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「デジタルトランスフォーメーション」の本当の意味とWebマーケやってきた人が活躍できる時代が来るという希望的観測について(読書メモ #アフターデジタル)

話題の「アフターデジタル」ですが、おくればせながら今月になってやっと読みました。

予め断っておくと、私は、本書の著者、藤井さんが現在も在籍しているビービットという企業に10年前くらいに在籍していたので、価値観や考え方のベースの理解が深く、おそらくここに至ってあろう思考プロセスを10年単位で多少なりともトレースできる立場にあります。

その分、本書の考え方に肩入れしたくなってしまう側面はあると思っていて、これから書いてあることは、かなり、私のポジショントーク的な側面が強くなっているかもしれない。

だけど、それを差し引いても、これまでの考え方を、それこそ、天動説が地動説にひっくり返るような衝撃を受けた本だったので、気づきとか考えたことをメモに残しておきます。

ざっくり言うと「デジタルトランスフォーメーションの本当の意味がわかった!」ってことと、その結果Webマーケやってきた人が、活躍できる世の中になるんじゃないかという希望的観測の大きく2つの話になります。まずは前者から。

オフラインとオンラインが融合していく、ではなく、オンラインをベースにオフラインが位置づけられていく

とにかく衝撃を受けたのは、タイトルでもある、「アフターデジタル」という概念について

モバイルやセンサーが偏在すると現実世界にオフラインがなくなり、「オフラインがデジタル世界に包含される」ようになります。そうした世界を私たちは「アフターデジタル」と呼んでいます。それに対して、「オフラインの世界が中心で、そこに付加価値的にデジタル領域が広がっている」という多くの日本人の捉え方は「ビフォアデジタル」と呼べるものです。

そう、私も本書を読むまで、「ビフォアデジタル」の概念で世界を捉えていました。

O2OとOMOの違いについても、マルチチャネルとオムニチャネルの時みたいに、トレンドを作りたい人が言葉を作っちゃっただけで、本質的には大きな違いはなく、2~3年もすれば、風化していく言葉かな、と。

しかし、どうやらそれは違っていて。

我々は中国企業の訪問を通じて、中国ではOMOという共通の考え方が徹底していると分かった一方で、日本企業にとってOMOという考え方は、すぐに視点転換できないほど、現状と遠い考え方なのだということがよく見えました。実は「アフターデジタル」という言葉は「OMO」を理解してもらうために考え出した言葉です。理解しなければならないのはOMOですが、理解されにくいことがよく分かったため、試行錯誤の末、より直感的に分かっていただけるように、ビフォアアフターで図示しやすい表現として生み出したものです。

それこそ、「天動説」が信じられていた世界において「地動説」が真実だ、という感じくらいに、自分にとっては盲点を突かれてひっくり返された感じ。

なので、一度「アフターデジタル」の概念を手に入れると当たり前になってしまって「ビフォアデジタル」の考え方に(純粋には)もどれなくなるので、私がどう勘違いしていたか?を順を追って示すことで、共有するとともに、ビフォアデジタルにとらわれていた自分の感覚を忘れないようにメモで残しておきます。

「ビフォアデジタル」の思考回路

こちらは、私が社内研修などで、「インターネット広告」や「Webマーケティング」について説明する時の資料からの抜粋です。

インターネット広告を4マス広告と並列で存在する新たなメディアの広告、として扱うと間違えるよと。

それまでは存在しなかった、オンラインの「ネット空間」が登場したことで、新たな戦場が生まれた、その「ネット空間」における広告がネット広告なんだよ、という説明をしていました。

そして、物騒な例えになってしまうけど、戦争における、「空軍」の登場に近いと。これまでは、陸軍と海軍のみで戦争していたのが、空軍ができたことで、空を制することが重要になった、と。戦い方が全く変わってしまったんだよ、と。

