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「真珠女」創作大賞2024:恋愛小説部門応募作品

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処女作の恋愛小説です。 お時間ある方、読んでくださると 嬉しいですm(_ _)m 2024/07/23
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#創作大賞2024

「真珠女」1話【ビンタ/無職】

以下「真珠女」本編 【ビンタ】 何度も平手打ちをくらった右頬が痛い。葵の柔らかくて湿った右手が私の首を強く締める。 「死んじゃうよ?」 殺されたっていい、私の生死は葵が決めるんだ。 冷たくて暗い海の中。世界は私を1人にした、何度優しさに触れても絶望した。 憂鬱を愛し底の知れない暗闇を泳ぎ続けて、肺が潰れるまで潜水していく。 【無職】 時給が高いという理由だけで働き始めた水商売にどっぷりハマり、売上ランキング上位をキープしていた頃、私は匿名掲示板で誹謗中傷を受けていた

「真珠女」2話【涼】

【涼】 「涼君初めまして、かっこいいですね」 一度眠ったら忘れそうなくらい適当な一言を送ってしまったとSNSを閉じる 「かっこいいなんて嬉しい!奈帆ちゃん!可愛いね」 10分も経たないうちに返信がきて、スマホが急に引力を持ちだした。 「あんまりsns慣れてないんですけど、涼君がかっこよすぎてタイプでメッセージ送ってしまいました」 「ほんとに?ありがとう!奈帆ちゃん何歳なの?」 深夜2時、返信が10分以内という事は涼もベッドでスマホを触りながら寝る前だろうか、せっか

「真珠女」3話【鏡】

【鏡】 約束の日、池袋駅の東口で涼を待っている間何度も手鏡で顔を、ショーウィンドウで全身を確認する。落ち着かない、落ち着かない様子を後ろから見られてたら恥ずかしいなと更に落ち着かない。待ち合わせの時間を5分ほど過ぎた頃、手鏡を鞄に仕舞い視線をあげるとハーフジップの白いプルオーバーを着た涼らしき男と目が合い、小走りで近づいてくる。 「初めまして」「初めまして!ごめんね池袋あんまり来なくて迷っちゃった」 「全然大丈夫です、私が張り切って早めに着いてしまっただけなので」 背は

「真珠女」4話【脱皮】

【脱皮】 会計を済ませてエレベーターを待っている間「適当に入ったけどいいお店だったね」と言われ「枝豆が美味しかった」と返しながら、この後どうしたいのか聞けずに気まずくなり、涼から顔を逸らす。エレベーターが開くと中には私達と同い年くらいのカップルが腕を組んでいた、終電前の雑居ビルのエレベーター、彼らはイチャイチャしていたわけでもないのに、彼らの事をじっと見てはいけないと思いぎこちなく奥へ進む。 ドアの方へ向き直ると涼は私の後ろに立って、両腕を首の辺りで組んだ。無言のまま一階に

「真珠女」5話【ホテル】

【ホテル】 「おはようございます!」点けっぱなしのまま寝てしまったテレビから聞こえる女子アナの声で目が覚めた。 チェックアウトまで2時間以上あったのを確認して、浴槽にお湯を溜めながら歯を磨き、冷蔵庫の中の水を一本取り出し浴室に持って行く。湯船に浸かりながらテレビを眺めて、出てくるタレントや俳優の名前は殆どわからないけど朝のニュース番組を観てると懐かしい気持ちになるなと思う。 お湯が少し冷めてきたしそろそろ出ようとしたら「奈帆?入っていい?」と私の返事を待たずに涼が入ってきた

「真珠女」6話【風香】

【風香】 風香は高校からの親友で、成人してからも定期的に連絡を取り合っている。小柄で華奢で、長い髪の毛はいつ会ってもヘアサロンから帰りたてのように綺麗で、上品な顔立ちをしている。今は清楚そのものだけど高校の頃は一緒に日焼けサロンに通い、髪の毛は金髪、化粧も顔の原型がわからないほど濃かった。涼の話しを聞いてほしくて「久しぶりにお茶しない?」と渋谷のカフェに誘い約1年ぶりに再会した。 「どんな人なの?奈帆がイケメンって言うことはマッチョのオラオラ系?」 「顔は子犬みたいで色白

「真珠女」7話【歯医者】

【歯医者】 涼は毎日連絡をくれた、最近コンビニのパンにハマってるとか、6月なのに暑すぎとか、奈帆に似てる子とすれ違って顔見たら奈帆じゃなくて寂しかったとか。 私は男の名前でアカウントを別で1つ作り、男のアカウントで毎日涼をチェックして、何も投稿がない日は涼がタグ付けした事のある女、過去にコメントを残している女のアカウントを見に行っては、いま涼と過ごしてるのはこいつなんじゃないかと妄想し絶望した。涼と2人で飲んでいるところをタイムラインにあげてる女を見つけると、どうせブス、涼

