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パリ軟禁日記 14日目 隔離された世界で何をするか

2020/3/30(月)

数日に渡る隔離状況で人は何をして何を考えるのか。この部分に興味があって僕はこの記録をつけていると言っても過言ではない。

本日付のル・モンド紙によると、いま約34億人、人類の43%が外出禁止もしくは自宅に留まるよう勧告されているそうだ。また、ものの本によると、検疫を意味する語quarantineは「40日間」を意味するヴェネチアのイタリア方言のQuaranta giorniが語源。14世紀のペストの大流行で人口の30-60%を失ったヨーロッパは、その教訓として船が街に入る前に船員たちが得体の知れない病気を持ち込むことがないよう港外(最寄りの離島など)に隔離したのだとか。その期間が40日間だった、というわけだ。このルールが始まったのは現クロアチアのドブロブニクかららしい。外界と接する港町は一見すると華やかだが、その反面、未知の疫病がもたらされる可能性を秘めた場所でもある。

離島に隔離された船乗りたちは何をしていたのだろうか。食料は港町から調達できるとして、その他の時間は何をするのか。14日目の今日にして思うが、40日とはかなり先のゴールである。日記を書く?本を読む?船乗りの識字率ってどれほどだろう…。酒を飲んで歌って踊る…ってそんなに何日も続けられるものだろうか。経験のある船乗りから知識や技術の伝承を受けたり、身体を鍛える?すぐに飽きてしまわないだろうか。当時の船乗りがそんなに真面目な人間ばかりではあるまい。こっそり泳いで街に行くヤツとかいたんだろうなぁ。

現代の隔離期間。周りががどう日々を過ごしているのかを知るのは興味深い。隔離中のルーティン(quarantine Routine)でSNSを検索してみよう。意識高めのヘルシー思考の人々から、ひたすら寝る人、ゲームをする人、ペットと遊びまくる人まで様々だ。もはやこのハッシュタグは大喜利になりつつあリ、笑えるものも多い。僕が気に入ったのはこれだ。「ただそこに存在するだけ。」 悟りの境地。

周りのアイデアを取り入れてみるのも悪くない。今日、僕は縄跳びをやってみた。先日セーヌのそばで縄跳びをしているお兄さんを見て、その手があったか!と思ったからだ。小学生を除き、縄跳びをやるのはボクサーと相場が決まっている。そして、トレーニング中のボクサーはかっこいい。僕は脳内でロッキーのテーマを再生しながら心を踊らせて、クローゼットの奥から買ったきり一度も使ったことのない縄跳びを取り出した。いざ外に出ると少し恥ずかくなり、こっそり練習できる場所を探して街をさまよった。封鎖中の公園入口、日当たりがいいところを本日のトレーニングスポットに選んだ。かかとをつけずにつま先で跳ぶようにすると長く続くことを思い出した。つっかえつっかえ跳んでいるところを通りすがりのおじさんに見られた。やっぱり、恥ずかしかった。

夜のニュース番組の終わりにフランス国立管弦楽団の『ボレロ 隔離バージョン』なるものが紹介されていた。楽団が自室でそれぞれのパートを録音し、それを合成させてオーケストラ全体が演奏しているかのように編集した映像だった。日々の過ごし方の最高のお手本だった。

フランス国立管弦楽団『ボレロ 隔離バージョン』

ものの本:
検疫所の歴史〜明治150周年関連事業〜 (厚生労働省 小樽検疫所) 
A Pest in the Land: New World Epidemics in a Global Perspective(Suzanne Austin Alchon, 2003)

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