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ブル・マスケライト《仮面の血筋》100ページ小説No.8


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前回までのあらすじ…

鍵をにじる水口先生がようやく学校へ現れる。
ここから福良先生と水口先生の関係と主人公たちばなの仮面について重要な過去を知らされることになる。


「わりいが先生は今、仮面が見えてないんだ!」

「「「「??えっえっ??」」」」
「つまりたちばなの仮面を外してあげる事は出来ない!そう言う事だ!」
「????」
「先生、でも私の家に来た時、先生わたしのを外してくれましたよね?」
あわナミが聞いた。
「確かにあの時は俺が外した。でも今は見えていない。実はこの休んでる間に外れたんだ」
驚いた。驚きと深いショックに僕は打ちひしがれた。その様子を見ながら先生は話を続ける。
「正確に言えば外されたんだ!あいつらに!もちろんそのおかげで今お前達の顔が見えるが…。皆んな可愛い顔してるな。そういう事だ。悪いなたちばな」
先生が僕の方を向いて言った。なにも言い返す言葉はなかった。さらに先生が話を続ける。
「この仮面の話は歴史がある。それは先生達が高校生の時にまでさかのぼる。まずはそこから話していこう。時間はたっぷりとってあるから安心してくれ」
確かに今は授業中。だから周りを気にしないでいい美術室を選んだんだ。ようやく状況を掴めた。ちょうどその時、福良先生も入ってきた。ゆっくりと歩きながら椅子を持ち水口先生の隣へ座った。その様子を見てから水口先生が過去の話を教えてくれた…

 「俺と福良先生はお前達4人と同じ、ここ私立上野ヶ丘高校の生徒だった。高校2年の二人は同級生で同じクラス。しかし当時の福良先生はメガネを掛けていてあまり人と話すタイプではなかった。今の栗原、お前にそっくりだ。そこで事件は起きる。そう10月31日のあの日から…」
 「学校だったその日にクラス全員が仮面に見えた。そして他に見えてる人を探した。そこには「5人」いた。もちろんその中の2人が俺と福良だ。5人は話し合ってこの仮面について調べることにした。まずはどうしてこの学校の俺達だけなのかを。そしてある場所に辿り着いた。それはこの学校の図書室。そこで俺達はあるものに出会った…」
「それが『マスケラの招待状』だった」
「そこには仮面が見えるものが名前を呼べば外せると書いてあったがしかし俺達は直ぐに仕組みに気がついた」

『順番に呼んでいけば最後の一人が残され外せれない…と』

 「それでも一度は呼んで見ないと本当か分からない。そこで5人の中の3人が女子だったから女子の名前を呼ぶことにした。俺は福良の名前を呼び、招待状通り仮面が外れた。そしてもう一人も呼んで外れた。だが、最後の一人の「都しずく」と言う彼女だけは違った…。その子の名前を呼んだが何故か外せれなかった。俺達は守るからと励ましてたが彼女は深くショックを受け、ある日…学校へ来なくなってしまった。それから会うことはなかった。そのことに俺達も傷ついた。そして俺はもう一人の男子と話し合い、あることを決めた…
水口先生が黙り込んだ…。ここで直ぐに隣にいた福良先生が話し出した…
「そこから2人は仮面の生活を選んでるの…その一人が水口先生よ。私は水口先生に助けられたのに…あの日からほんの昨日の日まで…ごめんなさい…先生…」
福良先生が泣いた…。水口先生がそっと肩に手を当て静かに抱き寄せている。福良先生は水口先生に対しずっと罪悪感を持っていたんだろう。突然の仮面のせいで…。この話を聞いてた僕達も、ほぼ同じ境遇に共感し深い悲しみに包まれた。
「だが話はここからだ。よく聞いて欲しい。この5人のうち「女子」が3人で一人は福良先生。もう一人はいなくなった女性。そしてもう一人が…たちばな、お前の母だ
「えっ?母さんが?」
「そう。お前の母さんはもう一人の男子に仮面を外してもらった。その男子のために一生尽くすと決め結婚をした。その後お前を産んだ…つまりもう一人の男子は…」

