小川内初枝

太宰治賞を受賞後、筑摩書房・小学館・角川書店・光文社から小説作品を刊行。その後、何年も…

小川内初枝

太宰治賞を受賞後、筑摩書房・小学館・角川書店・光文社から小説作品を刊行。その後、何年も文筆業からは遠ざかっている。ここでは映画の感想(ネタバレあり)を書いていきます。2021年9月初投稿、どうぞよろしく。 http://blog.livedoor.jp/jackpot0411/

最近の記事

映画「流浪の月」感想

2022年、日本。 監督/李相日 出演/広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 多部未華子 ほか ネット上のレビューを見ると、「原作(凪良ゆうの同名小説)のほうが良い」という声が結構ありますが、原作未読の私はこの作品、本当に見応えがありました。原作小説のほうがさらに良いというなら、それも読んでみたいと興味をそそられる作品でした。 以下、yahoo!映画の紹介文を引用。 「雨の公園で、10歳の少女・家内更紗がびしょ濡れになっているのを目にした19歳の大学生・佐伯文。更紗に傘を差し出し

    • 映画「ハッチングー孵化ー」感想

      2022年、フィンランド。 監督/ハンナ・ベルイホルム 出演/シーリ・ソラリンナ ソフィア・ヘイッキラ ヤニ・ヴォラネン レイノ・ノルディン ほか 「北欧発のイノセント・ホラー」とのことで、イノセント・ホラーの確たる定義は知りませんが、ホラーが大の苦手である私が、"イノセント"の響きに多少安心して観る勇気を出し(内容にはとても興味があったので怖くても観たかったんですよね)、最後まで観ることができました。 以下、yahoo!映画の紹介文を引用。 「北欧フィンランドのとある街

      • 映画「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」感想

        2019年、フランス。 監督/フィリッポ・メネゲッティ 出演/バルバラ・スコヴァ マルティーヌ・シュバリエほか フランス郊外の古いアパート。その最上階の向かい合う二つの部屋。住人である70代の女性、マドレーヌとニナは20年来の恋人どうし。 夫と死に別れ、娘と息子とつかず離れずの距離を保ちながら暮らすマドレーヌ。ずっと独身のニナ。二人はアパートでの静かな暮らしを楽しみながらも、部屋を売り払ってローマで共に暮らすことを計画している。そのことを子どもたちに話すようにマドレーヌに迫

        • 映画「見わたすかぎり人生」感想

          2008年、イタリア。 監督/パオロ・ヴィルズィ 出演/イザベラ・ラゴネーゼ サブリナ・フェリッリ エリオ・ジェルマーノ他 教授陣の賛辞をほしいままに優秀な成績で哲学科を卒業した女子大生、マルタ。美人だし、こりゃ前途洋々だなと思っていたら、日本以上に厳しいのではないかと思われるイタリアの就職事情。母親は長期入院、恋人は海外へ。それでもマルタは弱音も吐かずへこたれず、懸命に職探しをし、ようやく仕事を見つけます。 それは、ベビーシッターとパートタイムのテレフォンアポインター。

        映画「流浪の月」感想

          映画「シラノ」感想

          2021年、イギリス・アメリカ。 監督/ジョー・ライト 出演/ピーター・ディンクレイジ ヘイリー・ベネット ケルヴィン・ハリソン・jr. 他 エリカ・シュミット脚本によるミュージカル映画であり、1897年のエドモン・ロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を原作としたシュミットの2018年の舞台ミュージカルを基としています。 舞台は17世紀のフランス。 シラノは軍きっての剣豪でありまた詩人でもあるが、自らの容貌に自信がなく、古くから知るロクサーヌへの恋心を打ち明ける勇

          映画「シラノ」感想

          映画「メッセージ」感想

          2016年、アメリカ 監督/ドゥニ・ヴィルヌーブ 出演/エイミー・アダムス ジェレミー・レナー 他 「DUNE」つながりで、同じドゥニ・ヴィルヌーブ監督の作品を。 原作はテッド・チャンの短編SF小説『あなたの人生の物語』。 ある日突然、全世界の計12地点にやってきた巨大宇宙船。 表面は泥の塊のよう、ミドリムシのような妙な形で、縦長な状態で地表すれすれのところに浮かんでいる。 各国はその巨大宇宙船の中にいるエイリアンとの接触を試みる。 アメリカでは、軍の主導により、専門と

          映画「メッセージ」感想

          映画「DUNE/デューン 砂の惑星」感想

          2021年、アメリカ。 監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演/ティモテ・シャラメ レベッカ・ファーガソン オスカー・アイザックほか 先日のアカデミー賞では6部門で受賞していましたね。 以下、シネマトゥディのあらすじを引用。 『人類が地球以外の惑星に移り住み宇宙帝国を築いた未来。皇帝の命により、抗老化作用のある秘薬「メランジ」が生産される砂の惑星デューンを統治することになったレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティ

          映画「DUNE/デューン 砂の惑星」感想

          映画「ドライブ・マイ・カー」感想

          2021年、日本。 監督/濱口竜介 出演/西島秀俊 岡田将生 霧島れいか 三浦透子 他 さすが村上春樹原作の作品。上映が始まるまで、周囲のハルキストたちは文庫本を熱心に読み込んでいました。 ちなみに私はハルキストではありません。村上作品で読んだものは数えるほど。だからなのかな、難解というのか、理解が及ばないシーンがところどころありました。 テアトル梅田の紹介文を以下に。 「舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音

