麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino

草葉の陰の物書きモドキです。ジャンル不明の自由形。主に小説、エッセイは時々。習性上、一…

麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino

草葉の陰の物書きモドキです。ジャンル不明の自由形。主に小説、エッセイは時々。習性上、一句詠みます。作品と今後の予定については『お知らせ&お品書き』マガジンでどうぞ。お問い合わせはこちらから: m.international.jp@gmail.com

マガジン

  • 短編小説『森のアコーディオン弾き』麗野鳩子

    洞窟から大きないびきが聞こえてきて、森は不穏なうわさでもちきりになります。

  • お知らせ&お品書き

    小説投稿のお知らせや、お品書き(作品紹介)などです。 作品については、最新のお品書きをご参照下さい。

  • あの山 この山 よも山ばなし(旧筆後感想文)

    小説執筆にまつわるよもやまです。 筆後感想文として投稿していましたが、呼び名が変わっただけで暑苦しさは引き続きます。 作者の見解などあまり読まないほうがいいような気もするので一部有料です。

  • 短編小説『ルチアーノ -白い尾のオナガ-』麗野鳩子

    尾羽が白いオナガのルチアーノ。 尾羽を青くする方法を探しに旅に出ますが・・・・・・。 レトロでイタリアンな作品になったと思います。 (全10回、約10,300字)

  • 『倒木』三部作

    『丘の上に吹く風』の『あとがきにかえて』として投稿した詩『倒木』から生まれた短編小説を含む三部作です。 1.詩『倒木』 2.短編小説『六本木倒木事件』 3.短編小説『七人目の侍』

最近の記事

【短編小説 森のアコーディオン弾き 2】声の主

2.声の主足元にまとわりつく湿った冷気を後ろ足ではらい、カルヴィーノはぶるりと震えた。 「ハルベルト、何か見える?」 「誰かいる。でも真っ暗で見えないよ」 ごつごつとした石の壁を伝って先を行くハルベルトの忍び声が返ってきた。 フーゴ フーゴ あの奇妙な音がこだました。 ハァ 溜息のような声が続き、驚いたハルベルトは壁からぽとりと落ちた。 「ハルベルト!」 カルヴィーノの甲高い声が響き渡った。 「誰だ?」 暗がりの奥から野太い声がした。 カルヴィーノは慌てて駆け寄って、

    • 【短編小説 森のアコーディオン弾き 1】不穏なうわさ

      1.不穏なうわさ森は不穏な噂で持ちきりだった。 ぽっかりと開けた野原の脇の洞穴から、大きないびきが聞こえてくるという。 洞窟にはかつて熊が住んでいたが、ここしばらくは空き家となっていた。 「一体誰が住み始めたの?」 「あんなに轟くいびきは聞いたことがない」 「あの洞穴に住むなんて大きい奴に決まっている」 動物達は口々に不安をこぼした。 困ったこともあった。 動物達はその場所を広場と呼び、大事な決めごとを話し合う会議場にしていただけでなく、あらゆる催しごとにも使っていた。 動

      • 【ちょっとお知らせ】作品紹介など

        まずは変更を加えた作品短編小説『八人目の侍』 倒木三部作の最後を飾るにふさわしい感動小編。 『七人目の侍』として書いたものに一章加え、タイトルも変更しました。 『さっさとクリスマス』 昨年末に投稿したクリスマスソングの後半にラップを書き足しました。 語尾のcyの部分はスィーと発音し、カッコ内の合いの手は、誰かに前のめり気味に入れてもらえば収まると思います。 続いて新作ショートショート『イバーランド』 二十歳前後の女の子がイバーランド目指して北に向かって歩いていくだ

        • 発表です(2024年6月吉日)

          開設されてから現在(2022年12月~2024年6月)までのトップ20です。 見えるもの(スキの数)からは見えてこないことが見えてきました。 まずは1~10位1位 ブックレビュー『The Creative Act: A Way of Being(Rick Rubin)』 ぶっちぎりの1位だった。 noteには本好きの人や何かしらのクリエイティブなことをしている人達が多く集うポータルだからだろうと思う。要は需要と供給がマッチしたということだ。 久々にアマゾンの本書のページにア

        【短編小説 森のアコーディオン弾き 2】声の主

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          13本
        • 『倒木』三部作
          4本
        • ショートショート
          5本