『お前のお父さんなんだ…』

「????」
「父さんまで…?」
「俺とお前の父はあの女子を探し外すまで仮面生活でいると約束した。しかし俺はもう外れてしまった…。せめてお前のだけでも外してやりたかった」
「じゃあ父さんは…もしかして…」
「そう、今もお前と同じ仮面のままだ。お前が赤ん坊の時もずっとだ…」
それを聞いて涙が溢れてきた。止まらなかった。感情が話のスケールに追いついていけなかった…
「嘘だ…俺はただ普通の家庭だと思って過ごしてたのに…。何で気付かなかったんだ。なら俺も弟の顔も未だに父は知らないってこと…。そんな生活聞いたことあるか?そんな生活できる人間なんていないだろ。こんなの嘘としか思えない。しかもそれを俺に気づかせないように自然に振る舞ってきたなんて…」
父の愛の深さと悲しみに全ての感情が同時に溢れかえりコントロールを失った。涙を流したまま僕は天を仰いだ。そんな自を見つめ皆んなは何も言わずにただ涙を流し見ているだけだった。福良先生だけが立ち上がり俺を抱きしめながらこう言った…。
「これが招待状でいう『上流とは血筋』の意味です。仮面が見えている人、つまり、たちばな君のお父さんの子孫の事です。このことを私達は知りあなた達が仮面に出会うのをある意味で待っていました。全てを伝える為に」
福良先生が僕を見つめ椅子に戻った。そしてまた静かに話し出す。
「これでここにいる皆さんはこの仮面の歴史に触れてくれたと思います。もちろん未だにたちばな君とお父さんは仮面のままです。1日でも早く外してあげたい。私達は仮面を終わらせる為に今まで研究し奮闘してきました。最初は私達だけの問題でしたが今はこの仮面の世界そのものを終わらせようと動いています。よろしければ皆さんも協力して貰えますか?」
もちろん4人全員が頷いた。それを見て水口先生が言ってくれた。
「とりあえず一旦話は終わりだ!すこし休憩しててくれ。まだここに居ていいから」
そういうと僕の肩に手を当て水口先生は出て行った。僕はなんだか全身のちからが抜けるような感覚で疲れ果てていた。
「たちばな大丈夫か?凄いお父さんだな。人のために自分を犠牲になんて普通じゃあできないよ。でもそんな父の息子として生まれたお前も俺は尊敬してんだ。俺がいじめられてた時も一人かばってくれたし…。こうやって未だに俺と一緒にいてくれてるんだ。お前がいなかったら俺は…。頼むから元気出してくれ」
泣きながらブッダが言った。栗原もあわナミも泣いていた。俺は深呼吸をして落ち着いてから返した。
「ああ、もう大丈夫。ありがとう、皆んな」
福良先生が微笑んでる。
「昨日からごめんなさい、辛い話ばかりして。昨日はたちばな君の意思で栗原さんを助けたでしょ?お父さんから息子の意思で決めさせて下さいって伝言があったの。でもすぐに自ら辛い方を選択した。お父さんも喜ぶと思う。自分の息子だからきっとわかってたと思うけど。だってそっくりだから高校生の時のお父さんと今のあなたは」
福良先生が言ってくれた。あんな凄い父と一緒なんだと言ってもらうと少しだけ自信になった気がしたが感情の行き先がまだ分からずにいる。そこへ水口先生が戻ってきた。
「はい差し入れ〜。皆んな手出してー」
そういうとビニール袋から温かい飲み物を一人ずつ配ってくれた。
「さっき来る時にコンビニで買っといたんだ。皆んな飲んでくれ。はい、たちばなも」
先生はなぜか僕にだけ缶コーヒーを渡した…
「わぁぁぁぁ!びっくりした!」
「気づいたか。俺も最初は驚いたんだ。ロゴが仮面に見えるからちょっとだけたちばなにいたずらしようと思って。これだけじゃないぞ。あのチキンのチェーン店あるだろ?あのロゴもそうだし宅配のアレもだ!こういうのまだまだあるから今のうちにならしとけなー」
そういいながら皆んなと同じお茶と交換し渡してくれた。そしてそのまま水口先生が話し出す。
「まぁ飲みながら聞いてくれ。実はこの時期に仮面が見えるようになるのはお前達だけじゃないんだ。そこがまた問題なんだ。そしてわざと仮面が見える人物を増やそうとしてる組織がある。しかもそれだけではない!その組織は『自分達以外の仮面の見えてる人を排除しようともしている』その証拠に昨日俺は誰かに仮面を外された。俺と福良先生は今調査している所だ。一応たちばなもあまり外を出歩かないように」
「分かりました」
「来週にでも皆んなに結果を報告する。ただそれまでに皆んなには探して欲しいことがある…」
そう言うと水口先生はある物を見せてくれた。それは一冊の表紙もくすんだ古い本だった。
「この本はいなくなった同級生、都のぞみが持っていた本だ。そしてこの本を書いたのが都武(みやこたけし)その子の父だ。父は脳科学者で天文学者でもありいくつもの本を出していた。もちろんこれはたくさんあるうちの一つだが彼女は肌み離さなさずいつも持っていた。つまり彼女への手掛かり。これを皆んなにも呼んで欲しい」
そう言うと栗原に本を渡した。
「分かりました。大切にします」
「それと今、たちばなの父が都武の研究所に行ってくれている」
「??父さんが?」
父が珍しく出張って言ってた本当の理由はそういうことだったのか。
「いずれお父さんの方からも皆んなに話してもらう機会を作るから」
ここであわナミが話をまとめてくれた。
「じゃあ先生の二人がその組織を調査して、たちばなのお父さんがいなくなった人の父に会いに行ってるんですね。そして私達は本を調査する。それが仮面の意味と仮面の世界を終わらせる手助けになる。こういう事ですか?」
「そういうことだ」
「でもまだたちばな君とお父さんはまだ仮面が見えててお父さんはその女性を外すために動いてるから、きっとそれまでは仮面の生活をやめない。でもたちばな君は違う。今すぐにでも仮面を外したいのにその組織から無理矢理外されるのは良くないってこと?おかしいよ、そんなの…」
栗原が僕の代わりに言ってくれた。
仮面を外すという事にもう一つ何か意味があるんだ。そうでないと俺を狙うのはおかしい。奴らは集団で俺を囲い、その中の一人が俺の名前を呼び仮面を外した。そしてそいつらの顔は「奇妙な面」で顔を隠し見たこともない知らない奴だった。今、分かってるのはそれだけだ。とにかく来週までに情報を掴む。それまでたちばなは警戒しててくれ。皆んなもたちばなを頼む」
先生達から仮面の説明が増えるほど僕自信の複雑さは増えていく。もう4人が危険と恐怖に巻き込まれているのは全員気が付いているようだった。
「今日はこれで。とりあえずはまた来週に集まろう。何かあったらいつでも先生に連絡してくれ」
先生は携帯の番号を教えてくれた。僕達4人もその場でグループメールを作り教室へ戻った。

