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【小説】『規格外カルテット』10/10の下(結び)

 ようやっと。
 あとおまけのその後4コマ2種類付き。

(10回中10回目の下:約700文字)


 実を言うと途中から戻っていたものの、多くの人がいる外で脱力してしまった気恥ずかしさもあって、白井みるは演技を続けていた。開けてもらったドアからジムニーに、自分は大きなお人形、つまり荷物のような気分で乗り込み、運転席から乗り込んで来る蜂須賀にはなるべく顔を向けないでいる。
 エンジン音が鳴り助手席に振動を感じて、走り出す、と思いきや、運転席から声がした。
「最後に、言っておきたい事がある」
 横目に見た蜂須賀はハンドルを握ったまま、フロントガラスを通り越した先を見ている。
「これは、ハッピーエンドじゃない。何も、解決なんかしていない。と言うより解決しなきゃならないような問題は、初めから、起きていなかった」
「大さん? どこに向かって、何の話をしているの?」
 身を起こして警告音に気付くと、このせいか、とみるもシートベルトを締めた。すると音が止まる。彼の声が、はっきり聞こえる。
「だって、僕達はそれぞれに、本当を言えば少しも、不幸じゃない。本当は、幸せだって言い切ってしまう事も出来るんだ。そうだろう?」
 そう遠くない未来の夫からの、思い切った笑顔を向けられて、みるも心からのちょっと意地悪な笑顔を見せた。
「そうね」
 一つ大きく頷いて、前を向いた蜂須賀はアクセルを踏む。今時マニュアルのガソリン車に未来なんか無くても、とりあえずこの日のこの時間は、ファミレスの駐車場を走り去る。
 商品、として見ようとすれば、売れる要素の無い個体、だとしても、人間なので問題は無い。今日この場所に表示された、この文章なんか、何かの思考のきっかけにでもなれば良い。

                          了

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pixivらくがき1 | pixivらくがき2




※改めて確認したところ「らくがき2」の方が、
「センシティブな内容が含まれているため
 (アカウントが無ければ)表示できません」になっていた。
 実に残念。2年前なので原本も残っていない。

 ↑
 私自身が2年前「センシティブ」に設定していた事が判明。
 明確な規制は掛けていなかったので気付かなかった。
 調整してみたけど一旦「センシティブ」で投稿した以上、
 反映されづらいかもしれない。後日確認。

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