海野 遥

連載長編小説「パズル」をお届けします。なるべく毎日投稿するようにします。マガジンでは、…

海野 遥

連載長編小説「パズル」をお届けします。なるべく毎日投稿するようにします。マガジンでは、初めての方でも話の流れがわかるように上から順番に表示していきます。

マガジン

  • パズル (連載小説)

    地球存続にかかわる危機は、これまでに幾度となく繰り返されてきているが、人々はその真実を見ようとせず、再び同じ過ちを繰り返そうとしていた。 二十一世紀に入り、その瞬間が刻一刻と迫っていた。 神は人類に対して何度も警鐘を鳴らして地球滅亡を食い止めようとしてきたが、愚かなことに、人間はそのことに気づかない。 かつてアトランティス大陸という平和で天国のような場所があったが、一夜にして消滅してしまった。 アトランティス大陸の消滅。 それは、神がリセットボタンを押した瞬間だった。 二十一世紀、再び神がリセットボタンに指を乗せた──。

記事一覧

パズル 5 プロローグ

アトランティス大陸 「アトランティス大陸発見」 「アトランティスは南米に実在した」 二〇二一年六月中旬、歴史を覆すような大ニュースが世界中を駆け巡った。 紀元前…

海野 遥
3年前
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パズル 4 プロローグ

第五の太陽 ボリビア 二〇一二年 ティワナク遺跡調査団長であるジム・フォクスター教授は、自分が選択した道が誤りだったのではないかと後悔することがたびたびあった…

海野 遥
3年前
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パズル 3 プロローグ

アインシュタイン・ロマン   二〇一〇年 二〇一〇年十月、アメリカの物理学者、アルメール博士による『潜在意識調和理論』という書籍が出版され、一部の間でちょっとし…

海野 遥
3年前
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パズル 2 プロローグ

前兆 一九八三年 「山の上なんてつまらない。私、飛行機に乗るの飽きちゃった。早く海で泳ぎたいな」 娘の言葉に少しがっかりしたが、その通りかもしれなかった。 日本か…

海野 遥
3年前
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パズル 1 プロローグ

プロジェクト・ポパイ 一九六六年 漆黒の闇の中、C130A輸送機は雲の下に入り込み、大量のヨウ化銀溶液の噴出を始めた。吐き出されたヨウ化銀溶液は空中で霧状になり、上…

海野 遥
3年前
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パズル 0 まえがき

この作品についてこの作品は、私が今までに発表してきた作品と比較すると、明らかに異質な作品である。 私は伝記作家として、この二十五年間、数人の人物にスポットを当て…

海野 遥
3年前
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パズル 5 プロローグ

アトランティス大陸

「アトランティス大陸発見」
「アトランティスは南米に実在した」

二〇二一年六月中旬、歴史を覆すような大ニュースが世界中を駆け巡った。

紀元前一万二千年前の石板や、プラトンが書き残した通りの中央都市の痕跡などが見つかり、アトランティス大陸が実在したことは確実であると報じられた。マスコミは、連日この話題を報道した。

世間の目はボリビアの高原地帯アルティプラノに注がれ、人々は

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パズル 4 プロローグ

第五の太陽 ボリビア 二〇一二年

ティワナク遺跡調査団長であるジム・フォクスター教授は、自分が選択した道が誤りだったのではないかと後悔することがたびたびあった。
発掘調査は気が遠くなるような地道で退屈な作業の繰り返しだ。何日間も掘り続けても目ぼしいものがなにひとつ出てこないこともあれば、掘り起こした土の運搬作業で一日が終わってしまうこともあった。

細かい破片を慎重に掘り出し、それらをある程度

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パズル 3 プロローグ

アインシュタイン・ロマン   二〇一〇年

二〇一〇年十月、アメリカの物理学者、アルメール博士による『潜在意識調和理論』という書籍が出版され、一部の間でちょっとした議論を巻き起こした。その評は賛否両論まっぷたつに分かれた。

題名のみで判断すると、それは心理学の専門書のようであり、──実際にユングやフロイトの考え方にも触れられているが──、量子力学にも触れた地球物理学の論文だった。

「彼の理論は

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パズル 2 プロローグ

前兆 一九八三年

「山の上なんてつまらない。私、飛行機に乗るの飽きちゃった。早く海で泳ぎたいな」
娘の言葉に少しがっかりしたが、その通りかもしれなかった。
日本から長時間も窮屈な飛行機の中で過ごしてホノルルを経由し、さらに飛行機を乗り換えハワイ島に着いたのは、昨日の夕方のことだった。

ホテルについて夕食をとり、すぐにベッドにもぐりこんだが、時差と長旅の疲れが抜けきらず、目覚めたときから体の重さ

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パズル 1 プロローグ

プロジェクト・ポパイ 一九六六年 漆黒の闇の中、C130A輸送機は雲の下に入り込み、大量のヨウ化銀溶液の噴出を始めた。吐き出されたヨウ化銀溶液は空中で霧状になり、上昇気流に乗って雲の中に吸い込まれていった。

後続のC130A輸送機が後を追うように近づき、闇夜に浮かぶ雲の中に突入した。
雲の中に入った後続のC130A輸送機は、機体後部に設置された装置から微細に粉砕した大量のドライアイスを一斉に投下

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パズル 0 まえがき

この作品についてこの作品は、私が今までに発表してきた作品と比較すると、明らかに異質な作品である。

私は伝記作家として、この二十五年間、数人の人物にスポットを当て彼らの生涯を著してきたが、この作品を書いているときが最も充実していた。これまでに「アルベルト・アインシュタイン」「トーマス・エジソン」「クロード・モネ」「プラトン」など、歴史上の著名な人物を扱ってきたが、今回の作品を書くために作家になった

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