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note IPO連載第2回 上場に向けた経理体制の整備 noteの実例は?

お久しぶりのnoteになります。noteで管理ユニットマネージャーをしている平山と申します。

弊社のCFOである鹿島さんがこの度IPOプロジェクトの連載を開始したことに伴いまして、私もIPOプロジェクトの一員として第2回目を担当させていただきます。

鹿島さんの連載開始の記事にもあった通り、前職では公認会計士として監査法人で勤務しており、初めての転職、初めての事業会社でnoteにジョインしました。前職は堅い職業だったので短髪スーツで約10年やってきましたが、note社入社後は髪を伸ばし続けもっさいロン毛パーマでやらせてもらってました。そのため東証訪問時の姿は、とてもいかがわしい詐欺師のような風貌となり鹿島さんからもスーツが似合わないといじられましたが、この記事の執筆時点ではまたばっさり切りまして少しだけさっぱりしてます。(だからなに?)そしてトップ画は2年ほど前に社内インタビューをしていただいたときの写真です。(だからなに?)

また、転職のきっかけや転職時に考えていたことは私の唯一のnoteである以下の記事に書きましたのでご興味がありましたらのぞいてみてください。

スタートアップの世界では、上場という舞台に立つことは多くの企業にとって大きな目標の一つです。しかし、その裏側には非常に厳しい乗り越えなくてはならないステップがたくさん待ち受けています。経理部門は、その中でも重要な役割を担っており、この記事では、上場に必要な経理業務のレベル感や、その業務を構築するにあたって意識したポイントなどについて当社の実例をもとにお話したいと思います。上場を目指す企業の経理の方や、社内の業務フロー整備を担う方、内部統制評価の担当者の方などの参考となる情報になればと思います。

上場準備前の当社の状況は?

私がnoteに入社したのは2020年7月、IPOに向けて本格的に進み出そうとしていた時期でした。IPO準備における経理・決算体制の構築、決算の精緻化・早期化などをミッションの一つとして入社したため、まずは経理まわりの状況について検証していきました。

当時の当社は前期の決算に関する監査法人の宿題やそれ以前のショートレビューの指摘事項が一部残った状態でした。(IPOにおいては監査法人による直前2期分及び申請期の四半期決算に対する適正意見が必要となります。)そのため、最初の半年で業務フロー修正を兼ねて指摘事項に対応しつつ決算を修正、J-SOX文書化、エンジニアを巻き込んだnoteシステムの会計基盤改修と怒涛の業務整理を行い、そこからはひたすら月次決算を積み上げながらPDCAを回していくという流れでした。

業務フローの修正や指摘事項の対応をするにあたっては、ただ修正するのではなくその先の審査対応や上場後のことまでも視野に入れて対応していったため、IPO準備対応はもちろん、上場後の経理分野の対応においても比較的スムーズに進められていると思います。

次の章から、業務フロー修正の際に心がけていたことや当社で実際に行った実例をご紹介できればと思います。

指摘の修正をする際に重要なポイント4つ

監査法人から指摘を受けた事項について、正確な経理処理に修正すること自体は場合によっては難しいことではなく、下手したら1日で完了します。(指摘の通りに直せばいいので。)

ですが、IPOまで見据えたときに、なにより重要なのは正確な決算を組むために再現可能なフローを積み上げていくことにあると思っています。なぜならば、上場企業には正確な決算数値そのものだけでなく、正確な決算数値を作ることができる体制が備わっているかどうかが求められ、IPO審査においても非常に重要な審査項目となります。そのため、指摘された項目は結果の修正だけでなく、その過程から見直し、再現可能なフローにしていく必要があります。

フローの修正において重要なポイントは以下の4点だと思っています。

  1. 再度ミスする可能性がないこと(再発防止・内部統制)

  2. 作業が標準的であること(非属人性)

  3. 外部に正確性を主張できる資料があること(監査対応)

  4. 上記が少ない工数で済むこと(適時性)

1.再度ミスする可能性がないこと(再発防止・内部統制)

1の再発防止は言わずもがなですが、「今後同様のミスが発生しない業務フローを作ること」。これは当たり前のようで非常に価値のあることです。

決算業務で毎回注意深く意識をしないとミスをする可能性がある状態は、内部統制的に不備がある状態とも言え、上場会社としてはふさわしくありません。度重なるミスが発生し監査法人から指摘されると、その内容が上場審査にも伝達されることになり、IPOの阻害要因になります。そのため、経理部隊が再発防止の意識をもって業務フローを構築していくこと、その意識がとても重要です。