そして、ネット空間で完結しない多くのビジネスにおいては、ネット空間からリアル空間へのバトンタッチポイントがCVとなるので、CV地点の設計が超大事で、それがWebマーケティングをビジネス成果に結びつける上での最重要ポイントだよ、ってな話をしております。

※この話も10年前にビービットの社内の議論から学んだ考え方です。

そしてデジタルマーケティングの説明がこちら

世の中はどんどんネットとリアルがシームレスに統合していき、ネット空間とリアル空間を一回ではなく、何度も行き来する考え方が「O2O」であり、「オムニチャネル」というようなことかと。

そして、完全にシームレスになった世の中の将来像として、こんなのを出していた。惜しいんだけど、残念なところがあって、

「ビフォアデジタル」だった、私の残念ポイントは、

デジタルとリアルが融合する際の暗黙の前提として、あくまでリアルをベースに置く、という固定観念にとらわれてしまっていたこと。

これが、日本企業がアフターデジタルを理解しづらい暗黙の前提とおそらく同じなんだと思う。

アフターデジタルの思考回路

で、アフターデジタルはどういう概念か、

「デジタライゼーション」の本質は、デジタルやオンラインを「付加価値」として活用するのではなく、「オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界」という視点転換にあると考えます。完全なオフラインはもはや存在せず、デジタルが基盤になるという前提に立った上で、いかに戦略を組み立てていけるかという思考法が必要不可欠になります。

融合するはするんだけど、アフターデジタルの主張は、主従逆転した上で、融合していくということ、

こっちの考え方に転換した上で、融合を考えないといけない。

これまで海の中で生活していた生物が、両生類のように水の中を起点に陸上生活を取り入れる、のではなく、哺乳類のように陸で暮らして、海も利用するときは利用する、という進化として捉えないといけない。

だから、デジタル「トランスフォーメーション」なんだということ、ようやく理解が追いついた感じです。

この本、ホント読んでないとヤバかった。前職の宣伝本だとタカをくくらず、ちゃんと発売した時に読んでれば、半年早くキャッチアップできていたかと思うと、もったいないことしたなと。

課金がシームレスになることで、価値提供とマネタイズのポイントも変わっていく

そして、この主従逆転は、マーケティング領域にとどまらない。

マーケティングを「モノやサービスが売れるための仕組みづくり」と定義するのであれば、(異論があるのも承知でやや乱暴に定義してしまいますが)

マーケティングのゴールとなる提供するモノやサービスも、ユーザーエクスペリエンスを構成する1つの要素でしかなくなり、価値提供はユーザーエクスペリエンスを通じてなされていくわけで。

課金も、プロダクトやサービスの購入タイミングとは限らなくなる、場合によっては課金すらされず、接点の取得・データ利用によってマネタイズされるので単発で見れば、モノやサービスが無償で提供されることもある。

アフターデジタルでは、「顧客にずっと寄り添う」ことが主目的になります。商品を購入した後の関係を作るには、商品購入の際に「どのようにして次につなげるか」といった視点が必要になってきます。さらにいえば、商品だけではなく、企業やサービス自体との関係性が重要です。顧客との関係性の構築ステップを見据え、ジャーニーベースで組織体制を組むことで、それぞれがそれぞれのステップにおける指標を追いながら、顧客を志向しながら、リレーのようにビジネスしていくことがポイントです。

ビジネスの原理が根本的に変わってしまうんだということ。

価値提供のレイヤーが変わっていく

ビジネスがどのように変わっていくのか?について、詳しくは本書を読んでほしいんですが、ざっくりメモだけ残しておくと、

「データのやり取り」が新たなインフラとなり、最もお金を生み出しやすい「購買データ」をより多く持ち、それを顧客IDとつなげられているプラットフォーマーがトップに君臨する図式 が生まれます。GAFAもそのような動きを見せていますが、新しい産業構造において最上位に来るのは、決済を握ったプラットフォーマーになります。その下に来るのが、業界ごとに体験型で価値提供をしているサービサーで、その下にメーカーが位置づけられます

