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トピックス(小説・作品)

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素敵なクリエイターさんたちのノート(小説・作品)をまとめています。
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2022年10月の記事一覧

秋刀魚の思い出 [エッセイ]

 子どもの頃から秋刀魚を食べるのが上手だと褒められてきた。苦い内臓もはじめから好んで食べていたし、小骨がついていようとお構いなしにバリバリと噛んで飲み込んでしまう。いつもお皿の上には頭と背骨だけが残った。  やがて祖母は、食後に残った頭と背骨に塩をふりかけ、七輪の残り火でカリカリに焼いてくれるようになった。いわゆる骨せんべいである。日本茶を飲みながら祖母特製の骨せんべいを食べるのが、小学生の頃の私の楽しみになっていた。今思えば、ずいぶん老けた小学生もいたものだが、ずっと祖母に

横浜の休日 12〜「中華街」でお夕食の後は、「ホテルニューグランド」で発祥のデザートを〜

夕食をいただきに向かったのは 横浜中華街。 「お粥」が美味しいと噂の 「謝甜記 貮号店 (しゃてんき にごうてん)」を 訪ねました。 一年を通して佇む サンタクロースが目印です。 さっそくお粥を注文することに。 20種類以上のトッピングがある中 選んだのは 「活あわび粥」でした。 新鮮なあわびとともに いただける贅沢なお粥。 その他には えび、ピータン、ふかひれなども。 一口いただいてみると パクチーの香りがふわっとして。 (パクチーなしも選ぶことができます。

「デュッセルドルフ・スクール」の社会との「対話」について

大学で書いたレポートを公開します。 大学に入って、「論述」にはものすごく苦労しました。それはいまも変わりませんが、なんとか、それらしくなるように、でも自分の意見や視点も入れて、ということを極力意識して書いたものです。公開したレポートは芸術史のレポートで、ドイツの「デュッセルドルフ・スクール」について書いています。 あらっ、なんかこう書くとちょっと芸大生っぽいですね、うふふ。たまには通信制の芸術大学で文芸を学ぶ学生らしくね。 じつはこのレポート、昨年の年末〜1月にかけて書

¥100

映画『アフター・ヤン』とコゴナダ監督

コゴナダ監督、待望の新作が公開! その『アフター・ヤン』が素晴らしかったです。 なかなか簡単に感想を言うのが難しいタイプの作品ではあるのですが、色々とポイントはありますので、note書いてみたいと思います。 監督二作目にしてこの安定感、出来上がってる感があるココナダ監督を掘り下げてみたいと思います。 『アフター・ヤン』<あらすじ> テクノと呼ばれるAIロボットが家族の一員となっている近未来。中国系の養女ミカは、ロボットのヤンを兄のように慕っていたがある日ヤンが故障で動かな

【第35回文学フリマ東京】新刊情報「詩集 シンデレラ・シャンデリア」/小説「ヴァギナ・デンタータ」【A-50】

  【2022/11/20(日)開催/文学フリマ東京35】に出店します!  【2022/11/20(日)開催/文学フリマ東京35】   出店名: ゆにお★みすてぃか   ブース: A-50 (第一展示場) ジャンルは「小説|エンタメ・大衆小説」です。【第一展示場】の入口すぐ左手に曲がった壁際です。(今回は第二展示場もあるらしいけん、間違えんでね〜汗) 本人います! 新刊は2冊です。 それに加え、 【第四回文学フリマ広島】の既刊2冊を持ってきます。 ◇ 【A-50

母の手(短編小説)

実家に到着し、玄関のドアを開けるとピアノの音が聞こえてきた。靴を脱ぎながら耳を澄ませる。どうやら母がショパンのワルツを弾いているらしかった。音を立てないようにピアノのある洋室に向かい、ドアの前で曲が終わるのを待つ。最後の音が消えてから、わたしはドアをゆっくり開ける。 「ただいま」 母は顔を上げ、わたしを見る。 「あぁ、お帰り。来てたの」 「すごいね、まだ弾けるんだ」 「そうなの、自分でもびっくりするけど」 母は嬉しそうな表情でもう一度、鍵盤に手を落とす。わたしはピアノの側にあ

聖母マリアの衣装のイメージはどこから来たのか

今日は通っている通信制大学の、レポート課題の〆切日でした。 そして今回はなんとか、2科目のレポートを提出しました。ほんとうは3科目出したかったのだけど、週末に京都で対面授業もあったので、これが限界です。でもやれるだけのことはやりました。(脳みそがクタクタです) それにしてもレポート、何回書いてもちっとも慣れないし、やっぱり苦手で毎回苦しいです。わたし進歩ないなあ、と思って、一年目に書いた初期のレポートを見返してみました。 そしたら、なんというか、下手くそ。 論拠も甘い

