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#3 世界で1番早く「高齢化」が進む国、ニッポンに対して僕らができること

働きごこち研究所」という会社を経営している、藤野貴教(ふじのたかのり)と申します。人・組織の働きごこちを研究して、大企業や経営者向けの研修、採用コンサルティングをしています。今回は「働き手不足をテクノロジーで解決すること」についてご紹介します。“これからの働きかた”に興味がある人、大企業で働きづらさを感じている人、どうせ働くなら楽しく働きたい人に、ぜひ読んでいただけましたら嬉しいです。

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超高齢化社会のニッポンに求められるもの

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これからの働き方を考える上で欠かせないのは「テクノロジーの普及」です。その背景には、皆さんご存知の通り日本の社会課題のひとつ「超高齢社会」が関係しています。

高齢化の進捗具合を示す「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」の3つの言葉がありますが、違いを知っていますか。65歳以上の人口割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を越えると「超高齢社会」と言われています。

日本は1970年に高齢化社会に突入し、1994年に高齢社会に、2007年には超高齢社会になりました。2025年には65歳以上の人口割合は約30%と言われているほど、実は世界で1番高齢化が速く進む国なんです

言わずもがな15〜64歳の生産年齢人口の割合はどんどん減っていき、働き手は不足していきます。だからこそこの国は、テクノロジーを普及することが非常に急務なのです。ローソンは、レジに店員がいない状態で深夜営業をする(無人営業)ことを発表しました。続いて、セブン―イレブン・ジャパンやファミリーマートなど大手コンビニエンスストア5社も、2025年までにセルフレジを全店舗に導入することを発表しましたね。

世の中の流れは、確実にテクノロジー活用へと向かっています。ただし、キャッシュレスを例にあげてもまだ比率は20%と、十分な普及には至ってはいません。それは、技術・設備的に可能であれど、テクノロジーを日常的に活かす・使おうとする人々はまだまだ少ないからです。僕は、実はこれが1番の問題だと思っています。

なぜ、キャッシュレス決済が盛り上がっているのか

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「LINE」という会社を皆さんご存知ですよね。ゲームやスタンプの販売で順調に儲けを出し、2016年に見事上場。ですが2019年12月期第2四半期では、266億を越える赤字を発表されました。

そんな大幅赤字の要因は、LINE PAYの販促費です。話題になった「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」のマーケティング費用やプロモーション費用に、LINEは莫大な予算をかけたのです。

「キャッシュレス決済にする必要ないじゃん」「現金でも別に困らないじゃん」と思っている人は正直たくさんいると思います。そんな中でPayPay、メルペイ、楽天ペイなどあらゆる事業者はなぜそこまでキャッシュレスに力を入れるのだと思いますか。それは“働く人を楽にするから”だと私は思っています

こんな事例があります。名古屋駅のとある場所にあるのは、8席しかカウンターがない、こじんまりとしたラーメン屋さん。11時半~13時半まではおばちゃんがバイトで入っていて、それ以外はおじちゃん1人で回しています。

僕がラーメンを食べ終わってレジへ行くと、おじちゃんは手を止めてレジに来てくれます。僕は1,000円を渡し、310円のお釣りを受け取る。「ご馳走様でした!」と言って帰る僕を見送ったおじちゃんは、次に何をしなくてはいけないでしょうか。

そうです、「手を洗う」んです。また戻って、ラーメンの続きを作る。そして最後の客を見送った後は、残った現金を計算・管理をする。さらに翌日の開店前には、小銭のお釣りを切らさないように銀行に両替をしにいく。現金があるからこその手間が生じているのです。

最近そのお店はPayPayを導入しました。レジにQRコードが貼ってあります。「おじさんPayPay入れたんだ!」と言うと「入れた入れた!」と嬉しそう。僕はラーメンを食べ終わり、PayPayのアプリ画面を開いておじさんのところへ行きました。「690円と打ち込んだよ、これでいい?」「いいよ」(PayPay♫)って。

おじちゃんは手を動かしながら、金額を目視で確認してそのままラーメンを作っていました。開店前と閉店後の現金管理の手間もなくなり「非常に楽になった」と言っていました。これが“テクノロジーを利用して働き手を楽にする”ということです

