見出し画像

【図解】コロナ禍でデマはなぜ生まれ、広がったのか 発生と拡散のメカニズム

※このnoteは、上記資料の抜粋版です。もし興味があれば、スライドもご覧になってください。

増大するSNSの存在感と、コロナに見た課題

スライド13

今や社会を動かす存在となったSNSの台頭は、新たな社会課題を引き起こすようになりました。中でも、フェイクニュースや陰謀論、デマの問題がよく注目されています。

デマ問題は、インターネット上にとどまらず社会全体に影響を与えました。たとえば、イランでアルコール中毒者が急増700人が死亡したニュースなど、誤った情報が公衆衛生を脅かす事案が発生してしまいました。

デマはなぜ生まれ、どのように広がるのか。この問題に対処することは、このSNS時代において、とても重要なテーマだと感じます。

SNS上の問題は「社会全体の問題」

コロナ禍には、たくさんのデマが投稿されました。皆さんも一度は見たことがあるのではないでしょうか。ある調査では、およそ4人に3人が、コロナ関連のデマに触れたそうです。

スライド7

4人に1人は、週1回は目撃しているそうです(SNSやブログ上)。

スライド8

この背景には、デマ情報のほうが広く速く拡散されてしまう事情がありそうです。

「中国人の感染者が関空を脱走した」のデマ投稿がどのように拡散されたのか、推移をグラフにしたもの。

スライド33

投稿者のフォロワーは50人程度でしたが、たった3時間で2000RTに到達しました。多くの場合、デマ情報は喜怒哀楽に訴えかける強いインパクトを持っています。

スライド32

デマの発生と拡散に分けて考える

デマ問題を、デマの「発生」と「拡散」に分解して考えてみます。

スライド14

デマを生むのも、デマを拡散するのも、人間の行動が起因です。デマ問題を深堀りするには、デマ投稿そのものへの対処よりも、人の理解や振る舞いに着目する必要がありそう。

スライド15

情報の拡散とは、つまり人のインプットとアウトプットの相互連鎖です。正しい情報を正しく解釈し、正しく表現する。それ以外はすべて誤った情報になってしまいます。

スライド23

人は因果を「見出しすぎる」

「私はデマを投稿しないから関係ない」と思う人がいるかもしれません。実のところ、僕もそう思っていました。

ただ、デマの多くは、決して故意によって生まれるものばかりではないのです。

スライド16

例えば、大阪地震(2018年)が発生したときは、階段の影を「地震でヒビが入った」と勘違いする人が続出しました。もともとあった影を、地震による損壊と勘違いしたわけです。地震直後で動揺していた人も多かったのでしょう。

結果として、意図せずデマをバラ撒くことになってしまいました。

また、コロナ禍では、感染症と5Gを結びつける人が続出しました。

スライド18

一切関係のないことを、あたかもコロナ流行の原因と決めつけてしまうのは一見不思議に思うかもしれません。ただ驚くべきことに、支持する人は少なくありませんでした。きっと、今も信じている人がたくさんいます。

このように、1つの事象から突飛な結論を導き出すことで、陰謀論につながるケースがあります。以前noteにまとめたので読んでみてください。

誰もが「私こそ正しい」と考えている

FacebookやTwitterにあるコメント欄。これを見ると、同じ意見を持った人がたくさんいるように錯覚します。

スライド30

まるで閉鎖空間で声が反響して聞こえるように錯覚することから、これをエコーチェンバー現象と言います。

仮に誤った事実だとしても、人は群がることでそれを信じてしまう。その結果、当たり前の知識が人によって違う事象が起こります。

また、こうして獲得した知識を、安易に否定してしまうと、かえって逆効果になるという言説もあります(バックファイア)。

スライド31

(参考)
母親がコロナ陰謀論者になるまで――あるイギリス家族の話
https://www.bbc.com/japanese/video-54687302
陰謀論と新型コロナウイルス、言い争わないように話すには?
https://www.youtube.com/watch?v=eicfhELZDrk

デマを見分ける自信がある人ほど拡散してしまう

もし「私はデマを見分ける自信があるから大丈夫だ」と信じていたら、それは危険な徴候かもしれません。

自分の考えを過剰に信用してしまう人ほど、拡散に加担してしまうケースがあるからです。

画像16

日本におけるフェイクニュースの実態等に関する調査研究ユーザのフェイクニュースに対する意識調査

また、そもそも事実とデマを二分できない場合が多いです。

スライド34

人は間違いを繰り返す生き物です。自分のことも、他人のことも、過信は禁物。だからこそ、すぐに結論付けたり、簡単に断定したりしない習慣を身につけたいですね。

「責任者不在のデマ」 

些細な一言が、バタフライエフェクトのようにデマに発展するケースもよく見られました。

スライド20

曲解、誤解、不正確な理解、それが過ちの伝言ゲームを巻き起こし、最初の情報から姿を変えてしまう例。ネタで書いたものが、デマに発展する場合もあります。

このパターンの厄介なところは、誰もが無自覚のうちに、デマ醸成に加担してしまうことです。あなたも、知らない間にデマに加担しているかもしれません。

まとめ: 決して簡単ではないデマ撲滅

スライド36

①デマに注意しましょうには限界がある
「デマを投稿しないよう心がけよう」や「デマを見抜くスキルを身につけましょう」には明らかに限界があります。投稿や拡散を踏みとどまる人は、客観的かつ中立的に置かれた状況を判断できる人です。コロナ禍や災害時などの精神的に不安定な状況下で、一体どれくらいの人が適切に対処できるでしょうか。もはや一種の「高等スキル」と捉えるほうが良いのでは。
②デマ投稿者を罰すればいいわけではない
意図的にデマを流す例はもちろんダメですが、正義感から誤情報を投稿してしまうケースや、勘違いから生じるデマ、閉鎖コミュニティで得た情報を「私が知っている真実」として投稿してしまう例などがあります。注目すべきは、いずれの場合も、各ユーザが事実であると信じて投稿している点。彼らは加害者であり、被害者でもあります。
③人間はアテにならない
先の見えないコロナ禍では、多くの人が都合のいい情報ばかりに耳を傾け、都合よく情報を解釈してしまいました。その結果、たくさんのデマや不正確な情報が飛び交うことに。自分は大丈夫だと信じる人ほど、フェイクを拡散してしまうデータもあります。もう、人間をアテにしてはいけません。
④デマは永遠に根絶不可能
伝言ゲーム式にデマへと発展してしまう例は少なくありません。コロナや災害時など、不安や曖昧な状況下では、デマが自然発生するリスクはさらに高まります。人と人がつながる以上、社会はずっとデマと隣り合わせ。もし、故意にデマを流す人を撲滅できたとしても、デマ自体は撲滅不可能です。

「じゃあどうすればいいんだよ」と言われそうだけど…

スライド37

デマは消えない、なくならない。こう書くと、「悪化していくのをただ傍観するしかないのか」と感じるかもしれません。でも、そうではないと思うのです。

いま考えるべきは、「デマをいかにコントロールするか」ではなく、「正しい情報をいかに広めるか?」ではないでしょうか。デマが拡散されてしまうことはコントロールできないけれど、正しい情報を広めることはコントロールできるからです。

では、どのように広めるか。その有効な手段に情報デザインがあります。詳細については、過去のnoteを参照してみてください。

参考: 人間の「認知バグ」を題材に書いたエントリ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?