今まで、上流・中流・下流と呼ばれていた概念がまるっきりひっくり返る感じになっていく。

余談ですが、弊社のようなWebマーケティングの支援企業って、要はサービサーに対して、プラットフォーマーのより良い活用方法、もっというと(誤解もある言葉なので、公にはあまり言わないけど、端的には、)プラットフォームのハックが提供価値になる。

また、多くのWebメディアは、プラットフォーマーとサービサーの中間に位置する、サブプラットフォーム、と位置づけるとしっくり理解できる。オウンドメディアとかWebメディアとか、メディアという言葉よりも、サブプラットフォームとか、オウンドプラットフォーム、バーティカルプラットフォーム、みたいな呼び方したほうが、実体に近いのかもしれない。そんなふうに整理できそう。

話がそれてしまったけど、アフターデジタルな世の中に変わるってことは、これまでのビジネスの原理原則が、オンラインを起点にすべてひっくり返される、という大転換ということ。

そしてその認識・理解を早く持って、トランスフォーメーションしていく事が、アフターデジタルが浸透していく世界で生き残っていくために大事だよってことがよーくわかった。

自分もこの概念手に入れてから、あらゆるニュースの読み方がや理解のポイントが変わった感があります。

例えば、このニュース。

田面木:そもそも、我々の中で、オンライン・オフラインというのを明確に区別していません。言い換えると、オフラインで行う施策もすべて「メルカリ」内のCXの一部だと捉えています。郵便局の窓口で出品するのも、宅配で受け取るのもアプリ上の体験の延長でしかありません。

この箇所を読めば、メルカリがアフターデジタル的な世界観を持ってビジネスしている、と読み取れます。

このように、世の中の企業のいろんな動きが、「ああ、アフターデジタルな世界に対応しようとしているんだな」と腹落ちします。バラバラだったニュースが線になってつながる感覚が得られました。

結果Webマーケやってきた人が、活躍できる世の中になるんじゃないかという希望的観測

最後に「アフターデジタル」な世の中でのビジネスにおいて、Webマーケティングをやってきた人こそ有利なんじゃないかという話をおまけにしておきたい。

理由は3つあって、
・データを駆使した高速PDCAでユーザーエクスペリエンスを改善する習慣を持っていること
・属性ではなく、状況でターゲティングすることが当たり前になっていること
・プラットフォームのハックが勝負の分かれ目だと理解していること

時間切れで、一つ一つ触れていけないですが、本書でもおおむね近いことが書いてあるので、詳しく知りたい方は読んでみてほしいです。

アフターデジタル時代のビジネス原理は、次の2つにまとめることができます。 (1)高頻度接点による行動データとエクスペリエンス品質のループを回すこと。 (2)ターゲットだけでなく、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション形態で提供すること。

プラットフォームのハックの重要性など、本書では触れきれていない部分もあるので、別の機会があれば、このあたりも掘り下げて書いておきたい。

そして、アフターデジタルな世界観は自分にとって希望に満ちていて、多少の紆余曲折はあれど、きっと世の中は良い方向に進んで行くんだろうなって思える。

「実は不便で、顧客をだまし、お金がちゃりんちゃりんと入ってくるサービス」は、高頻度接点と高付加価値をもたらすアフターデジタル時代のサービスに淘汰されていくでしょう。

とにかく、結論としては、アフターデジタル読んでない人は急いで読んだほうがいいよ、ってこと。

余談ですが、本書をスマホのKindleアプリで読むと縦スクロールでページネーションのない全く新しい読書体験ができます。

これも、リアルの本、というリアル起点でデジタルを付加価値にしたのではない、デジタルを起点に顧客中心で価値提供したアフターデジタル的な概念を理解する一つのヒントになりました。

毎週note書いてます

週末から夏休みなので、平日に少しずつ書き進めてなんとか公開にこぎつけました。一応、毎週継続中です。

※今回は、7月14日(日)~7月20日(土)分の週報になります。


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