日々採集、とか。

なんでもない日記です。 日記のように、絵を描きたい。 (文と写真と絵:平川いつか) …

日々採集、とか。

なんでもない日記です。 日記のように、絵を描きたい。 (文と写真と絵:平川いつか) https://itsukahirakawa.jimdofree.com/

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あとがき

日記を書くことにした。 作品づくりのため、というのもあるけど 文章を書かなくなるとやはり下手になるなと思って。 日常というのは大体がかなしいことで出来ているな、と思う。 うれしいこともそれなりにあるのだけれど、こちらの方が割合が少ない気がする。 先日、重い腰を上げて卒業制作の撮影をした。 この日に限って東京はものすごく風が強く、屋外の撮影には不向きだった。 『あとがき』という作品は、額に入れているので本来こんな姿を見ることはないのだけれど、風のおかげで思わぬ表情を見ること

    • 住んでいる町

      部屋が手狭なので引越ししたい!と思い立って不動産屋へ。 色々探してみて、予算内&駅近&築年数浅い良さげな物件があった。 自分の中でピンときた、というよりも、きっとここはすぐ埋まるだろうな、人気だろうなという物件。 ただ、場所が行ったことのある町ではなかった。 最寄駅から徒歩6分ほど。職場からのアクセスが悪いわけではない。 とりあえず内見だけさせてもらう。 一通り説明を受けて、悩み、一旦保留にしてもらう。 なぜ即決できなかったのか。 他にも2件ほど車で移動して内見させてもらい

      • 金継ぎと私

        金継ぎを独学で始めて2年ほど 休み休みやっていた茶碗の修復がやっと終わった。 ヒビを埋めた部分に漆を塗り、金粉をまぶす。 わたしの技術が足りないというのもあって 金粉が均一にのらなかった。 それにしても、わたしには金継ぎというものがしっくりこなかった。 金継ぎのことを否定しているわけではなく、 自分の中の美的感覚というか、価値観に合わないというか 何かが違う…という違和感だけが残る。 金粉をかける前がよかったのかもしれない この違和感の謎が解けないので、もう少し続け

        • 乱視の世界

          年々、遠くのものが見えにくくなっている。 (とはいえ、日常生活で眼鏡をかけるほどではない) 加えて、昔から乱視なので 夜の信号や映画の字幕の輪郭がぼやけて見える。 昨年の11月に皆既月食があって、 わたしはたまたま工房で遅くまで制作しているときだった。 乱視の目では、月食なのか欠けている月なのか、よくわからない。 iPhoneで遠くにある月をズームで撮ってみても、 画質が悪くてよくわからない。 わかないけれど、どうやら月食らしい。 自宅に帰り、運転の時にしか使わない乱

          夜中の冷紅茶

          夜中の冷紅茶というと、マリアは毎晩徹夜で原稿を書いているようにみえるが、大抵の夜は睡っては目醒めて冷紅茶をのみ、満四つの子供が書いたような字を三つ位書いて又睡り、又目を醒まして冷紅茶、という、電燈も、冷紅茶も、何のためかわからない夜であって、それでは昼間は原稿をどうやら書くのかというと、昼間も大同小異である。 ———「貧乏サラヴァン」森茉莉『私の美の世界』より よく タイムラプスとかで 制作の様子を映す映像などがあるけれど、 私は絶対に撮られたくない。 工房にいても、絵を眺

          おでこに夜風

          仕事からの帰り、電車に乗っていて あれ?何かいつもと違うな、と思ったら 電車の窓がいつもより少し多めに、 30cmくらいだろうか 開いていた。 (電車基準法(みたいなものがあるかは知らないけれど) 的にはちょっと危険かもしれない、というくらい開いていた) おでこに夜風が当たって心地よく、 車に乗っているときの感覚を思い出した。 窓を一枚隔てて見える夜景とは違う、 隙間から肉眼で見える夜景は うっとりするほど綺麗だった。 ここでいう夜景というのは、 特別なイルミネーションな

          野良猫との距離

          猫を飼いたい でも飼えない うちによく来る野良猫を 飼っているような気持ちになっている それでじゅうぶん。 だからと言って 餌付けもしないし、さわることもない。 出会うと、いつも心のなかで撫でている(つもりでいる) 人に懐かない猫、懐こい猫 目があった瞬間にげる猫 決して姿を見せてくれない猫 凶暴な猫 手に届かない存在でも、 そのぜんぶが儚く、いとおしい。 2021年8月13日

          野良猫との距離

          作文を絵にする

          こどもの頃、読書感想文が苦手だった。 読書感想文に限らず、物語を書いたり、作文を書くのも苦手 国語のテストに出てくる「誰々の気持ちを答えなさい」の設問も、 いま考えてもよくわからない。 どう書いたら正解だったんでしょうか。 文章を書いた作者の、物語のなかの登場人物の、気持ちなんてわからなくていいのに。ゴーギャンのほんとうの気持ちなんて誰もわからないし、わからなくても絵はたのしめる。音楽も映像も。別に伏線回収しなくたっていい。(←というのは趣旨がずれてるけど、この言葉が流

