アトピー性皮膚炎とアレルゲンの関係性 〜 アトピーの原因と発症メカニズム(2)
アトピー性皮膚炎はアレルギー性疾患の一つとされ、その原因としてダニ・カビ・ほこり等のアレルゲンが挙げられることがあります。
しかし、アレルゲン物質を回避してもアトピー性皮膚炎は治癒されず、発症メカニズムも別物です。このことを解説します。
アトピー性皮膚炎はⅣ型アレルギー
アレルギー反応は、その発症メカニズムによって5つの型に分類されます。アトピー性皮膚炎に関係するのは、I型とⅣ型が挙げられます。
I型のアレルギーの例は、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、蕁麻疹、結膜炎などで、蕁麻疹のように皮膚下の内部から炎症を起こす症状が特徴です。
この反応は、主にIgE抗体というタンパク質が体内に侵入したアレルゲン(花粉、ダニ、カビ、ほこり等)に過剰反応することが原因です。
一方で、アトピー性皮膚炎にはIgE抗体ではなくT細胞が関係し、Ⅳ型のメカニズムで発症することが近年わかっています。
症状も、赤み、かゆみ、ぶつぶつ、ジュクジュク、ガサガサな状態となる湿疹の症状です。同じⅣ型で外部刺激からの炎症である接触性皮膚炎(かぶれ)と同様の特徴を持ちます。
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能異常から始まりT細胞を介在する
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能異常から始まります。炎症から痒みが生まれ、炎症部を掻くことで肌バリア機能異常がさらに悪化するサイクルを辿ります。
解説記事:アトピーと免疫の関係性
このメカニズムは2型免疫細胞の反応です。図中のIgE抗体はこの主流プロセスには関与しません。
後述しますが、IgE抗体は炎症部からのアレルギー感作によりI型アレルギー併発して発生しています。
Ⅰ型アレルギー(アレルゲン接触)はB細胞とIgE抗体が介在する
一方で、Ⅰ型アレルギーはIgE抗体の応答です。
このIgE抗体(を生むメモリーB細胞)がいわゆるアレルギー体質の正体です。アレルギー体質は先天的(遺伝的)な場合もあれば、後天的に獲得される場合もあります。どの物質がアレルゲンになるかは人によって異なります。
たとえば花粉症が、一度発症するとそれ以降ずっと発症し続けてしまうのはこのように免疫獲得してしまうためです。
アトピー性皮膚炎はI型アレルギーを併発しやすい
以上を要約すると、次のようにまとめられます。
この2つはメカニズムとしては別物です。アトピー性皮膚炎はⅣ型であって、アレルゲン接触によるⅠ型アレルギー反応とは異なります。抗ヒスタミン剤がアトピー性皮膚炎に効きにくいのもこのためです。
一般的に、アトピー性皮膚炎はⅠ型とⅣ型の両方に属すると言われます。Ⅰ型でもあると言われる理由は、アトピー性皮膚炎の罹患者の8割がIgE抗体検査の数値で異常値が見られるためです。
これは、アトピー性皮膚炎の炎症部からアレルゲンが侵入することでⅠ型アレルギーを併発しているためと考えられます。アトピー性皮膚炎の炎症は慢性化しやすく、ほこり・ダニ・カビ等のアレルゲンの接触・侵入可能性が高く、結果的にアレルギー体質化(感作)してしまうと考えられます。
特に、乳幼児の皮膚に湿疹や乾燥などがあると、アレルギー性鼻炎・食物アレルギー・気管支喘息など、連鎖的にアレルギーを獲得してしまう(アレルギーマーチ)ため、乳幼児のアトピー性皮膚炎や皮膚異常には早期治療介入が求められています。
バリア機能異常が発生した皮膚を通して(経皮的に)食べ物の物質が侵入し、食物アレルギーになってしまうという仮説も立てられています。これを二重抗原曝露仮説と言います。その食物を食べる(経口摂取)ことではなく、皮膚を通してアレルゲン化(経皮感作)してしまうということになります。
アトピー性皮膚炎の罹患者がIgE抗体の異常値だったり同時にアレルギーを持つことが多いのは、これらの仮説や背景によって説明されます。
アレルゲンはアトピー性皮膚炎の原因ではないが悪化因子になる
アレルゲンはアトピーの原因ではないが、Ⅰ型アレルギーを誘発するため回避すべき悪化因子と言えます。アレルゲンは下記が挙げられます。
また、Ⅰ型アレルギーが併発するとその痒みから掻いてしまうため、悪化サイクルを助長します。アレルゲン接触はさらに炎症・痒みを増大させ、アトピー性皮膚炎の悪化因子となります。
このため、アレルゲンはアトピー性皮膚炎の悪化因子として回避すべきものとなります。
アトピーとアレルギーの関係性のまとめ
以上が、アレルギーとの関係性でした。
次回記事では、腸内環境がアトピーとどう関係しているかを解説します。
アトピーの根本原因と治療方法について
アトピー性皮膚炎の根本原因を科学的・論理的に解説しています。こちらもご参照ください。
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