アトピーを治して取り戻した青春
アトピー性皮膚炎だった頃、私は知らず知らずのうちに自分の生活を制限してたくさんのことを避けていました。
いつもアトピーが心の片隅にある生活
アトピー性皮膚炎の人は、赤らんで顔や関節の至る部分が常に痒くなります。ステロイドで少し治っても、老人のような肌になってしまいます。肌が象牙のように分厚くなり、特有の深いシワができるのです。
私も、顔の赤みとシワのせいで自分の顔を堂々としっかり見せられず、気兼ねなく笑うことができませんでした。BBクリームなどで隠そうとしても、不自然で逆に目立ってしまいます。
着たい服も着れません。夏場でも薄手の長いシャツと長いズボンで、足先の炎症を晒したくなくてサンダルも避けていたのです。
また、アトピーだった頃は、無意識に身体を掻いていました。
治ってからアトピーの人を見て、他人から見ると自分はこんなに身体を掻いていたんだとわかるようになりました。
何かをするときにも物事に集中できておらず、自分自身ではそのことに気づいていませんでした。
アトピーが治ると性格が変わる
アトピーが治ったことで性格が変わったと私は思います。肌に自信を持てるようになり、社交的になり、外に出かけることが好きになりました。
お酒を飲む場も、身体が痒くなるため、以前はあまり好きではありませんでした。炎症が酷い時期は身体が痛いため、誘われても出掛けるのに気が引けるのです。
スポーツなどのアクティビティも、汗をかいて全身が痒くなるため避けていました。旅行はなおさらです。友達と堂々と温泉にも入れませんでした。水着にもなれませんでした。
昔は行きたいところに気兼ねなく出かけていたのに、出かけること自体が億劫になってしまいました。本当はやりたかったこと、好きだったはずのことをやらないようにし、それに慣れてしまっていました。
泥沼から「肌キレイですね」へ
アトピーが治ってからは、顔に化粧水を塗り、保湿クリームを付けたりと、肌のメンテナンスができるようになりました。
アトピーが酷かった頃は、そのようなメンテナンスはまったく意味がありませんでした。
アトピーの人に向かって「保湿が大事」だと言う人がよくいますが、酷いアトピーはむしろ常にジクジクしていて泥沼のようで、保湿の前提が成り立っていないのです。
アトピーが治ると、私の肌は別人のように綺麗になりました。そして、肌が綺麗だとお世辞を言われる機会がものすごく増えました。
私がアトピーだったことを知らない人に、何の脈絡もなく、肌がすごく綺麗だがどんなケアをしているのかと訊かれるのです。
それは、健康な人と比べても肌が綺麗になったということでした。私はもう40代目前ですが、今となっては自分よりも肌が綺麗な30代以上の人を見る機会はとても少ないと思うほどになったのです。
アトピーの人はもともと肌が繊細できめ細かい人が多いと思います。炎症がおさまり本来の綺麗な肌を取り戻せれば、むしろ普通の人よりも肌が綺麗になると思います。
QOLは下がっている時には気づけない
QOL=Quality of Lifeという言葉があります。「生活の質」「人生の質」と訳されています。
アトピーだと、普段の生活が制限されてQOLが落ちているのに、それが当たり前になって気づかない状態になってしまいます。
茹でガエル現象という話をご存知でしょうか。カエルはいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと、それに気づかないで逃げ出すタイミングを失い、最後には死んでしまうと言う話です。
アトピーも、茹でガエルの話と同じだと思います。
アトピーが酷くなっていく過程は、突然に一気に重度のアトピーになったというよりも、少しずつじわじわと炎症が出てきて、広がって、徐々に酷くなっていきます。
いつのまにか、本来の健康な皮膚がどうだったかをすっかり忘れ、アトピー肌を前提とした生活が当たり前になり、悪い意味で慣れてしまうのです。
冷静に振り返ると、健康な時には当たり前にできていたことができなくなっていることに気がつきます。アトピーに慣れて忘れてしまっていましたが、実は思った以上にQOLが下がっていたのです。
人生で最も大切なのは「時間」
私は、人生で最も大切なものは時間だと思っています。
なぜなら、人生は一度しか無いからです。
どんな過ごし方をしても時間は平等に確実に消費されていて、気づいた頃には失われています。だからこそ、その時間を充実して過ごせるかどうかが、とても大事だと思います。
私はアトピーを治してから、アトピーに多くの時間を奪われてきたということがようやくわかるようになりました。いまは当たり前のようにできる事が、アトピーだった頃にはできなかったことばかりだと気づくからです。
もちろん、アトピーであったことも含めて自分です。アトピー体質も含めて私はこの人生を手にすることができたのですから、アトピーでなかった自分というのはありえません。
ただ、病気で過ごす時間も人生の一部ではありますが、できるならより健康な日々を過ごせた方が良いはずです。
アトピーを治した今、私は、失った時間を取り戻そうと一生懸命に日常を生きるようになりました。
アトピーが無いのは"当たり前"
私が当たり前だと思っていたアトピー生活は、本当はそうではありませんでした。自分にはできないと思っていた他の人が過ごせているアトピーの無い生活こそが、実は当たり前の生活でした。
アトピーなど何も気にせず日常を過ごすこと。それは、何も特別なことではなかったのだと思いました。みんな当たり前のように、普通の生活を謳歌しています。
出かけてもいいし、人と会ってもいい。もちろん、出かけなくても、人に会わなくてもいい。
大切なのは、自分の好きなことをする自由があること。それは本当に幸福なことなのです。
私はそれを取り戻しました。いま私は、やっと遅い青春を謳歌しています。
アトピーの根本原因と治療方法について
アトピー性皮膚炎の根本原因を科学的・論理的に解説しています。こちらもご参照ください。
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