我々が現金で支払えるのは、働き手が負荷を抱えながらも、現金を管理してくれるおかげです。キャッシュレス決済が普及すれば、その負荷を取り除き、楽にしてあげることができる。さらにいうと、超高齢社会による“働き手不足”という深刻な課題を解決する一手になりうるかもしれません。

正直、100億円キャンペーンの最中に、ポイントを得たいという利己的な視点でキャッシュレス決済に登録した人は多いと思います。最初はそれでいいかもしれません。ですが次は、「利他的なテクノロジー活用の視点」をぜひ持ってみてください。キャッシュレス決済を使うことで仕事を楽にする貢献へとつながるのだ、と。

もし仮に、超高齢社会でテクノロジーの普及が遅れたら

僕の家から車で15分のところに、イワシ料理がおいしい定食屋さんがあります。いつ訪ねても結構賑わっているお店です。ただ、ある日お店へいくと「辞めるんです」と告げられました。「いっぱいお客さんいたじゃないですか」と伝えると「もう、しんどいんですよ」と。
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家族経営で、日々の開店・閉店時の業務は体の負担が大きく、大変だったそうです。時を同じくして、昔からの個人店が数店舗消えていきました。困りましたよ。だって、おいしいお店だったんですから。

テクノロジーの普及が遅れた超高齢社会は、どうなると思いますか。僕は、ひとつには廃業するお店が増え、チェーン店しか見当たらない地域が生まれるかもしれない、と思っています。

チェーン店を否定するわけではありません。ただ、“この国の文化の豊かさ”は、多様なものが存在し、選択肢があるからこそ守られています。個人営業のお店で食べたい人、大戸屋で食べたい人、両者が選べる状態にあるからこそ「豊かだ」と感じながら生きられていると思うんです。

僕たちは15年後に、こう思うかもしれません。“世の中に同じようなお店しかなくなった”と。お金よりも選択肢がなくなるときにこそ、豊かさを失ったと感じると思います。僕はそんな未来をできればおこしたくはありません。

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今僕の子どもは小学生で3人いますが、彼らが大人になる15年後に、この世界の多様性、選択肢の豊かさをどれだけ残せるか。今40歳の自分として臨みたいテーマはこれに尽きます。

正直、会社を始めたばかりの頃はどう日々食っていくか、他社との競争は何かなどと考えていましたが、今となっては「自分の人生の時間を1番何に使うべきなのか」をよく考えています。10年後15年後の国のために、社会の豊かさのために、僕たちには何ができるでしょうか。社会の課題を解決できるよう、日々仕事に向き合えたらと思うばかりです。

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▶︎働きごこち研究所についてはこちら
http://www.hatarakigokochi.jp/
▶︎藤野貴教の書籍 『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』は、おかげさまで中国・台湾・韓国で翻訳されました。
https://www.amazon.co.jp/2020年人工知能時代-僕たちの幸せな働き方-藤野-貴教/dp/4761272546
藤野貴教 Fujino Takanori
株式会社働きごこち研究所 代表取締役 ワークスタイルクリエイター

2007年、株式会社働きごこち研究所を設立。「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援する傍、2015年より「テクノロジーの進化と人間の働き方の進化」をメイン研究領域としている。日本のビジネスパーソンのテクノロジーリテラシーを高め、人工知能時代のビジネスリーダーを育てることが志。グロービス経営大学院MBA取得。『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方(かんき出版)』を上梓。
執筆アシスタント : 水玉綾 Aya Mizutama
フリーランスの編集者・ライター
株式会社CRAZYにて人事担当として、2016年10月に採用広報を目的としたオウンドメディア「CRAZY MAGAZINE」を立ち上げ、2018年7月に独立。現在は外部広報として「CRAZY MAGAZINE」の編集長をする傍、DeNAの採用メディア「フルスイング」で企画編集や、「新R25」「未来を変えるプロジェクト」等のメディアにて働きかた・組織論を中心としたインタビュー・記事制作を担当。


2冊目の本書いていて、たまにやる気出すためのNote書きます。