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【小説】『規格外カルテット』8/10の上

  今度は上中下で三分割。

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(10回中8回目の上:約500文字)


8 ハニーポイズンとチープフェイク


「聞いていませんか」
 元から小難しい顔付きの蜂須賀だが、入社した時から年の近い後輩として面倒を見てきた咲谷には、実は何にも考えていない時か、真剣に考え込んでいる時かの見分けが付く。
「すると兄の方ではどうも、妹に会いたくはないらしい」
 そして後者の場合は大抵、今はいらないあたりまで余計に考え込み過ぎている。
「ちょっと待って。妹の方ではお兄ちゃんに、会いたがってんの?」
 言ってやるとはっとした様子になり、
「そうでした」
 と少し照れた。
「気を付けないとなこういう時は。悪気が無くてもつい自分が担当している方に、肩入れしがちになるから」
 仕事に寄せた言い方をして、更に冷静な思考を促す。現に昼休憩は終わり際で、モードを切り替えなければならない。
「ではこの件はそれぞれの、持ち帰りという事で」
「おう分かった。任しとけ」
 そう笑った後で咲谷の方では、切り替え切れない溜め息が出た。
「ああ。プライベートに仕事持ち込みたかねぇんだけどなぁ」
「逆だと思います。プライベートが仕事に、持ち込まれているんです」

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