        記事

          おまけ② Propeller Throwing プロペラ飛ばし

          ルチアーノ、いよいよ森に到着かというところで今度はせわしない勢に出くわします。 紅葉したモミジが出てくるので、当初秋のシーンとして書きました。 ところが調べるとモミジの種は夏の間に収穫可能なようだったのでその辺を変更しました。 というわけで、プロペラ飛ばし張り切ってまいりましょう。 まだ読んでいない方。 本編はこちらから → 短編小説『ルチアーノ -白い尾のオナガ-』 おまけ①はこちらから → 『Treasure Hiding 宝かくし』 Propeller Throwi

          おまけ② Propeller Throwing プロペラ飛ばし

          おまけ① Treasure Hiding 宝かくし

          イワシと別れて岸に戻るルチアーノ。 別の海の生き物に遭遇し、なんとリア充ビームにやられそうになります。 けれど蓋を開けてみれば色々あるわけで。 まだ読んでいない方。 本編はこちらから → 短編小説『ルチアーノ -白い尾のオナガ-』 Treasure Hiding 宝かくし ルチアーノは岩場を目指して飛んだ。 イワシに聞いたばかりの尾羽を青くする方法を早く試したかった。 すると波間でまた何かがきらきら光った。 「今度は誰だろう?」 追いついて覗きこむと、三匹の大きな魚のよ

          おまけ① Treasure Hiding 宝かくし

          【ショートショート】イバーランド

          北へ北へと歩いた。南へ向かうより辛そうだからだ。ぬるま湯なんだから黙って浸かってろと言われ、今朝は水風呂に入ってきた。準備は万端だ。 道の右手にバラ園が見えてきた。確かにトゲはある。だけどあたしはそんなことじゃ満足しない。もっと茨の道じゃないと。 どれぐらい歩いただろうか。角を曲がると標識がみえた。常磐道、とある。はるか彼方に連なる二つの山も見える。間違いない。この道だ。このまま真っ直ぐ行けばいいんだ。 標識がみえた。県境、とある。もうすぐだ。 あたしは行くんだ。何もかもが辛

          【ショートショート】イバーランド

          【筆後感想文】『丘の上に吹いた風』を書いて

          感想文と言いながら説明と解説になっていました。 語り過ぎず手短かにし、感想もちゃんと書いてみようと思います。 この筆後感想文も含め、なぜあれこれ企画しているかというと孤高操業だからです。誰かがやってくれるわけじゃないんで。 筆後感想文はBehind the scenesの位置づけで始めました・・・・・・のような説明をしないと理解されないのかもしれませんが、この企画もいつしかフェードアウトするのか、あっさりと季節のご挨拶に吸収されるのか、どうなることやらです。 まずは感想要休

          【筆後感想文】『丘の上に吹いた風』を書いて

          季節のご挨拶2024 初春

          まずは初鳴き。 鳥の中にはオウムのように人の真似をするものもいればガビチョウのように他の鳥の鳴き真似をするものもいますから、鳩がウグイスの真似をしたっていいんじゃないかと思います。もしかしたらこれはサバイバルスキルなのかもしれないのですから。 音が結構響いているのは風呂場で録音したからです。 最後のピピョピは「起きて」ですので目覚まし代わりにご活用下さい。 皆様の清々しい朝の目覚めを願いつつ、今後も練習を続けてまいります。 春ですね。まずは花模様例年よりずいぶん早く吹き去っ

          季節のご挨拶2024 初春

          【短編小説 丘の上に吹いた風】あとがきにかえて(短歌)

          『地蔵菩薩』 つかの間と 錫杖にぎり 菓子に笑み 頬を伝うは 宝珠の涙 短編小説『丘の上に吹いた風』麗野鳩子|麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino|note 一作目『丘の上に吹く風』の続編です。 陽太と美月の旅はどこまで続くのでしょうか。

          【短編小説 丘の上に吹いた風】あとがきにかえて(短歌)