          映画「ドライブ・マイ・カー」感想

          映画「夏時間」感想

          2019年、韓国。 監督/ユン・ダンビ 出演/チェ・ジョンウン パク・スンジュンほか 以下、公式サイトから紹介文を引用。 「夏休みのある日、10代の少女オクジュは、父が事業に失敗したため、弟ドンジュと父と共に広い庭のある祖父の家に引っ越したが、そこに母親の姿はなかった。弟は新しい環境にすぐ馴染んだが、オクジュは居心地の悪さを感じている。そこに離婚寸前の叔母まで住みつき始め、一つ屋根の下に三世代が集まり、オクジュにとって、自分と家族の在り方を考えざるを得ない、夏の日々が始まっ

          映画「夏時間」感想

          映画「バグダッド・カフェ」感想

          1987年、ドイツ(旧・西ドイツ)。 監督/パーシー・アドロン 出演/マリアンネ・ゼーゲブレヒト CCH・パウンダー 他 アメリカはラスベガス近郊、モハーヴェ砂漠に佇むモーテル兼カフェ兼ガソリン・スタンド、バグダッド・カフェ。 寂れたと形容するよりは、もはやボロボロといっていいそのカフェの女主人、黒人のブレンダはいつもイライラして家族や客に当たり散らしている。そこに現れた太った女、ドイツ人旅行者のジャスミン。彼女は激しい夫婦喧嘩の末、夫の車から降り、重い荷物を下げてようやく

          映画「バグダッド・カフェ」感想

          映画「ノマドランド」感想

          2021年、アメリカ。 監督/クロエ・ジャオ 出演/フランシス・マクドーマンド ピーター・スピアーズ他 原作はジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者たち」。数々の映画賞を受賞した作品です。 主演のフランシス・マクドーマンド、これまでに演劇の三冠といわれるアカデミー賞、トニー賞、エミー賞を受賞された役者さんですが私は恥ずかしながら全く見覚えがなく、予備知識もなく観始めたので、「もしかしてこの主演の女性は本当のノマド労働者なのかしら」などと思いながら

          映画「ノマドランド」感想

          映画「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」感想

          2018年、フランス・ベルギー。 監督/フランソワ・オゾン 出演/メルヴィル・プポー ドゥニ・メノーシェ スワン・アルロー ほか フランス全土に衝撃を与えた“プレナ神父事件”を扱った作品です。 フランス本国では2019年2月に公開され、ほぼ同時期にプレナ神父の裁判も始まったらしい。 カトリックの聖職者プレナが長年に渡って犯してきた少年への性的暴行。その被害者は80人以上ともいわれており、犯罪初期から実態を把握していた教会上層部が事実を隠蔽しプレナ神父を野放しにしていたことも

          映画「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」感想

          映画「存在のない子供たち」感想

          2018年、レバノン。 監督/ナディーン・ラバキー 出演/ゼイン・アル・ラフィーアほか 中東の貧民街で暮らす12歳のゼイン。両親は家でうだうだしているだけ、長男のゼインが幼い弟や妹たちを連れ路上で物売りをして生活費を稼いでいる。 すぐ下の妹サハルが、歳のはなれた男のもとへ嫁がされることになった。泣いて嫌がるサハル。必死で嫁入りを止めようとするゼイン。だが、サハルは無理やり連れていかれてしまった。 家を飛び出したゼインは、遊園地で掃除婦をするエチオピア難民の女性ラヒルと知り合

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          映画「ホテル・ルワンダ」感想

          2004年、英・伊・南アフリカ共和国合作 監督/テリー・ジョージ 出演/ドン・チードル ソフィー・オコネドー ジャン・レノ ほか まずはこの映画の背景となるルワンダ紛争について。 アフリカ大陸中部に位置するルワンダには、もともとフツ族とツチ族という部族があり、少数派のツチ族のほうが少しだけ裕福だという違いはあるものの、両者は共存していた。第一次大戦後はベルギーの植民地となり、そのベルギーによって、ツチがフツを支配するという間接支配体制が作られ、ツチとフツは対立するようになっ

          映画「ホテル・ルワンダ」感想

          映画「アイダよ、何処へ?」感想

          2020年、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェー、トルコ合作 監督/ヤスミラ・ジュバニッチ 出演/ヤスナ・ジュリチッチ、イズディン・バイロヴィッチ ほか 1995年、夏。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争のさなか、8000人もの住民が虐殺された“スレブレニツァの虐殺”を題材にした作品です。 まず、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争について。 ボスニア・ヘルツェゴビナが東欧ユーゴスラビアから独立した際、当時、同国にはボ

          映画「アイダよ、何処へ?」感想

          映画「モロッコ、彼女たちの朝」感想

          2019年、モロッコ・フランス・ベルギー合作。 監督/マリヤム・トゥザニ 出演/ルブナ・アザバル ニスリン・エラディ ほか 舞台は北アフリカ、モロッコ最大の都市カサブランカの旧市街。時代はいつ頃だろう…はっきりと明示されてはいなかったと思うのですが、まだ若そうな女性監督の実際の経験に基づいたお話らしいので、現代ではあるのでしょう。ただ、古めかしいカセットデッキや、建物の屋上からの場末感たっぷりのくすんだ風景など全体にひと昔前といった雰囲気が漂います。 モロッコって私のイメー

          映画「モロッコ、彼女たちの朝」感想