人生を変えたバイト_ゲイナイト編

前回、オゾン・スパイラルで経験した箱貸しイベントのレズナイトの話をした。レズナイトでも教わった事がとても多かったが、今回はゲイナイトを話をしたいと思う。

レズナイトの投稿で強調しなかったが、こういった性的マイノリティの方のイベントでジェンダーフリー(レズナイトに男性も入れる、ゲイナイトに女性も入れる)という事は当時あまりなかった。16年前だ、今の時代のように性的マイノリティの方々への寛容さも、逆にそういった方々の場にマジョリティの人間が存在する事への寛容さも、今より全然なかったように思う。

レズナイト同様、ゲイナイトも当然だが男性スタッフ限定でオーガナイザーより指示があった。オゾン・スパイラルはこれまで書いてきた通りの多忙で普通では考えられないイレギュラーな仕事も多く、女性スタッフはほぼ皆無だったが、男性スタッフはそれなりに人数がいた。

ゲイナイトは、キャパの大きい箱のオゾンの方で開催されていて、VIPルームも使って、レズナイトより規模が大きかった。ただ、それぞれに男性スタッフを配置しても、余りある程だった。レズナイトとは逆で、キッチンに篭ったままで表に出ないのであればという理由で、女性スタッフが私を含めて2人だけ入っていた。


では、なぜゲイナイトの件を書けるのか。

ゲイナイトでもレズナイト同様、お酒がめちゃくちゃ出た。そして、VIPルームでホールを担当していた子が、たくさん飲まされて潰れて使い物にならなくなってしまった。その時まだイベント終了時間までに、3時間程あった。

社員さんは何を考えたが、いつもVIPルームを回していた女性スタッフの私に白羽の矢を立てて、潰れた子の代わりにホールを担当して欲しいと言った。私は「女は表に立っちゃダメなんじゃないですか?」と聞いたが、それも分かりつつ代替して誰かを立たせないといけないくらい店内は忙しかったようだ。確かにフードもめちゃくちゃ出ていた。

結果、社員さんは渋るオーガナイザーも説得して、私をVIPのホールに立たせた。私はその日また唐揚げとしか向き合っていなかったので、これから一体全体どんな世界に行くのだろう、とビビっていた。その空間で女性は私1人しかいない空間に今から行くのだ。

VIPルームは通常入場料とは別途お金を払ったお客さんが入場できる、スナックのような感じになっていた。いつものVIPルームの相棒のオカくんがバーにいて、着いた瞬間「ハタノ、、助けてくれ」と言われたので、どれだけ忙しいか察した。

イベント側のホール担当としていたゲイの方がとても優しくて、女の私を「一緒に頑張ろうね!」と快く受け入れてくれた事が唯一の救いだった。

とりあえずVIPルームを見渡して、混乱を極めているのは理解した。ホールはドリンクも灰皿もぐちゃぐちゃで、ほぼ回っていない事が分かった。私はここでどう立ち回って、何を求められているかを考えた。

当たり前であるが招かれざる存在なので、積極的な接客などはせず詮索もせず興味も持ちすぎず、何が目の前で起きたとしても、空気となってホールの環境の整頓に努めようと思った。それ以外の事は女の私がやるべき事ではないし、女である自分は何をしたって気になる存在になってしまうし、せっかく自分を解放できる環境に遊びにきた人にとって、解放しきれない要素になるのは自分も嫌だったからだ。

その後は、ただただ淡々とホールの基本業務をこなした。オカくんと、一緒にホールをしてくれていたゲイの方以外とは特に誰かと話す事もなく、その環境に身を置いた。

明確には書かないが、目の前で起きる全ての事が今までに見た事もないような出来事ばかりだった。本当は存在していない自分の前で気を遣われる事はないと思ってはいたし、遣ってもらいたくない気持ちはあったものの、多少なりびっくりした。けれど、私は過去の経験から動じないフリができる技を持っていたので、それを駆使して淡々と業務をこなしていた。

邪険に扱われる事もあったけど、自分なりのその気遣いが通じたのか、途中から話しかけてくれたりするお客さんも現れた。私は距離感を間違えないようにしながら、少しだけ会話した。本当は存在してはいけない私に話しかけてくれたのは、本当に嬉しかった。

そして、かっこつけてるとかっていうわけでもなく、誤解を招かないようにしたいとは思うが、居心地がとても良かった。自分という存在を考える事なく、ただただロボットのように動ける事への楽さだったかもしれない。そして、何より出演者もお客さんもだが性的マイノリティでありながらも、前向きに逞しく楽しそうで、自分に嘘をついていない姿がとても素敵だった。(単純に店としては大変な事もありつつも。。。)

営業時間が終わる頃にはだいぶお店も落ち着いてきた。

営業終了まで無事に務める事ができた事にとてもホッとしつつも、この経験で新しい視点を与えられたような気がして、それとは別の安堵感も得ていた。

レズナイト、ゲイナイトでの勤務によって、その場に身を置く事で性的マイノリティの方を”別”の存在として考えなくなったし、そもそもで性的マジョリティを”特別”と考えなくもなったし、概念も変わり尊敬もできるようになった。性的マイノリティの方への偏見はほぼ持たない20歳になれた事は、本当に幸せな事だと思っている。


次はギャルとギャル男について。



ハタノ

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