 教室に着くとちょうど2時間目が始まる前だ。僕達は先生の手伝いという事で何となく皆んなにごまかした。ここ最近は授業どころでは無い。自分の席でまた一人頭を整理する事にした。
 今のところ仮面の歴史は父母と水口先生、福良先生が今の僕と同じ歳から始まった。つまり約20年前の話だ。そこまで父と水口先生は仮面生活を耐えてきた。そう思うと僕のこの4日間何て比べ物にならないんだ。そう思いながらも結局水口先生に外してもらうことはできなくなったことを悔やんでいた。しかし今残された方法は「父に外してもらうか例の組織に外されるもしくは見えている人を探す」の3択しか無い…。他にもこの時期に仮面が見える人がいるとも言っていた。じゃあ組織に外される前にその人を探し出せば選択肢は増える。でもどうやって…。そうだ!
 マスケラの招待状によれば僕は上流で自分に関わるかもしくは今後関わる人が仮面に見えると書いてあった。じゃあ僕が見てる仮面の人は大きく分けても2種類!そして僕が知らない人で仮面ならその人は、
「仮面が見えてる可能性がある」
外にはなるべく出歩くなと言われてる今、この学校で探すのがベストだ。なら同級生はほぼ知っている人と考えて、17歳にまだなってない一個下はあり得ない。つまり、
「一個上の先輩の中に仮面を知っている人がいる」
探す必要があるな。昼休みにブッダを連れて3階へ調査だ!とりあえずグループメールに送信する。
[昼休みは女子と男子で二手に分かれる。女子は本の調査、男子は3階へ仮面が見えている人を探しに行く。皆んなの協力を頼む]
授業中にも関わらず直ぐに返信が来た。
[了解!][了解です!]「OKだぜ!]
そして昼休みを待った。