#59 ヒガンバナについての愛を語る

空へと落つる雨粒の逆流  道端に流れ落ちた雨が、空へと帰っていく。  秋は一体どこへ行ってしまったのか。探しても探しても見つからない。おかしいことだと誰かを糾弾したいのに、その相手が見つからない。いつからこの国には3つの季節しか無くなってしまったのだろう。仕方ないことだと思いながらも、ダウンベストを着てパソコンのキーボードを打っている。 *  今絶賛公開中の『RRR』というインド映画を鑑賞。相も変わらず、ボリウッドは長いし、やたらとゴリゴリのCGを使っているし、ツッコ

アポロンの瞳

                          始まった。 朝が拓かれていく、アポロンによって。音のないファンファーレが耳に振動を伝え淡いオレンジのカーテンが波になり寄せてくる。 何も反射させない闇が包まれ光になるには漆黒を焼かねばならない。彼の右手は赤黒く焼け焦げている。翼の馬は主を護るため果敢に奔走する。 どれくらい待ったのだろう。  日差しに照らされるビルの側面がゆっくりとアポロンの横顔になる。黄金が孔雀の羽を広げた。カッサンドラは詩を書きアドニスは一心不乱に赤い

【小説】フラクタル・アイロニー

 たけるさんが言うには、この世のほとんどすべてのものは同じ形が続いて出来上がっているらしい。パサパサのサンドイッチを咥えながら、たけるさんはよく団地の四角の連続を数えていた。 「ねぇそれ、暑くないの」  プールのにおいを纏わせて、アイスを齧りながら自転車の後輪をカラカラ回す。青春っぽい、と思う気持ちも半分、こんなの青春なんかじゃないと思うのも半分。いつからか“シタ”と呼ぶようになった団地の下の商店で買うミルクバーは、食べ始めは歯が立たないくらいにカチカチなのに、気を抜くと一

¥200

モフモフに憧れて、コキアを探して。

少し前に、soraさんが「ひたちなか海浜公園へコキアを見に行ってきました!」という素敵なつぶやきを投稿されていた。 (トップ画像もsoraさんからお借りしました!) か……かわいいっ!! 赤いモフモフの集団に、写真だけで興奮する私。 色も形も違うけど、ムーミンに出てくるニョロニョロみたいに生きていそうじゃないか。 soraさんも書いているように、手前のコキアは肩寄せあっているように見えるし……。 私は昔から「モフモフ」に弱い。 これは子供の頃からだ。 家にあった毛皮のマッ

【ショートショート】毒吐く南瓜#毎週ショートショートnote

事務所に帰るとすぐに高塚課長が、お疲れ様、と声をかけてくる。 私は笑顔で返事をする。全身を舐めるような視線に気づかないふりをして。 ああ、面倒くさい。どうしてそこに南瓜があるの。 高塚課長はジャック・オー・ランタンに似ている。顔も似ていれば体形も。 ろくに仕事も出来ないくせに、バブルの時代からこの会社に居座るお局様。 頭がいいから、こんな資料すぐにできちゃうのね。 打たれ強くて良いわね。私ならそんなの耐えられない。 スタイルが良くて羨ましいわ。ほら私、Eカップだ

マンガ原作の小説コンテストをフレックスコミックス×BookLive×Nolaで開催します!

いつもNolaをご利用くださりありがとうございます。 また、日頃より書き手様目線での機能アイデアやご要望等をお送りくださり心より感謝申し上げます。 最近ではNolaの姉妹サイトの「Prologue-プロローグ-」にて『イラスト×小説の一斉投稿イベント』を開催したり、アプリ版Nolaの新機能として『執筆中にWeb検索できる機能』を実装したりと、企画や開発に取り組んでおりました。 そんな中で本日は、新たなお取り組みとして「マンガ原作の小説を募集するコンテスト」を開催させていた

小説(SS) 「おせっかい告白雨雲」@毎週ショートショートnote #告白雨雲

お題 // 告白雨雲 《さっさと告白しちまえばいいじゃねえか。あの女が好きでたまらねぇんだろ? なあ?》  言ってきたのは、おれの肩らへんでふわふわと浮いている、わたあめサイズの雨雲だ。  あるときから突然現れたこいつは、馴れ馴れしく接しては、ことあるごとに告白を強要してくる。なんでも、おれが好きな人に愛情をぶつける姿を見たいらしいのだ。  おっさん風の口調でやかましいのと、風呂に入ってるときもトイレに入ってるときも学校の授業中もついてくるのと、上から目線なのを除けば