また、スタートアップ企業は組織の規模がみるみる拡大していくため、組織規模に左右されない業務フローを構築するというのも非常に重要です。より組織の規模や会社が進む分野など、大きな視点から業務を構築していくと再発防止だけでなく都度の見直しも不要になり結果として生産性も上がると思います。

2.作業が標準的であること(非属人性)

2も内部統制の一貫であり、1と同様に重要ですが、やはり見落としがちです。「作業が標準的であること」とは、属人作業からの脱却という意味になります。作業がシンプルであることも決算フロー構築においてはとても重要です。標準作業に変えていく作業は、組織規模拡大への対応や業務ローテーションへの対応にもなります。

スタートアップ企業だと、一部の担当者が頑張ってどうにかするというケースは多いと思います。ですが、熟練の担当者が秘伝のエクセルで作る決算資料はいつか破綻します。また、特定の担当者が頑張らないと決算が完了しない状態は当然、上場会社としてはふさわしくないことになります。状況によっては業務フローのカイゼンだけでなく、人員増なども含めて決算体制を構築していくことが求められます。

3.外部に正確性を主張できる資料があること(監査対応)

そして上場準備と切っても切り離せないのが3の監査対応です。1と2ができていても「外部には見せられません」では、上場は絶対にできません。また、1,2で作成した資料がそのまま監査対応資料になることが理想的です。

上場には申請期の2期前から監査法人の無限定適正意見が必須となります。監査対応に多くの工数を要している会社は世の中にたくさんあると思いますが、監査法人の能力やリソースキャパシティの他に、大きな理由として会社自体が決算の正確性をしっかり主張できていないケースがあると前職の経験からも感じていました。

また、監査対応まで意識して動いてきた結果、IPO審査においても資料を流用することができ、別途大きな工数をかけずに質問対応を行うことにつながりました。だからこそ、IPO準備期間から監査対応やそれを意識した資料作成にもしっかり対応していくことがとても重要であると学びました。

4.少ない工数で済むこと(適時性)

最後に4については、上場企業にふさわしい経理体制・ディスクロージャー体制があるかどうかのキーになってきます。

上場すると、決算を締める→監査を受ける(→指摘があれば修正)→開示資料をつくる、というステップを決算日から45日以内に完了する必要があります。このステップをスムーズに終えるためには、上流の作業がよどみなく下流に流れるように業務や資料を設計していく必要があります。

当社では30日以内で余裕を持って終わらせられる状態を目処に決算締めスケジュール設計をしていました。

上場までに実際におこなったカイゼン

n-2期である2020年11月期中にそれ以前の問題をすべて解決させて、n-2期の決算は45日以内に締めており、申請書類(Ⅰの部)の作成も同時進行しています。

n-1期より本格的に四半期決算と内部統制報告制度(J-SOX)の運用を開始し、n-1期(2021年11月期)の決算では法定開示書類の作成スピードを含め、上場会社と同じといえる水準、具体的には30日程度までもっていきました。

そうして申請期(2022年11月期)は安定運用と細部の業務フローのブラッシュアップを進めながら、四半期決算の監査法人レビュー対応は上場会社とほぼ同じスケジュールで進めながら、上場申請へと進めていきました。

時系列のステップは以下の通り。

2020年7月 現状の業務フローの把握、課題・監査指摘事項の把握
2020年8月 指摘項目の業務フロー改修
2020年9月 J-SOX対応業務フロー修正
2020年10月 noteシステム会計基盤改修
2020年11月 2019年11月期決算修正、修正申告、修正決算の株主総会
2021年1月 2020年11月期決算締め、Ⅰの部本格作成開始
2021年2月 四半期決算本格運用
2021年3月 J-SOX評価開始
2021年9月 稟議システム入れ替え
2022年1月 2021年11月期決算締め
2022年12月 東京証券取引所グロース市場上場

当社において実際に実行した施策の例が以下です。

  • 月次決算の精緻化

    • 決算チェックリストの活用

    • ボトルネックの洗い出し→潰しこみの繰り返し

  • 請求書受領プロセスの変更(経理→現場)