 予定通り僕とブッダは3階の先輩達がいる廊下に行った。二人とも少し緊張した。先輩達の中で関わった人といえば小中学のときに部活でお世話になった10人くらいと近所の先輩とその友達くらいだ。女子はまず面識がないが先輩の知り合いを含めてもそんなにいない。あとはブッダに顔を見てもらって知らない人で仮面があればその人に接触を試みる。とにかく廊下から教室を覗く事にした。
 先輩のクラスは3クラスあり大体1クラス30人程度だ。まずは1組だ。僕は仮面の人を探し教室中を見渡した…。大体8人くらいた。もちろん仮面の為顔は分からない。そこで一人ずつブッダに誰かを聞き照らし合わせる地道な方法だ。
「ブッダ、あの窓側から3列目の椅子に片足乗せてる人は?」
「あれは中学んときの村田先輩、ほらバスケ部の」
「そうか。じゃあ女子行こうか?あの真ん中辺の人で一番髪が長くて脚の長いあの人は?」
「どれだ?ああ、あの人は林のお姉さんだよ。あいつに似合わず、すげ〜綺麗だよな〜全く兄弟とは思えん!俺にもあんな姉ちゃんいたら幸せなのに…」
「なんだ、林の姉か。じゃあ次行くぞー」
そう言って教室を見渡した。すると俺達に気付いて廊下にいた女子二人が向かってきた。
「ちょっと〜アンタたち何覗いてんの〜?誰かを探してるの?」
「あっ、いやちょっと」
「ふーん、よく見ると可愛いねぇー。ねぇ一個下?名前は?」
「あっはい!袴田文太と言います!趣味は映画鑑賞で最近は少し料理を…」
「アンタじゃなくて…こっちの君は?」
「あっ、たちばなと言います」
「ふーん。わたし清水。で、こっちがみやこ。また遊びに来てよ!」
「ヨロシクねぇー。年下って嫌いじゃないわ」
二人はそのまま1組の教室へ入ってチラチラとこちらの様子を見てるようだ。
「うわー!一個上のお姉さんに話しかけられたー。どうしようどうしよう!」
僕も少しドキっとしたがどうやらブッダは胸キュンのようだ。明らかに初めて会う人だがやはり二人とも仮面だった。特徴といえば肌が日に焼けて小麦色をしてた。夏に海にでも行ったのだろう。それより名前がみやこって言ってた。もしかして都しずくの…。そう考えていると廊下で黄色い声援が聞こえてきた。廊下の向こうで女子の人だかりがあった。3組の前だ。ブッダはまだ教室の二人を眺めている。
「おい、行くぞ!」
そう言って僕はブッダの腕を掴み3組の前まで走った。そして女子の合間を縫って教室を覗いた。
「いた!」
金髪の仮面、転校生だ!


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