          【お知らせ】『丘の上に吹いた風』公開中

          表題の作品公開しました。 マガジンにしましたので是非どうぞ。 短編小説『丘の上に吹いた風』麗野鳩子麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino|note さて、投稿のタイミングが作品が自分から離れるタイミングで困ってます問題にぶつかっておりました。それもこれも|孤高操業がゆえかもしれませんが、そんなことを言っていてもしょうがないわけで、解決策として一旦有料で投稿して見直しが終わったら無料開放するという試みをしました。 見直し期間で作品自体が良くなったかはわかりません

          【お知らせ】『丘の上に吹いた風』公開中

          【短編小説 丘の上に吹いた風 エピローグ】次のページ

          エピローグ -次のページ- 大きく開いた窓のカーテンがはためいた。 風は部屋に吹き込むと、机の上の三年日記をぱらぱらとめくり始めた。 陽太が両親に残した手紙のページで一旦止まり、ゆっくりともう一ページめくった。 「ここに書けばいいんだね?」 風はうんとうなずいた。 ミカエルは背中の翼から取り出した羽ペンをさらさらと走らせた。 風は読んで嬉しそうにうなずいた。 一つ前のページに戻りそうになった。 風はふーっと吹いて押さえつけた。 また戻りそうになった。 風もまたふーっと吹い

          【短編小説 丘の上に吹いた風 エピローグ】次のページ

          【短編小説 丘の上に吹いた風 8】泣き笑い地蔵

          8.泣き笑い地蔵 話はあっという間に広まった。 三田が知った時には、静かな山間の集落はその話題で持ちきりだった。 お地蔵様もあの事件を悲しんでいるのだろうという近所の住人達の話を、全くの当て推量だと片付けられず、三田は薗と連れ立って時折地蔵堂を訪れるようになっていた。 話を聞いて訪れる者が増えたのか、地蔵堂の中は供え物でごった返していた。 「サンタ先生、お地蔵様今日も泣いてますね」 目を糸の様な月にして微笑む地蔵菩薩の両目から流れた涙は頬を伝い、丸い顎先からしたたって赤い前

          【短編小説 丘の上に吹いた風 8】泣き笑い地蔵

          【短編小説 丘の上に吹いた風 7】旅立ち

          7.旅立ち 「一服するから、ちと待っとれ」 ようやく戻ってきた地蔵菩薩に促され、陽太と美月は地蔵堂の前に座った。 せっかく水守が供えてくれたのだから無駄にはできんと、地蔵菩薩はピンクのすあまをびよんと伸ばして嚙みきり、茶で飲み下した。 「お地蔵様って、毎日ここにいなくて大丈夫なの?」 「陽太は心配性じゃな。水守が供え物を持ってくるのは週に一度じゃ。その時におれば何の問題もない。たまには餡のない菓子もいいものじゃのう」 地蔵菩薩はまた一口茶をすすり、ほうっと息をつくと、今度は

          【短編小説 丘の上に吹いた風 7】旅立ち

          【短編小説 丘の上に吹いた風 6】ドクター外中のおにぎり

          6.ドクター外中のおにぎり 婦長室のドアをノックすると、すぐにどうぞと返事が返ってきた。 袖山は書類に目を通していた婦長の前に座った。 「婦長、先日の件なんですけど」 「その件なら私も賛成です」 「それは心強い。僕からそれとなく話してみます」 「それとなく? 直球でいいと思いますよ、外中先生だいぶ鈍感なところがあるから。それで危うく結婚相手逃しそうになったじゃない? あの時はさすがに私も焦りましたよ」 「今回は大丈夫ですよ。なにしろ・・・・・・」 「そうですね、なにしろ・・

          【短編小説 丘の上に吹いた風 6】ドクター外中のおにぎり

          【短編小説 丘の上に吹いた風 5】友の行方

          5.友の行方 ホスピスの長く張り出した軒の上は、陽太の新しいお気に入りの場所になっていた。 生垣と栗の木の間にモグラが作った塚、すももの木に引っかかるセミの抜け殻、大きな実を一つだけつけた小さなレモンの木、どれもこれも軒下のデッキから見ていた頃には気づかなかったものだった。 陽太と美月はあれから何度も地蔵菩薩を訪ねたが、地蔵堂はいつ見ても空のままだった。 なかなか帰ってこない地蔵菩薩に不安になり始めた美月の気を紛らわせようと、陽太は何かないかと庭を見渡した。ついさっき紫陽花

          【短編小説 丘の上に吹いた風 5】友の行方