    • 稟議とのつなぎ込みによる進捗管理

  • 決算フォルダの整理

  • 監査指摘対応のためのnote会計基盤の修正

次に上記の項目ごとにより詳しく当社の実例をお伝えしていきたいと思います。上場を目指す企業の管理部門の方、決算フローを改善したいと考えている経理の方の参考になればと思います。

月次決算の精緻化

決算を安定させるためには、とにかく月次決算を正確に積み上げていくことが重要だと思います。とくにIPO準備期間においては審査フェーズに入る前に月次決算を10営業日以内(単体会社の場合)には安定して締められる状態になっているのが良いと思います。月次決算は当然ですが年に12回しかないため、毎月の決算に真剣に取り組んでいきブラッシュアップしていく必要があります。

具体的に行ったのは以下の事項
・決算チェックリストの活用
・ボトルネックの洗い出し→潰しこみの繰り返し

決算チェックリストの活用
決算を締めるためには会社ごとにいくつものステップがあり、代表的なものだと以下のようなものがあるかと思います。
・経費精算の回収
・請求書の回収
・売上確定、請求書の発行
・原価確定
・人件費(給与・社会保険)確定
さらにそれぞれのステップの中に会社が行う事業ごとに特有のチェックポイントや間違えやすいポイントなどがあると思います。たとえば、上記以外にも現金を扱えば現金実査、在庫があれば在庫の確定処理、引当金などの見積り項目の処理など、たくさんのステップが存在します。

当然、それらを漏らさずに正確に実施することが決算締めとして必要になりますが、その管理が経理担当者の経験や感覚に依存している場合、イレギュラーな事象が発生したり、メンバーの病欠などがあるとすぐに崩壊してします。

そのため、当社ではさまざまな事象が発生しても確実に決算を完了できるよう、外部サービス(Bizer team)を利用して決算チェックリストを作成しています。決算チェックリストは、業務マニュアルとしても機能するように細分化して作成しており、この記事を執筆時点では189項目あります。

また、決算チェックリストは自分が担当しない業務も可視化されるため、経理チームにおける決算全体感の把握にも役立つと思います。経理という職種は「経理」ではなく、「経理事務」に陥りがちな職種ですが、全員が全体感を把握しプロジェクトとして進行することで、自分ごととして決算に取り組むためにも重要なツールだと思います。

ボトルネックの洗い出し→潰しこみの繰り返し
IPO準備の初期段階、特にn-2期の初期の段階であっても月次決算に毎回本気で取り組むと、必ず間違えやすいポイントと早期化の障壁があぶり出されてきます。本気で取り組むために◯営業日以内に締めるというハードルを作って毎回チャレンジしていくのがおすすめです。◯営業日は少し高めのハードルが良いです。

それを実践していくと、毎月いろんな課題が見えてきます。
・社員の経費精算の締め切り日は現状のままでいいのか?
・A社の請求書は◯営業日まで届かない
・Bの費用を締めるためにはCの情報が出るまで待たないといけない
このような課題がどの会社でもでてくるかと思います。

経費精算の締め切り日は1〜2営業日以内とするのがおすすめです。経費精算の場合、すでに支出や証憑回収は終わっているため長くすればするほど逆に申請漏れリスクや証憑の紛失リスクが高まります。

請求書が届かない場合、対応はいくつか考えられます。まず郵送で回収している場合、郵送のリードタイムによるロスがあるため、電子回収を交渉してみましょう。電帳法の施行により電子回収のハードルは下がっており、従来から郵送だったからそれをなんとなく継続してるだけ、なんてケースも多いと思います。当社の例だと、肌感で95%以上はメール等の電子回収ができており、取引先へお願いしてみると意外と変更が効くものでした。

次に「サービスの管理画面から直接金額情報を入手する」という方法もあります。webサービスの場合、大抵はweb上で入手可能なため早期化に役立ちます。

それでもだめな場合、概算計上を行います。費用発生の特徴を確認し、それにあった概算計上を行えば遅延なく決算が締めることができます。例えば一例を上げると、エンジニアに協力していただき、請求書発行が遅いあるサービスについて、利用状況から自動計算を行い利用料をSlackに通知するという仕組みを作ってもらったりしています。

