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BtoB成長戦略としてのサブスク

サブスクリプションサービスが大きな潮流としてBtoC企業・市場を中心に拡大しています。サブスクリプションビジネスを支える重要な要素としてカスタマーサクセス(顧客の成功)という考え方がありますが、発祥はBtoB企業における顧客との関係性管理や囲い込み(顧客ロイヤルティ向上)といった文脈からでした。
つまり、まだ日本においては日常的にBtoB企業におけるサブスクリプション型ビジネスモデルの導入・推進はほとんど聞かれませんが、企業の成長戦略におけるサブスクリプションの重要成功要因は、BtoC・BtoBいずれであっても共通しており、導入し成果につなげることが十分に可能であると考えられます。むしろ、顧客とのつながりが今後より強く求められることは想像に難くなく、早期に導入した上で顧客とのつながりを仕組みとして構築し、継続的にサービスを改善し続ける必要があります。
本稿と今後の投稿によって、その基本的な考え方を伝えられればと思います。

1.従来のビジネスモデルと今後のサブスクの比較

サブスクリプションとは旧来、製品やサービスを一定期間ごとに一定の金額で提供する定期購読・定額制のビジネスモデルを意味していました。いわゆる、新聞の定額制や雑誌の定期購読が分かりやすいですが、広義ではレンタル、リース、リカーリング(複合機にように設備を初期に導入し、トナーなどで継続的に収益を得るモデル)も含まれるかと思われます。

一方、今後の継続的な成長のためには従来の枠組みに収まるサブスクリプションでは顧客に継続的な満足を提供できません。後述のような外部環境の変化や課題認識を踏まえ、今後検討するべきサブスクリプションビジネスにおいては、顧客とのつながりを維持し、短期での継続的なサービス提供と改善サイクルを推進する必要があります。

20200908_ビジネスモデル比較

2.外部環境変化と対応策としてのコト売り

BtoC市場においては顕著ですが、消費者・ユーザは何かを購入する際にはインターネットで検索し、広範な情報を即座に収集することが可能です。日進月歩の情報化の結果、BtoB市場においてもこのような状況はしばしば生まれており、多くの製品やサービスの機能・コストの比較が容易になり、ユーザにとって競合他社製品や代替品へのスイッチングコストが低下してきています。

また、モノやサービス自体の機能面での明確な差がなくなってきた領域では、コスト面で圧倒的優位であることが多い海外企業の参入が進んできています。BtoC市場では、AmazonなどのECサイトで多くの方が頻繁に見られている状況かと思いますが、BtoB市場でも多くの業界で同様です。これらの業界においては、過当な価格競争に陥り、利益が圧迫され、さらなる開発への投資が困難になるといった悪循環が散見されます。加えて、スタートアップ企業などによる技術的イノベーションも、長らく事業を続けてこられた製造業においてはしばしば脅威になっています。

ユーザ側の意識も変化してきています。モノやサービスの機能とそのコストのみでの選定が困難になっており、付帯的なサービスなど追加メリットも重視されてきている一方、より良い・安いモノを見つければそちらに乗り換えるといった「必要なものを必要な時に利用・更新したい」といった効率的な利用もニーズとして徐々に顕在化してきています。しかしながら、多くの場合において、モノやサービスは必要な機能は充足していることが多く、ユーザがさらなるニーズを整理し、明確にした上で、伝達することが困難です。もちろん、提供企業側が自社のみでその隠れたニーズを発掘し製品化・サービス化することも困難であるため、顧客との対話が必要と言えます。

上記のような外部環境、顧客意識の変化によってモノや単体サービスの売り切りモデルだけでの継続的な成長に限界が生まれてきています。それに対して、解決策の一つとしてコト売りによる顧客との継続的なつながり・価値提供、その結果としての売上・利益の確保につなげることが肝要であると考えれます。

20200908_外部環境変化と対応策

3.コト売り推進に向けたサブスクビジネスの有効性

コト売りによる継続的な顧客とのつながり維持には、顧客ビジネスの課題解決につながる総合的なソリューション提供を提供側企業のビジネスとして推進し、顧客の成功に寄与する必要があります。
モノの製造・販売や限定されたサービスの提供から、ソリューション提供型へのステップアップを実現・推進するには、サブスクリプション型ビジネスモデルが有効であると考えられます。
定額制や従量課金制によって(多額になりがちな初期投資が不要となる)、ユーザにとって簡易に利用開始・終了が可能となることで、提供企業側にとってユーザの行動要因を把握する頻度が増えます
また、規定された利用料の範囲内で複数のサービスをセットで提供することで、ユーザと対話する機会が増え、ユーザの課題を深く理解することが可能となります。
このように、継続的な顧客との接点を確保することが可能なサブスクリプション型ビジネスモデルへの変革は、多くのBtoB企業の今後の成長において有効な選択肢となり得ると考えられます。ただし、既存のビジネスモデルにおいて、直接的かつ継続的な顧客接点の保持、顧客事業や既存ビジネスを踏まえたサービス提供、について検討余地があるかが重要な前提条件となると考えられます。なぜならば、直接的な顧客接点がどうやっても持てなければ、顧客の状況や課題を知ることが他人任せとなり、サービス化やその改善の精度は著しく低下するのはほぼ間違いないでしょう。サービス提供については、もしサービスがセットとなっていない月額制となってしまうと、ただの使い放題と認識され、ユーザ側にとっては対話する必要性がなくなり、提供企業をビジネスパートナーではなくコストセンターのような扱いをするでしょう。したがって、既存ビジネスにおいて、食品など消費して終わってしまう単用財ではなく、耐久消費財といった利用する過程で顧客にとっての課題が発生する製品や関連サービスが前提となっていることが望ましいと言えます。

20200908_サブスク有効性

4.最後に

販売領域において、顧客の観点では新規開拓と既存維持・向上といった切り分けがあるかと思います。後者の戦略について、どれほど継続的に施策が実行され、成果につながっているでしょうか。
半永続的なリピートを目指す、この従来から誰もが考えていた重要なゴールに向けた道標が形となったものの一つが、サブスクリプション型ビジネスではないでしょうか。

次回はBtoB企業におけるサブスクリプション型ビジネスモデルの先行事例をいくつかピックアップし、研究してみたいと思います。

本稿および関連する/しない内容についてご質問、ご相談があれば、コメントまでご投稿ください。
是非、皆様と共に新たな発見ができればと思います!

兵頭|顧客接点強化

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