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真っ赤なお菓子と軍人崇拝

アメリカのお菓子売り場を見ているのが好きだ。カラフルすぎて食欲は湧かないけれど、眺めている分には楽しい。

たまに見る真っ赤なお菓子がある。ひと口大の丸い砂糖菓子だ。
名前は「Atomic Fireball」ーー「Atomic Bomb(原子爆弾)」を連想させるそのお菓子を見かけるたびに、私はため息をつく。

日本人なら誰でも、お菓子にそんな名前を付けることに違和感を覚える。けれどアメリカの子どもは、きっと名前に大した関心を払うことなく、刺激的なその味を楽しむのだろう。

アメリカにいると、ここが戦勝国で、私は敗戦国から来たのだということを強く認識させられる。

私が生きた平成の日本は、もう先の大戦の爪痕など残っていなかったけれど、それでも教育やメディアがその恐ろしさを伝えてくれた。たくさんの人が亡くなって、生き延びた人たちも状況や空気に散々苦しめられたことを日本人は皆知っている。「もうあんなことが2度と起こらないように」と、軍隊を持つことや、君が代や日の丸に関しても非常にセンシティブになっている。

それが当たり前の環境で育った私は、アメリカにきて違いに戸惑った。

まず、軍人への尊敬の念が非常に強い。
ダウンタウンの街灯ひとつひとつに顔写真入りの旗がひらめいているので、何かと思ってよく見たらその街出身の軍人たちだった。
スーパーマーケットのレジ上に、星条旗・州旗とともに陸軍・海軍・空軍の3つの旗が掲げてあるのを見たこともある。
今春の自粛期間に市のホームページを見ていたら、遊びに出られなくなった子どもに「軍人さんにお手紙を書こう!」と勧めていた。
11月11日はベテランズデー。退役軍人はさまざまなお店でサービスが受けられる(英語でVeteranというと退役軍人のことを指す)。
挙げたら本当にキリがない。

そして愛国心が強い。星条旗を家の前に掲げている家は多い。祝日だけでなく、毎日だ。国歌や国旗に対しての愛着が強く、幼稚園から星条旗への忠誠を誓う文言を暗記させられる。

軍人さんは偉い、お国のために、祖国に誇りを持とう、星条旗万歳ーーどこか戦前の日本を思い起こす。我が国ではそんな空気は消えて久しいが、ここアメリカではまだ根付いている。もし日本が戦争に勝っていたら、同じように軍人を讃え、日の丸に忠誠を誓っていたのだろう。

日本人は「戦前」「戦後」という言葉をよく使う。第2次世界大戦の前後で時代ははっきり分けられる、と思っている。でもそれはあくまで日本の話だ。

世界はどこにいるかわからない。今が「戦前」にならないようにしたい。

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