利用料が毎月Slackで自動通知される

まとめると、情報が遅い場合のソリューションは以下の通り。
①メール等による電子回収
②管理画面からの情報取得
③概算計上
特に概算計上は正確な決算を組みたいという視点が強すぎると取りづらい選択肢かと思いますが、多くの上場企業が採用してますし、決算が早く締められることのメリットの方が大きいことが多いかと思います。なお、概算計上を行う際には見積りのブレが一定生じると思いますので、金額が大きい場合などは必要に応じて監査法人と事前相談しておくと、その後の対応がスムーズになります。

請求書受領プロセスの変更

スタートアップ企業で特にアーリーフェーズのときは、会社の規模が小さいこともあり、経理ですべての請求書を回収しているという会社も多いと思います。当社でも80名規模程度までは経理で回収していましたが、今回のIPO準備の過程で経理が受領するフローからそれぞれの担当社員が自ら回収するフローに変更しました。

100名以上の規模へグロースしていくことを想定している場合、経理が回収するフローはいつか破綻し会社成長を阻害することになりかねません。小さい規模の場合、経理側ですべての取引を把握し請求書を回収することはそこまで難しくありませんし、社員の事務処理に割く工数が減り、生産性を上げる後押しにもなると思います。一方で、より大きな視点で考えた場合、会社規模が将来的に大きくなることを想定すると、いつか経理がすべてを把握することは困難になり、請求書の回収が漏れたり、それにより正確な決算も組めなくなるといった悪循環に陥ることになります。

それよりは社員一人ひとりに請求書回収業務を分担し、後述する稟議との紐づけを行ったり、それによる進捗管理を行ったりするほうが、全社最適なフローになると考えました。一時的に社員に負担がかかることであっても、会社が将来的に目指す規模を想定してフローを構築することもIPOを目指す上で重要だと思います。

請求書受領システムの導入
当社では経理で請求書を受領することを卒業し、請求書を受領する仕組みを用意することにしました。

外部サービス(バクラク)を導入し、メール等で取引先より回収した請求書をワークフローに載せて上長承認を経て経理へ連携する仕組みを取り入れたことにより、現場で受領した請求書を処理しやすくし、内部統制の強化、決算の精緻化・早期化、リモートワークへの対応を同時に達成しています。また、同時に電子帳簿保存法に対して初年度からスムーズに対応することができました。

稟議とのつなぎ込みによる進捗管理
IPO審査の中で大きな論点になりやすい項目として稟議管理(社内決裁フロー)があります。

当社では、請求書の受領システムの導入と稟議システムの導入をセットで実施した結果、稟議の仕組みとその後の支払いのフローが結びつき、稟議の進捗管理も可能となりました。稟議の実効性を担保するために経理部門がエクセル等で稟議と支払いを結びつけることにより管理を行うようなケースをよく見ますが、当社では外部サービスを用いて進捗管理まで行い、さらには会計システムまでつながるシームレスなフローを設計しました。これにより請求書未提出の管理やボトルネックの洗い出しにもつながり、決算フローが劇的にスムーズになりました。

決算フォルダの整理

決算フォルダの整理は非常に地味な論点と認識しつつも、月次決算業務の改善やIPO審査の過程の中では非常に助かったので紹介したいと思います。

当社では、主に年度ごと階層化しかつ勘定科目ごとナンバリングして、決算フォルダを整理しています。フォルダ分けくらいは当然の所作として誰もがやると思いますが、階層化とナンバリング、さらにそれをチーム内でルール化して継続適用することが重要だと思います。

フォルダの階層化整理は前職の監査法人時代は全社ルールがあるくらい一般的で、進捗管理やローテーションの上でも非常に便利でした。武田雄治先生の「決算早期化の実務マニュアル」でも紹介されています。

決算業務においては、フォルダを整理することにより、情報へのアクセスにかかる工数が格段に減りました。人数が少ないチームですと対して問題にならないことではありますが、3名4名と増えていくと、Aさんが作業したあとにBさんがその情報を利用して別の業務をするというようなことが増えてくると思います。そのような業務が重なり合う部分が出てきたときにフォルダが整理されていると威力を発揮します。また、人員が新しく入ったときのオンボーディングもスムーズになります。転職時の情報アクセスのしにくさは大きなストレスになりますが、なるべくそれが発生しないよう整然と整理するようにしています。

