは仕切られています。便所の床もキッチンの余り材を活用して綺麗に張りました。
以上で、岸良の古民家改修はひと段落。
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