マガジンのカバー画像

スタートアップ冬の時代のIPO

11
2022年12月に上場したnote株式会社のIPO経験を、上場準備メンバーが連載形式でお届けします。
運営しているクリエイター

記事一覧

上場して1年、どうだった?IPOのメリット/デメリット 〜noteのIPO連載最終回

noteが上場したのは、今からちょうど1年前の2022年12月21日。 これまで「スタートアップ冬の時代のIPO」と題してnoteの上場準備メンバーでIPOに関する連載をやってきましたが、今回が最終回。テーマは、「上場して1年、どうだった?IPOのメリット/デメリットは?」です。 この記事は、IRアドベントカレンダー 2023 にも参加しています。 まず、一般的に言われる上場のメリット、デメリットとして、以下のようなことが挙げられます。 上場のメリット: 上場のデメ

IPOにおけるプライシングとオファリング

これまでnoteのIPO連載では、上場審査の論点となりやすい内部管理体制や経理体制の構築、事業計画策定などについて触れてきました。それらの審査上重要な項目を一つ一つクリアして、いよいよ上場を2〜3ヶ月後に控えたとき、上場に向けての最後のハードルと言ってもいいのがプライシングとオファリングについてです。 IPOにおける、プライシングとオファリングとは?まず、オファリングとはなんでしょうか。IPOは、Initial Public Offering(新規公開株式)の略なので、オフ

新規上場でnote広報がやったこと〜IPO冬の時代

会社の株式公開、新規上場(IPO)のタイミングで広報は一体なにをやっているのか。 会社の体制、それまで築き上げてきたもの、会社のスタイル、広報PRへの期待、どの要素が変わるだけでもまったく違うものになります。 わたしの所属するnote株式会社が上場したのは、2022年12月21日。 それまでのバブルとも言えるようなスタートアップ投資熱が急速に冷えきった頃でした。上場準備自体はその前から長く進めていて、IPOに関わるメンバーが定期的に集まり、広報活動の戦略も立てかけていま

note1人目IRから見る上場の舞台裏

こんにちは、noteでIRを担当している三浦です。 "スタートアップ冬の時代のIPO"連載に私もnote社の1人目IRとして登場することとなり、こちらのアカウントでは久々にnoteを書きました。(普段はIRアカウントで記事を書いております!) noteに入社すると決まった頃からさまざまなスタートアップのIRやIPO関連記事に目を通していたので、ついに私もこの記事を書く時が来たのか・・・!と、感慨深さを感じています。 IPOを目指すスタートアップ関係者やIR担当者のみなさ

【YCC修正】今さら聞けない、金利と株価の関係、スタートアップへの影響(初学者向け)

7/28(金)、日銀がYCC(イールドカーブ・コントロール)の修正を決めました。YCCは、簡単にいうと金融緩和の一環で日銀が国債を買って、国債の金利が一定以上に上昇しないように操作することです(これがなければ、国債の価格と金利は市場原理で自由に決まります)。YCCは2016年に導入された金融政策ですが、日本国債の金利はインフレ目標を達成するためにYCCによって長らく0%近辺に抑えられていたところ、今回日銀の許容する金利の上限が押し上げられことで、今後金利が徐々に上がっていくの

上場準備・審査フェーズにおける事業計画の策定について

はじめにnote株式会社は2022年12月に上場しました。その際に上場を目指す企業として様々な準備を実施し、証券会社や証券取引所の方々の審査を受け、晴れて東証グロース市場の1銘柄として上場を果たすことができました。 その中でも、私がCFO室/経営企画担当として特に注力して取り組んだのが「事業計画」の策定・審査プロセスでした。 事業計画、と聞くとなかなか馴染みがない方もいらっしゃるかもしれません。一企業に勤めている方であれば多かれ少なかれ予算や事業計画に関与する機会はあるか

上場準備における内部管理体制の整備とプラットフォームの健全性審査についてー各論ー

0 はじめに法律事務所で弁護士をしており、note社には1人目の法務として、業務委託で関わり始めましたが、その後、上場準備にも関わるようになりました。 現在は、法務コンプライアンス室長、CEO室長、一般社団法人クリエイターエコノミー協会の事務局長などをしています。 全体感については、以前書きましたが、今回は特に時間をかけた、内部管理体制の整備とプラットフォームの健全性に関する各論について触れていきたいと思います。 1 内部管理体制の整備上場にあたっては、健全かつ効率的に事

note IPO連載第2回 上場に向けた経理体制の整備 noteの実例は?

お久しぶりのnoteになります。noteで管理ユニットマネージャーをしている平山と申します。 弊社のCFOである鹿島さんがこの度IPOプロジェクトの連載を開始したことに伴いまして、私もIPOプロジェクトの一員として第2回目を担当させていただきます。 鹿島さんの連載開始の記事にもあった通り、前職では公認会計士として監査法人で勤務しており、初めての転職、初めての事業会社でnoteにジョインしました。前職は堅い職業だったので短髪スーツで約10年やってきましたが、note社入社後

note "スタートアップ冬の時代のIPO" 連載はじめます!

noteが上場したのは2022年12月21日。2022年は10年くらい続いてきた株式マーケットの上昇相場が終了し、上場・未上場のスタートアップの資金調達環境が悪化するなど、「スタートアップ冬の時代」と呼ばれました。 それから約5ヶ月が経ち、株式市場に大きく影響を与えるアメリカの政策金利の引き上げはまだ続いています。金利が低かったコロナ禍のゼロ金利時代からは5%金利が上がり、さすがに今後は上昇幅が緩まり、段階的に下がっていくことが予想されていますが、3月のシリコンバレーバンク

上場準備を終えて-現場責任者から見た上場準備-

0 上場2022年12月21日、note株式会社は東京証券取引所グロース市場に上場しました。 準備にかかわりはじめた頃に宿った双子は2歳半になりました。 ここに至るまでは本当にいろいろなことがありました。 1 上場準備チーム上場準備は、上記のフローに沿って進みますが、私は、予備調査後、内部体制の整備から関わり始めました。 もともと法律事務所で弁護士をしており、note社には1人目の法務として、業務委託で関わり始めましたが、その後、上場準備にも関わるようになりました。現在

スタートアップ冬の時代に上場する。〜noteのIPOに際して〜

2022年12月21日、note株式会社は東京証券取引所グロース市場に上場しました。ここまで来るのに様々な困難があり、IPOを支えてくださった関係者の方々、なによりもnoteを利用いただいているクリエイターやユーザーのみなさまに感謝を申し上げます。 今年は長年続いてきた株式の上昇相場が転換期を迎え、グロース株を中心に株式マーケットが大きく崩れ、「スタートアップ冬の時代」とも呼ばれました。この特異な環境下でIPOに至った当事者の立場から、激動の2022年の振り返りも兼ねて、今