また、IPO審査においては、さまざまな質問を受けますがそれに対し正確かつ素早く、ときには基礎資料を提示しながら回答をしていく必要があります。決算フォルダが整理されていないと、資料が見つからなかったり、調査に手間取ってしまい、回答に困ることもありました。2020年度以降はフォルダを整理し、それ以降の年度も同様のルールでフォルダ作りをしたため、その後の審査対応はとてもスムーズになりました。

当社の決算フォルダ
0番台が資産、1番台が負債、5番台が損益などルール決めしている

監査指摘対応のためのnote会計基盤の修正

当社の主要サービスであるnoteは、CtoCのデジタルコンテンツの売買を行うためのプラットフォームとなっております。売買が行われた際にサービス利用料としてコンテンツ代金の一部を徴収していますが、それが当社の売上となっています。

例えば100円のコンテンツが販売された場合、85円がクリエイター、15円が当社の取り分となります。(サービス料率は実際のものとは異なります。)この際の会計仕訳は以下の通り。

売掛金  15    / 売上高 15
未収入金 85 / 預り金 85

当社の未収入金や預り金の科目残高が多額になっているのは上記のような会計処理をしていることが理由となります。

ここまでが会計処理の概要となりますが、実際note上では、月間100万件を超える決済が走っており、決済手段もさまざまです。それらを経理処理に落とし込む必要がありますが、私が入社した当初は経理処理のための情報が最適化されておらず、都度エンジニアに依頼し、システムから必要な情報を引き出してもらい、会計処理をするという状況でした。そのため、監査対応のためのデータをうまく提示することができず、監査指摘事項となっていました。

この指摘事項の解決のためにnoteシステムの会計基盤の改修作業が部門横断のプロジェクトとして立ち上がり、私も参加することになりました。noteに入社して初めての大きなプロジェクトでしたが、状況を聞いたときにはかなり困難なプロジェクトになりそうだなと大きな不安を感じました。しかしその一方で、前職の監査法人では数字の表面しかみることができないことにもどかしさを感じていたため、少しワクワクもしていました。私はエンジニアの知識はないため、実際にはプロジェクトマネージャーとエンジニアが改修作業をすることになりますが、その方々と密にコミュニケーションを取りながら、解明を進めていきました。

私の役割は、社内のシステム部門と監査法人を適切にブリッジして、監査指摘事項を解決すること。そのために、監査法人の指摘内容を噛み砕いて説明、それがどのような状態になったら解決と言えるのか、会計処理のために必要な情報は何なのか、監査対応のために必要な情報は何か、といった事項をPMやエンジニアと何度もやりとりし、密にコミュニケーションをとっていきました。振り返って見て、PMやエンジニアと一緒に問題を解決していくという一連のプロセスはスタートアップでしか味わえない貴重な経験だったと思っています。

この経験のおかげでシステム的な知識が乏しかった私でも、noteの会計基盤のデータ構造がどうなっているかをある程度理解することができました。そして無事に改修作業が完了し、会計処理のための売上レポートが最適化され、監査対応のためのデータも適切に出せるようになり監査指摘は無事解決しました。それと同時に売上締め処理に時間がかかっていた決算対応も段違いに早く締めることができるようになり、決済件数にも左右されないフローを構築することができました。

おわりに

連載開始のお知らせの鹿島さんのnoteにもあるように、当社は"冬の時代"にIPOをしました。それでもブレずにいろんな取り組みを続けてこられたのは、IPO自体が目的ではなく、IPOを当社のミッション達成のための通過点として捉えてきたからだと思います。IPO準備には一定の力技やテクニック的な要素も必要かと思いますが、それ自体を目的にしてしまうと会社が目指す方向や達成すべき本来のミッションを見失い、失敗することにもなりかねないと思います。

紹介させていただいたこと以外にも無数の取り組みを行ってきましたが、代表的なものを書かせていただきました。経理部門はなかなか会社間の横のつながりも薄く車輪の再発明が行われやすい職種だと思いますので、参考になるものがあれば幸いです。

(書き手プロフィール:平山雄輝
1988年東京都生まれ。大学4年時に公認会計士試験に合格し、新卒で監査法人へ入社。上場企業の法定監査やIPO支援業務などに約10年ほど従事。
2020年7月にnoteへ入社。noteでは管理マネージャーとして、経理部門総務部門を統括。IPOプロジェクトでは、主に決算・監査対応、内部統制の強化、Ⅰの部等の開示書類の作成を担当。

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