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映画「流浪の月」感想
2022年、日本。
監督/李相日
出演/広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 多部未華子 ほか
ネット上のレビューを見ると、「原作(凪良ゆうの同名小説)のほうが良い」という声が結構ありますが、原作未読の私はこの作品、本当に見応えがありました。原作小説のほうがさらに良いというなら、それも読んでみたいと興味をそそられる作品でした。
以下、yahoo!映画の紹介文を引用。
「雨の公園で、10歳の少女・家内更紗がびしょ濡れになっているのを目にした19歳の大学生・佐伯文。更紗に傘を差し出した文は、引き取られている伯母の家に帰りたくないという彼女の気持ちを知り、自分の部屋に入れる。そのまま更紗は文のもとで2か月を過ごし、そのことで文は誘拐犯として逮捕されてしまう。被害女児、加害者というらく印を押された更紗と文は、15年後に思わぬ再会を果たす。」
更紗が伯母の家に帰りたくない理由は、そこにいる中学生の息子が夜ごと更紗の部屋に来て彼女の体を触るから。毎夜泣いていた更紗は、文の家で生き返ったように伸びやかに過ごします。
文は、きちんとしすぎる立ち居振る舞いに思わず違和感を感じるほどの物静かな大学生。松坂桃李の演技が、何か内に秘めたものをじわりと感じさせます。
大人になった更紗にも文にも、傷ついた子どものまま歳を重ねるしかなかった痛み・孤独感・諦念めいたものを感じます。
だけど二人ともに、他人を真摯に思いやる気持ちを持った、自立した強い大人なのです。
この、相反するように見えて実は充分に成り立ちうる人格描写を、松坂桃李も広瀬すずも的確に表現されていたと思います。とても素敵でした。
そしてそんな二人が寄り添って生きていくことを決意した時、ようやくほっと息のつける「家」が見つかったのだと思います。
加えて、更紗の恋人役の横浜流星も熱演でした。子どもの頃に母親に捨てられ、見捨てられる恐怖に支配されるがゆえに暴力で恋人をつなぎとめようとするエキセントリックなクズ男なのですが、更紗の強い心を前にしてボロボロと崩れゆく様が本当に切なかった。
監督は、私の大好きな「悪人」や「怒り」を撮られた方ですね。本作もほんと良かったです。