夜の道の駅と軽キャン(その2)
軽キャンに自転車を積み込み、出かけ、道の駅で車中泊をする。
朝起きて、コーヒーを淹れる。このコーヒーが美味しくないと、車中泊がしょぼく感じられてしまうので、必ずコーヒーはきちんと淹れてゆっくり味わうことにしている。
写真はコーヒーの抽出セット。Snowpeak社製のコーヒーミル 、焚き火ケトルと450ccのチタンダブルウォール型マグカップ。この中には、300ccのチタンシングルマグカップがすっぽりと収まる。コーヒーを淹れる時には、最後に少しお湯が滴るドリッパーをマグから移す必要があり、300ccのカップが脇にあるとちょうど良い。ドリッパーはTetra Dripの薄いステンレス製のものを愛用している。これはたたむと薄い革のケースに収まり、使い勝手も良く、素晴らしいデザインだと思う。焚き火ケトルはそのままガス火にかけられるし、もちろん焚き火台の上でも使える。また、Snowpeak社でかなり試行錯誤を繰り返してできたと思われる注ぎ口の形状が秀逸で、お湯の切れがとても良い。通常、コーヒードリップ用のポットとは全く異なるその形状からは想像できないほど、コーヒーの抽出に向いたケトルとして仕上がっている。コーヒー豆は、カフェで出しているものを少しだけ、いつも持って来ている。自分で焙煎し、真空状態で数ヶ月熟成させたものだ。
簡単な朝食を摂り、道の駅の一番邪魔にならなそうなところに車を移動して、ビンテージ自転車に乗り、サイクリングをする。この身軽さがとても良い。
富士山一周なら、だいたい6時スタート。ゆっくり食事などしながら走って、105kmほどの道のり。14時過ぎには道の駅に帰ってくることができる。獲得標高はだいたい1900m。道の駅すばしりには足湯があるので、到着したらお湯につかって足の疲れを取ることもできる。着替えて軽キャンで少し休めば、その日中に安全に帰ることができる。
いつも思うのだが、自転車で移動すると、車で移動するのに比べて断然、地域の様子がよくわかる。まず、地形が深く記憶に残る。坂を登るのはやはり疲れるし、坂を下る時の風切る疾走感も忘れがたい。
自転車に乗っていると「身体を使って地形をスキャンしている」という感覚がある。
地図は大雑把にしか頭になくても、例えば、富士山を反時計回りに周りながら登って下ってというリズムと、印象的な風景とで、だいたいコースを記憶することができる。五感全てを使って覚えた記憶はなかなか忘れない。
富士山一周は、道の駅すばしりを出るとすぐに、籠坂峠への登り坂が続く。だいたい30分程度で登り切ることができる。朝一番のちょっとしたウォーミングアップになって良い。道の駅須走の標高は約830メートルだそうだ。籠坂峠が約1100メートルなので、270メートルほどの登り。
峠を越えるとそこから少し下りが続き、道の両側に別荘が並ぶようになる。その先にすぐ、山中湖が現れる。先ほど登ったのよりも下の方がよほど短いな、登るのは大変だけど下るのはあっという間なのかなと思って、その場では何となくそれで終わり。気になって後で調べると、山中湖の水面標高は980メートルと、実は、車中泊をした道の駅すばしりよりも高いのだ。だから下り坂は短かく感じたのだ。こんなことも、車で移動していたのでは、一生気づかないで終わったと思う。
山中湖周辺の道路は痛んでいて、ガタガタと走りにくい。これが記憶に残るのも自転車ならでは。
湖畔の風景は素晴らしく、寂れたボート小屋や街路樹の風景が美しい。
何となく、水面といえば同じ高さのような気がするのは、いつも家から海を見ているせいだと思うが、富士五湖は水面の高さが違う。大別すると3つに分かれる。そんなことも、自転車で移動しているとよくわかる。山中湖の水面標高は980メートルと、富士五湖の中で最も高い。次に現れる河口湖までは少し登った後長い下り坂が続くため、河口湖の方が湖面の標高が低いことが体感できる。河口湖の水面標高は833メートルとだいぶ違う。上り坂の先に現れる西湖、本栖湖、精進湖は900メートル。
富士五湖を離れると、その後、朝霧高原までは緩い登り坂が続き、樹海が両側に広がる。溶岩でできた硬い地盤に木は根を張ることができず、浅く広く地面に根が這っている。たまに、倒れている木があるが、浅い根っこが面状に広がった形状のまま地面から剥がれるようにして倒れている。
朝霧高原からは下り坂になる。が、この辺りは牧場が多く、畜舎独特の匂いが続くエリアでもある。
長い下り坂の途中、たまに富士山が顔を見せると、できれば開けたところに自転車を停めて撮影する。よほど晴れて雲ひとつない日でない限り、富士山はあっという間に雲間に隠れてしまうからだ。
白糸の滝はだいたい45キロ地点に当たる。ほぼ折り返し地点だ。ここで少し早めのお昼休憩をすると後が楽だ。白糸の滝は想像以上に素晴らしい。
そんなに人の手は入っていないと思われるのに、地形や植生が、日本庭園の傑作を思わせる。
もう少し下って国道139号線から国道469号線に入ると、十里木の峠までこのコースで一番長い登り坂になる。ここにはお店がほとんど無く自動販売機すらほぼ見当たらない。最初の富士山一周の時にバテてしまって困ったため、登り坂の前のコンビニではスポーツドリンクと簡単な携帯食を買うことにしている。
ところで話を軽キャンに戻すと、よく聞かれる質問に、「どうやって荷台から下ろすのか」、「どれくらい大変なのか」ということがある。
実は、積み込み、積み下ろしは慣れるととても簡単で早い。今日、試しに時間を測りながら積み下ろしをしてみたところ、一人で17分間で積み下ろすことができた。手順は以下の通り。まず、上の写真のようにユニットを置く予定の場所にバックで車を着ける。
あおりを下すとユニットには建築足場用の単管パイプが2本挿せるようにベースに穴が開けてある。ここに単管パイプを通す。
穴のサイズは少し大きく、この段階ではパイプは手前と奥に動く。車の左右にだいたい同じ長さ突き出すように調整する。
ジャッキベースをつけた単管2本とそれを繋ぐ単管がセットになっている。これを左右ともに取り付ける。
近くで見るとこんな状況。
左右ボルトを締め、しっかり固定できたら底の4つのジャッキベースを少しずつバランス良く回してジャッキアップしていく。
ジャッキアップしていくと、ユニットが浮き、トラックとの間に隙間ができてくる。地面が平らなら、だいたい5センチ弱浮かせれば大丈夫。
トラックにエンジンをかけ、ゆっくり前に出すと、ユニットだけがその場に残される。
これで作業終了。この状態でもユニットに乗ることができるくらい、安定している。できれば地面がフラットでしっかりしている場所、強風が吹きにくい場所が保管場所に良い。トラックに載せないときは、いつもこうしてユニットを保管している。
積み込みはこの操作の逆で、トラックの操縦には気をつかうが、作業は積み下ろしの時よりも早い。ポイントは積み下ろしの際に最初に差し込んだ2本の単管パイプの入っている穴が緩いこと。積み込みの時にきちんと荷台の真ん中にユニットが載るようにバックで着けられれば良いが、多少の調整は横からユニットを左右から押すことでズレてくれるので上手く荷台の中に積み込むことができる。
この状態で、ユニットは倉庫のような使い方ができる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?