          作文を絵にする

          いつでも帰れる

          けっして山育ちではないわたしが 瞼を閉じて浮かべるのは、 飛行機の窓から見える 美しい色合いの山脈たち すすきが生い茂って きらきらと輝く外輪山 「いつでも帰れる」という気持ちと 「いつでも帰れるわけじゃない」という気持ちと 「もう帰れないかもしれない」という気持ちと 「いつでも帰りたい」という気持ち 2020年12月7日

          贅沢の木

          シャインマスカットを初めて食べた。 シャインマスカットなんて、富裕層の食べ物だと思っていた。 東京に引っ越してくる前は、成城石井なんて世田谷とかに住んでるセレブだけが行くスーパーだと思っていた。 最近では、毎週仕事終わりに最寄り駅にある成城石井に寄って、ちょっといいポテトチップスと炭酸ジュース(年々お酒に弱くなっている)を買って、家でひとりプチ打ち上げをするのが習慣になっている。 「安住伸一郎の日曜天国」で、安住アナがぶどうについて熱く語る回をたまたま聴く。どうやら「ナガ

          子どもの領分

          夏の終わりに、ヨーヨーすくいをしました。 こよりの先に針がついてるやつで。 最後にやったのがいつだったか思い出せない、 というくらい久しぶりに。 最初はみんながすくっているのを、 少し離れたところからほのぼのと眺めてたんです。 しばらくして「わたしも一回やってみっか…」 と、軽い気持ちで参戦したんです。 いい歳して、こんなにヨーヨーすくいに 熱くなれるなんてね、思いもしませんでしたよ。 おとな気なさを発揮してしまい、家でひとり反省。 大人なのに子ども 大人とは子どもとは

          「無」と花火

          地下鉄のホームで見かけた「無」 電車が到着すると点灯し、電車が出発して走り去ると消える。 これは何の「無」だろう いくら検索しても出てこない。 昨年観たクリスチャン・ボルタンスキー展を思いだす。 これだけで作品になりそうだな、 持って帰りたいな、という衝動に駆られる。 先日、帰宅途中に 大きな発砲音が聞こえて、 「世も末…」と思っていたら、近くで花火が上がっていた。 建物の隙間からかろうじて見える花火を、携帯で数枚撮る。 夏が終わる ってよく言うけど、 何で夏

          Laughter in the Dark

          展示の作品づくりのために始めた日記 個展「日々採集」が終わってひと月以上経ってしまった。 そろそろ次の作品をつくらねば…と重い腰を上げて、 とりあえず日記を書いてみる。 家にいる時のBGMは、ラジオかライブ映像かspotifyのローテーションで回っている。先日、動画サイトで宇多田ヒカルのLIVE映像を見つけ、部屋の掃除のBGMとしてなんとなく流してみる。 最果タヒの詩にこんな一文がある。 「宇多田ヒカルを聴いて、思い出すのが校庭の匂いなら、きみの幼少期は最高なもの。」

          Laughter in the Dark

          の、ような夜

          宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読んだ。 話の流れはなんとなく知っているのだけど、 おそらく原文に近い状態で掲載されているので読みづらい。 何度読んでも頭のなかに入ってこない。 情景が目に見えるかたちで浮かばない。 なんとか小説を読み終えて、 自分のなかにイメージを補填させるために、映画版を観た。 子どもの頃に何度か観ているのだけど、 いつも真ん中の部分で眠ってしまうので記憶が曖昧だった。 小説の分からない部分と照らし合わせながら鑑賞する。 いい映画だった。 その余韻を残した

          かなしき読書感想文 2

          イラストの仕事で、フランツ・カフカの「変身」を読んだ。 主人公が巨大な毒虫になってしまうお話、 というのはなんとなく知っていた。 最後、主人公のグレゴールは虫の状態のまま、死んでしまう。 虫の一件から解放された主人公の両親、妹たちはその家を引き払い、新しい生活を始めようとする。 3人はそれぞれの仕事を休み、電車に乗ってピクニックへ向かう。 電車から降りた妹が、身体をしなやかに伸ばし、希望に満ち溢れた場面で物語は終わる。 グレゴールは何も悪くない。 報われなさ、不条理さがあ

          かなしき読書感想文 2

          忘れもの

          住んでいる町に「野川」という川が流れている。 小さな浅い川。 いい名前だなぁと、標識を見るたびにしみじみする。 散歩がてら、久しぶりに訪れると 近所の子どもたちが遊んでいた。 きらきらして、とても眩しい。 誰かがつくった、こういう無意味なものに惹かれる。 たくさん落ちていた 忘れもの 2020年4月10日