「真珠女」8話【猛暑】

【猛暑】 「私も会いたい、今週いつでもいいよ涼君の都合のいい日で」 「明日は?」 「明日大丈夫だよ、19時くらいにする?」 「オッケー!牡蠣食べたいんだけど奈帆って牡蠣食べれる?」 「牡蠣大好き!生も焼きもフライも全部好き!」 「じゃあ池袋で牡蠣食べれるとこ探して予約しておくね!」 「ありがとう!涼君に会えるのすごく楽しみ」 「俺も奈帆を食べるの楽しみだな」 顔がカッ熱くなり口を一文字に結ぶ、どうしてこんなに恥ずかしい事を言えるんだろう。 「私食べられちゃうの?笑」 「毎

「真珠女」9話【センス】

【センス】 昨日気に入って買ったのはシルバーのサンダルで、ストラップのスパンコールが可愛いと思い即決した。 黒いキャップスリーブにスリットが入ったタイトなワンピースを着て、シルバーのピアスとネックレスを身につける。今まで購入してきたアクセサリーの大半はゴールドだったけど、たまにはシルバーもいいなと思いながら涼が予約してくれた店に向かう。 「なんか前より更に可愛いくなった?ドキドキする」 「ごめんね少し待たせちゃって」 「全然大丈夫だよ。奈帆の服のセンスすごく好きだな、スタ

「真珠女」10話【アッシュ】

【アッシュ】 「甘いのが食べたい、コンビニでお菓子買ってこうよ」 コンビニでビールとシュークリーム、涼はハイボールとプリンを籠に入れレジに並ぶ。 「今日は奈帆のお家行ってもいい?」 私の部屋は常に片付いてるし、家に来たいと言われるかもしれないと思って掃除もしてきた、一度家に来てくれた方が今後誘われやすいかもしれないし、ホテルに泊まるより長い時間一緒に居れるかもしれない。けど今こうやって隣に立っている瞬間も涼から見える自分の表情、姿勢、鞄の持ち方、少しでもブスが出ませんよ

「真珠女」11話【銀歯】

【銀歯】 「今度はすき焼きね!奈帆のお家で!」「すき焼きもいいけど、一緒に映画観たいな」 この猛暑日が続く中、すき焼きが食べたいなんて適当だ。でも、もしかしたら、すき焼きを一緒に作る日が来るかもしれない。今度1人で練習しよう、すき焼き用の鍋なんて買ったら張り切りすぎだと思われそうだけど、可愛い食器とお箸は絶対必要だな、家には今お箸なんて無いし、食器と呼べる物はカレーの色が移ってしまったプラスチックのお皿が1枚しか無い。 涼が言ってくれる「今度」という言葉に、また会えるんだと

「真珠女」12話【ダイバー】

【ダイバー】 金曜日の午後3時過ぎ、世間は今日から3連休らしい。引きこもりには曜日感覚が無い。今日が祝日である事を涼から聞いて初めて知った。 水族館に直通のエレベーターが既に長蛇の列で、並んでいるのはカップルと親子ばかり。手を繋いでる私達もまわりから見たら付き合ってるように見えるのだろうかと脳裏をよぎった後すぐ、本当は私じゃない誰かと一緒に来たかったんだろうなと切なくなった。 「すごい並んでるけど進むの早そうじゃない?俺3年ぶりくらいかな水族館」 「私は去年沖縄で行った

「真珠女」13話【ピエロ】

【ピエロ】 脇腹に2つ、二の腕に1つ噛まれた痣がある。どれも触れると生傷のように痛む。 枕に涼の香水を付けて痣に触れている時間が何より幸せで、布団に入るのが楽しみだった。痣が薄くなっていくと鮮度が落ちていく魚を見ているようで悲しく、陶器の小物入れで治りかけた痣を自分で殴ろうかと思ったけど、自分で痣を作ったって意味は無い。 明日は風香と六本木のアフタヌーンティーに行く予定だから早く寝ようと思っていたのに、時計を見ると午前6時33分。アフタヌーンティーはもはや今日になってしま

「真珠女」14話【ブリーチ】

【ブリーチ】 「友達と六本木でアフヌン行ってきた!可愛く撮れてるでしょ」 奈帆と別れてからケーキの写真を送ってもう丸1日経つのに返信が来ない、どんなに遅くてもその日のうちに返してくれていたのに、SNSの更新も無い。 2日経っても返信は来ない、こんなに日が空いたのは初めてで、何かあったんじゃないか、事故にあって意識が無いとか、事件に巻き込まれて身動きができないとか。 3日経っても涼が今どこで何をしているのかわからない、もう一度連絡を入れてみようと思ったけど、まだ3日だ、まだ待