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BtoB企業のサブスクによるCX向上改革

CX (Customer Experience:顧客体験(価値))という概念・言葉が少し前から知名度を上げています。類似の言葉で、UX(User Experience:ユーザ体験)やCS(Customer Satisfaction:顧客満足度)があり、厳密に言えば細かい違いがあると謳う法人・個人も多いですが、直観的な理解としては同様の方向性を目指すもの、と捉えて良いと個人的には考えます。
一点、明確な違いがあるとすれば、USやCSや提供される製品やサービスに則した体験や期待に対する満足度を対象としていますが、UXは提供される製品やサービスと共に事業推進する過程全体を対象としたものということでしょうか。提供会社側が規定していた製品やサービスの範囲内での議論から脱して、規定された枠組みに限定されない、あくまでも顧客視点での事象全体を通して顧客が享受する価値について議論することと言えます。

最初の投稿での考え方を振り返りつつ、どのような観点での考慮・検討が必要なのか、サブスクリプション型ビジネスはそこでどのような位置づけになるか、確認していきたいと思います。

1.コト売り推進の目指す方向性

初回投稿の「BtoB成長戦略としてのサブスク」にて言及しましたが、顧客や競合などの各種変化によって、顧客への継続的な価値提供においてコト売りの考え方が必要になってきています。
そこで、顧客と繋がり続けるためのサイクルを回し続けるという考え方を整理しましたが、この重要成功要因とサイクルを回す仕組みを構築する取組みは、CX向上に向けた改革の一つであると考えられます。

20201209_重要成功要因サイクル

ここで改めて申し上げると、コト売りによる継続的な顧客との接点維持には、顧客の課題解決につながる総合的なソリューション提供をビジネスとして推進し、顧客の成功に寄与し続ける必要があります。
ただし、BtoB企業の場合はここで障害が生まれることが多いでしょう。それは、既存のビジネスモデルにおいて、直接的かつ継続的な顧客接点の保持、顧客事業や既存ビジネスを踏まえたサービス提供、について検討余地があるかが重要な前提条件となる、ということです。
商流が複雑であり、代理店や販売店などを多く間に挟むことで、(最終製品やそれに関連したサービスを利用する)顧客との接点確保が困難である、あるいは、原材料などすぐに消費して終わる商品のみを扱っており、顧客が利用する過程でビジネス・業務上の課題が生まれづらい、といった状況が前提条件をクリアしづらいケースに該当するでしょう。

2.CX向上改革のステップ

既存ビジネスに置いて前提条件がクリアできていないと判断される場合、そこで諦めて試合終了でしょうか。
そんなおかしな話はありません。もちろん障害ではあるので、目標までの道のりは困難かつ長いものにはなるでしょうが、道がないわけではありません。

CSやUXの概念も包含したCXの向上に向けた取組みとして、例えば、業務・システム面での改革・効率化・高度化(オペレーションの練磨)、もしくは、製品・サービスの革新(イノベーション)などがあるでしょう。
これに加え、ビジネス上の協業先や顧客との接点の持ち方、収益化の方法なども視野に入れたサブスクリプション型の新規事業構築も、CX向上に向けた取組みと捉えられます。

20201209_改革方向性

考えうるステップの一例ではありますが、顧客との接点を確保するための、そして接点情報を活用するための、業務改革を企画・推進するとともに、(既存ビジネスやターゲット顧客の状況を鑑みると)革新的な製品やサービスの開発によって、顧客のビジネス推進の過程で長く/多くのプロセスで利用し、より良いものを求める状況を作りだす。
恐らくこの調査・検討・企画・推進の過程で、自社が顧客のことをより理解してきていると自覚されるでしょう。その結果として、顧客のビジネスにおける課題の輪郭が徐々に明確になるものの、より具体的に顧客の課題を把握し、その課題を解決するための情報収集・提案には、既存のビジネスの枠組みを変えていきたいと、思われることでしょう。多くの場合、上記の重要成功要因サイクルを回し続けることが極めて難しいためです。

3.CX向上改革としてのサブスクの優位性

サブスクリプション型ビジネス構築がオペレーション練磨や製品・サービスのイノベーションより優れている点があります。

顧客は必ずしも製品機能やサービス内容に基づいて合理的に判断し続けるわけではないといった問題意識を持ち、「経験価値」を提唱したアメリカの経営学者バーンド・H・シュミットは、心理的な価値を5つに分解しています。これらは主にBtoC事業を想定した項目に分類されていますが、考慮するべき本質的要素はBtoB企業でも同様であるはずです。
敢えて、製品機能やサービス内容も融合的に反映し、整理し直すと以下のように考えられるかと思います。

20201209_サブスク優位性

CX向上によって、これら5つの価値が提供されると考えた場合、顧客がビジネスを推進する過程での知覚・活動に起因する価値は、一時的になる可能性もありますが、おそらくは製品やサービスのイノベーションによってもたらされるケースが最も高いでしょう。(逆説的に言うと、そのようなケースでなければイノベーションとは呼べないかもしれません)

転じて、顧客と寄り添い、協働し、チームとなり、両社のビジネスを改善し続けるといった観点では、サブスクリプション型ビジネスは他の2つの取組みに勝っているでしょう。
オペレーション練磨も根底にある考え方は共通していますが、あくまで規定の製品やサービスの範囲内で接点を確保し、情報管理・活用し、関係性を深化するものです。もちろん十分な価値・効果を見込める取組みですが、顧客との関係性の中で両社のビジネス改善を志向する考え方としてはスピード感が遅い仕組みでしょう。顧客の情報をスピーディに収集・管理・分析・活用することはまだしも、その管理される情報の枠組みや製品・サービスの改善、ならびに営業担当などの行動変容を促し続けるには、現場の努力だけで実現できるものではありません。この点に関する、必要な枠組みは別の場で確認したいと思います。

4.最後に

プロダクト・アウトからマーケット・インへのシフトから、顧客満足度やユーザ体験の向上、顧客中心主義などなど多くの概念・言葉で議論が繰り返されてきました。友人や結婚、就職などと同様、多くの企業にとって取引先となる企業は、業務によるものの1社か限定された数社であることが通例かと思います。
その関係性の中で幸せ(ビジネス上の価値や満足度)を感じて貰い、これは縁であり長く付き合いたいと想って貰うには、従来よりも拡大された時間軸の中で顧客に寄り添う必要があるのかと思います。

次回は、BtoB企業のサブスク事例について前回の記事以降の情報を整理し、研究してみたい思います。

本稿および関連する/しない内容についてご質問、ご相談があれば、コメントまでご投稿ください。
是非、皆様と共に新たな発見ができればと思います!

兵頭|顧客接点強化

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