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「真珠女」6話【風香】

【風香】

風香は高校からの親友で、成人してからも定期的に連絡を取り合っている。小柄で華奢で、長い髪の毛はいつ会ってもヘアサロンから帰りたてのように綺麗で、上品な顔立ちをしている。今は清楚そのものだけど高校の頃は一緒に日焼けサロンに通い、髪の毛は金髪、化粧も顔の原型がわからないほど濃かった。涼の話しを聞いてほしくて「久しぶりにお茶しない?」と渋谷のカフェに誘い約1年ぶりに再会した。

「どんな人なの?奈帆がイケメンって言うことはマッチョのオラオラ系?」
「顔は子犬みたいで色白で、とにかく可愛いんだよね、あと一個年下」
「年下なの?意外すぎるんだけど」

私が過去付き合ってきた歴代の彼氏、好きだった男、全てを把握している風香は最初少し驚いていた。優しくてマメで、子犬みたいでさ、とにかく可愛い、かっこ可愛い、かっこ可愛いの。連呼し続けていると涼への愛しいと思う気持ちがどんどん波に乗り大きくなっていく。

「致したんでしょ?セックスもよかったの?」
「いや、ソフトSMのテンプレって感じだったかな、普通」
「ソフトSMのテンプレってうける、縛ってきたりしたの?」
「いや、縛られはしなかったけど。Sっぽい男の方がモテると思ってそうだなって」
「ああそういう人いるよね、ファッションサディスト?」
「お互いに芝居してるみたいだった」

なるほどねーと答える風香が、カップの縁に残るクリームをストローで啜る。

「もっとこう、がっつりずっぽりハメたいのにさ」
「初回じゃ分からなくない?モヤモヤが爆発して奈帆が女王様になったりしたら、その涼君って子がMに目覚めていいセックスになるかもよ」
「私が女王様だった事あったっけ?」

あったじゃん、と言われ、あったねと笑う。
風香が20歳の頃、付き合っていた男の部屋で「痴●ギャル専用のM男!射●我慢調教!」というAVを見つけ、その日の夜から股間もあらゆる日常の決定権も全て握るようになったという話しを思い出して更に笑い合う。散々下ネタで盛り上がった後、風香が改めて問いかけてきた。

「今その涼って男の子といて楽しいんだよね?」
「楽しいし、早くまた会いたいなって思う」
「付き合いたいくらい好き?」
「好き。でも付き合えないだろうな」
「まあ奈帆は彼氏がほしくて恋愛するタイプじゃないもんね、高校の時だって戦争みたいな恋愛してたし」
「あれはあれで楽しかったな」
「男に女磨かれてる時間って幸せだよね」

風香は最近マッチングアプリで遊ぶことが多いらしく、待ち合わせに皺だらけのシャツを着てきた男の話しと、待ち合わせ場所、最初の一杯、もう一軒行くか行かないか、全てにおいて優柔不断だった男の話しを楽しそうに話してくれた。風香はモテる、恋愛経験豊富だ。私が今虜になってる涼の話しを聞いて、本当は間髪入れずに「やめとけ」って言いたいだろう。でも風香からの一言で、涼に対する私の気持ちも行動も変わらない事を知っているから何も言わずに聞いてくれている。涼の事を話しても不愉快にならない反応をくれるのは、きっとこの先も風香だけなと思う。

#創作大賞2024
#恋愛小説部門

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